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40.これ、おっぱいゲーだったわ





 集まりは早々に解散となった。

 二限目から授業に出ると教室を後にした二ノ前満月と、鴎太。

 牛鬼に提出して来ると去って行った、水無月仁美。


 教室には、俺と三条さん、それから吾妻さんが残っていた。


「田中さん……」

「はい?」


 吾妻さんも二限目から授業に出るだろうに。立ち去らず、椅子に掛けたままでいたので、三条さんに用事かなと思っていたが、どうやら俺に用があったらしい。


「本当に、良いんですか?」

「何がですか?」

「あの、活動内容って、私の為……ですよね?」


 思い上がりかもしれないと、少し言うのを躊躇っていたのだろう。視線を逸らし、とても言い難い事を言うみたいに、彼女はそう言った。



「いいじゃん! アタシは、良いと思うよ!」



 返事をしたのは、三条さんだった。

 俺の隣、机の上に座っていた三条さんは、ぴょいと机から飛び降りて、前のめりにそう言った。

 仲良くなるチャンスではなかろうかと思ったので、そっと黙って見守ってやる事にしよう。


 三条さんは、人と話す事が苦手だ。


 自分の言葉が相手を傷付けてしまうんじゃないかと、最近は特に迷っている様子が見て取れた。

 俺と話す際は、俺が傷付く事が無いと知ってか遠慮の無い物言いであるけれど、吾妻さんと話す際はその慎重さが特に、顕著に見られる。


 俺を一瞥してから、三条さんは、ゆっくりと口を開き、続きの言葉を絞り出す。


「吾妻さん、花好きだよね。花壇、花なくなっちゃってるところあるし。アタシも一緒に、吾妻さんと花壇の手入れしたいし……」


 後半になるにつれて、もにょもにょと言葉が泳ぐ。

 吾妻さんが、目をまん丸くさせて三条さんの事を見るもんだから、余計に喋り難いのだろう。

 再び、助けを求めるように俺を見るので、少し身を寄せて「がんばれ」と、小さく声を掛けてやると、三条さんは顔を真っ赤にさせて、自身の手をキツく握った。

 緊張すると、握り拳を作るのだ。俺がゲームを代わってやって、隣で見ている時も、いつもそう。無自覚の行動なのだろうけれど、その真剣さが伝わってくる。


 ごくりと、喉を鳴らした三条さんは、意を決した様子で、口を開く。


「アタシ、吾妻さんと友達になりたいし! その、だから。……部活なんて部室貰うただの名目だって思ってたけど、今、凄くわくわくしてるんだ!」


 恋をすると、世界が色付くと言うけれど、今まさにこの瞬間こそ、その台詞に相応しいんじゃなかろうか。


 吾妻さんは、まん丸くさせた瞳を潤ませて、真っ直ぐ三条さんを見詰めている。


 吾妻さんも又、三条さんと友達になりたかったのだから。


「うれしい、です……。すごく、嬉しいです!」


 感極まった二人は、これから固く抱擁でも交わすのかもしれない。

 なんだか物凄く俺の存在が邪魔になっている気もしてきたので、此処いらで退散をかまそうかと、ぴょんと机から下りれば、二人の視線が此方へ向けられる。


「コタ! 吾妻さんにちゃんと言えた!」

「田中さん! 三条さんと友達になれます!」


 同時だった。目を潤ませた小動物みたいな子が二人、俺に向かって叫んだのだ。


 ――この流れ、久々にやばくないか?


 二人が、俺に向かって駆け寄ってこようとする。


 そうか、忘れてた。

 これ、おっぱいゲーだったわ。




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