――聖受歴1,538年 日耀月20日 初雪
そこに立った時の感想を言おう。
ぶっちゃけ、「ついに此処まで来た……」とかそういう感慨はなかった。
むしろ「とうとうこんな遠いとこまで来ちまったぜ……」っつう、なんとも言えねぇ寒気がした。
そしてその寒気は、空から粉雪がちらついてるせい――じゃ、絶対にねぇわな。
寒気を感じても、後には引けねぇ。
否応なく、前に進むしかない。
けど、こんな状況に追い込んで逃げ道一つ残してくれなかった野郎は……此処にはいない。
未だ合流する気配がねぇんだが、あの野郎は一体どういうつもりなんだ?
此処に至るまでにゃ、絶対に戻ってくると踏んでたんだがな……
来る、明くる日。
俺たちは動き出す。
動かなきゃならん。
何故ならそれが俺の『義務』で、『やるべきこと』だからだ。
終の棲家のつもり満々だった北の地を離れてから、実に――232日。
俺は、王の都を見下ろす丘の上にいた。
国王の座所でもある都を見下ろすとは何たる不遜とかなんとか、面倒臭ぇ理由で登頂禁止になっていた丘の上だ。
しかし丘というより、小さい山だな。こりゃ。
登ってみれば、そこは思った以上に見晴らしが良かった。
――荒廃した都が、一望できるくらいに。
数年ぶりに戻ってきた懐かしい都は、俺が知っているよりも荒れ果てているように見えた。
街並みも、活気の有無も、人々の表情も……そこに『都』と呼べる程の華々しさは、どこにも残っていなかった。
閣下、ついに王都……敵の本拠地を、包囲。
そろそろ最終決戦も始まる頃合いでしょうか。(展開はやっ)
だけどこの大事な局面に、黒歌鳥はどこに……?




