――聖受歴1,537年 終耀月13日 晴れ
黒歌鳥に急かされるまま、王国の北側から王都を目指して攻める。
もう冬も近いっつうのに……わざわざこんなタイミングで進軍とか馬鹿じゃねえかと思った。
思ったし、黒歌鳥の奴にもそう言ったんだがな。
冬を目前に、こんな秋真っ只中に、戦争なんぞやってられっか! 戦闘重ねてる内に自滅するわ!……って。
けど重ねるっつう程の戦闘はなかったな……
何をどうやったもんか、明らかに黒歌鳥の手回しだとは思うんだけどよ。
何故かおっ始まる筈の戦闘が直前で回避されたり、始まる前から向こうが降服状態だったり……なにやったの、本当に。
しかも投降してきた敵兵の筈の奴らがやたらキラッキラした心酔の目で俺のこと見てくんだけど……!
マジでなにやったんだよ、怖ぇよ!
攻め入ってここまでスムーズに事が運ぶっておかしいだろ!?
こんな速度でさくさく進む戦争とか、俺初めてなんだけど!
……はい? 他の方面軍ともタイミングを合わせてるから?
指定した日時までに、予定のポイントまで軍を進めておく必要がある?
待て、ちょい地図見せてみ?
……。
…………。
……ちょっと待てこら。
予定って、所要期間こんだけでこんな王国の内側まで到達できるはずね―だろうがぁぁあああっ!!
あ゛!? 間に合う筈ねえっつってんだろ!?
その計算だと、後二日で砦七つ落とさなきゃなんねえ計算になるだろーが!
……え? 間に合わせてみせます?
え。ねえ、その満々の自信はどっから来てるの???
無理だって。
だから、無理だって。
俺らには出来ねえよ。身体が保つ訳ねーって。
いや、やればできるとか言われても無理なもんは無理……は? ギリギリ極限まで追い込めばイケる?
ちょ、こら、おい! そんなやる気に満ちた顔すんの止めろ!
何が何でも間に合わせるって、その代償に俺らにどんな無茶を強いる気だてめーっ!!




