――聖受歴1,537年星耀月13日 晴れ
一体何に影響されたのか。
それともまたなんぞ、俺にはわからん理由があるのか。
何が何だかよくわからんが、目の前の野郎がいきなり現実逃避としか思えねぇことを言い出した。
曰く、伝説の幻の金属を入手する。
そしてその金属で、俺の手に持たせる為の『聖剣』をこしらえるとか何とか……
え? お前、本当に何言い出した?
頭は大丈夫かと、まず思ったが……本人を前にして、それを実際に口に出す勇気は俺にはなかった。
せめて真意を探るつもりでヤツの目を見返せば……
ヤツの目はマジだった。
え゛? 本気?
その日の深夜、俺は何故か山ん中にいた。
理由は一つ、やたらめったら口の上手過ぎる馬鹿野郎に無理やり連れて来られたからだ。
なんでわかっている筈なのに、俺って野郎は口八丁で丸めこまれてるんだろうな……?
口では勝てねぇ上に、外堀まで埋め垂れられてたっからだよ。わかってんだよ。
わかってんだけどなんだよ、このやるせなさ……!
強引に我を通すのが巧み過ぎる、自分の子供くらいの年齢の吟遊詩人に案内されて。
野郎の背中を眺めつつ……一番の馬鹿野郎は俺自身なんだろうなぁ。
見上げた夜空のお星様が、なんか切なく滲んで見えた。
キャサリン(亡妻)……そこから俺のこと、見えてるか…………?
俺は今日も元気だぜ……?
……肉体だけは。




