9.喜多方へGO!
小説版の『魔術師の杖』は電子書籍メインで展開してます。そのため10冊だしても、知名度がまったくといってもいいぐらいなくて。
これはいかーん!
というわけで、『魔術師の杖 THE COMIC』の連載スタートに合わせ、胸の中で温めていた企画を実行することにしました。
全国のコミティア・文学フリマを行脚しよう!
50冊ぐらいスーツケースに詰めて、コロコロ運んで。ついでに各地の美味しいもの食べよう。←こっちがメインかも。
「文学フリマに参加しようかと思っているんです」
「ならコミティアはどうですか?」
私が相談すると、マッグガーデンの担当様が勧めてくれまして。
連載開始の連絡をもらってすぐに、参加できるコミティアをチェックして……12月14日に福島・郡山で開かれる『みちのくコミティア』に申し込みました。
実は連載開始にあたり、MAGKAN様にこうお願いして、配布用の画像を作ってもらっていました。
「キャラクターの画像にタイトルロゴ、連載ページのQRコードを入れたものを作って下さい。サインやコメントがあればなおいいです」
これを行く先々に持って行って、会う人に配りまくるのです。
読者さんから頂いたネリアの編みぐるみや、奈々リカちゃんも連れていくことにしました。
(ただイベントに参加するだけではもったいない。こんな機会でもなければ行かないような場所に、この子たちもいっしょに連れて行こう)
そうして旅の準備をしているときに、『ネリア応援団』の募集を思いつきます。
思い立ったら即行動。Xに掲載した募集記事はこんな感じ。
『みちのくコミティアの開催地、福島県郡山市内で、ひつじロボ先生サイン入りA4イラストと配布用ポストカードを置いて下さる飲食店を大募集!』
単純に、人の集まるところにQRコードを置けば、誰かが見てくれるかもしれないと思いました。
けれどXの拡散力、弱まってますね。名乗りをあげるお店はなく……私は喜多方ラーメンを食べに行くことにしたのです。
「喜多方に行ってラーメンを食べて……ついでにイラスト置かせてもらえばいいよね」
これぞアポなしぶらり旅。どこか一軒ぐらいは置いてくれるでしょう。ネットで見つけた喜多方の宿をパパッと予約しました。
12日に出発して喜多方の宿に泊まり、13日は丸一日観光してから郡山へ。コミティアは14日に郡山のビッグパレットで開催されます。
出発の日は東京も、朝からぶるりと震えるような寒さ。しっかり着こんででかけました。
青森の地震の余震の影響で、新幹線が送れるトラブルはあったものの、郡山到着。郡山からは高速バスに乗って喜多方へ向かうつもりでした。
と・こ・ろ・が……。
『喜多方行きの高速バスは、利用客減少により運休です』
12月はもう観光もオフシーズンなんだそうです。それでもJR磐西線がありましたから、何とか会津若松経由で喜多方へ。
ぼんやり窓の外を眺めていたら、雪までチラついています。
雪!
ふだんなら喜ぶところですが、今の私は本を50冊詰めたスーツケースを持っています!
予定よりだいぶ遅れて喜多方駅に到着。
もう夕方で日は沈み、あたりはどんどん暗くなっていきます。雪は降り続けていました。
タクシー!
……こない!
ホテルまで徒歩20分。そこまで本50冊詰めたスーツケースをコロコロ運ぶ。
バカじゃん!
おとなしく郡山2泊にしてホテルに荷物を置き、その周辺をうろつくぐらいにすればよかった……。
けれどしょぼくれていた私の心は、喜多方の街を歩いているうちに、どんどん上向きになってきました。
(なんて綺麗な街なんだろう)
歩道は広くてスッキリと歩きやすく、歴史を感じる建物もいい感じです。スーツケースの車輪も、溝にさえ気をつければ、軽くてコロコロと押しやすい。もちろん汗だくにはなりましたが。
(よーし、スマホの電池が切れる前に宿につけば……)
……フッ。
電池切れたあああ!
ちょっと待って。ここで道に迷ったら、私凍死するよね⁉









