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40話 尽きる事のない思い

「ユエ? 入るよ」


僕はそう声をかけて、ユエの研究室の扉を開ける。


「ほし君っ!! なんだい! 今日も来てくれたのかい!?」


すると猫のようにぴくっと反応をしたユエが、僕をみるなり満面の笑み浮かべて駆け寄ってくる。


「さぁ、さぁ、早く上がりたまえよ、美味しいお菓子とお茶も用意してあるよ」


ユエは僕の腰元にぎゅぅっと抱きついて、密着したまま見上げてそう言う。


「いやだよ、ユエの選ぶお菓子って全部まずいもん」


僕はユエの頭をなでながら、きっぱりとそう言ってやる。


「ふふふ、そんな事を言いながらも結局一緒に食べてくれる君が、僕は好きだよ?」


僕に頭をなでられながらユエは、顔をへにゃっと緩ませてそう言うのであった。


「…………………ユエにそう言われちゃ、食わない訳にはいかないな」


くっ…………… 僕にあの汚物達を食えと言うのか、この悪魔め。


「ありがとうほし君、やっぱり君は優しい人だね」


僕を抱きしめて、僕のおなかに自分の顔をグリグリと擦りつけるユエたん。


まったく……


「愛してるよ、ほし君っ!」


これだから幼女って奴は……………… 最高だぜっ!!


「……………………………………………ごほんッ」


「あ……………… す、すまないジャスカス」


僕らがそんなやり取りをしていると、そのすぐ近くに控えていた一人の男が咳払いをする。


その男の名前は、ジャスカス・アーデンテイル……


ユエの実の兄であり、仕事の上の助手である男だ。


「今日はもう上がっていいぞ…… お疲れさま」


ユエは少し気まずそうな顔を浮かべて、ジャスカスにそう言う。


「……………………………………………失礼します」


ジャスカスは露骨に不機嫌な顔を浮かべて立ち上がり、入り口へと向かう。


「………………ッチィ」


そして、僕とすれ違いざまに舌打ちをして部屋を出ていくのだった。


くふふ…………………………


……負け犬ザマァ!


「すまないな、ほし君……… 気を悪くしないでくれ」


ジャスカスが部屋を出ると、ユエが僕の事をきゅっと抱きしめそう言う。


「いや、気にしてなんてないよ」


僕はユエの、柔らかいぷにぷにほっぺを触りながら微笑む。


まぁ、ぶっちゃけアイツの嫉妬に狂った表情が最高に笑えるから、むしろもっと見せびらかしたいのだが。


「それよりお茶にしよう……… 今日のは美味しいんだろ?」


「ああ…… わかった、すぐに用意しよう」


ユエは、僕にほっぺを撫でられ「ん~」っとしながら、そう言って微笑むのであった。


ふふ…… すっかり僕にメロメロだな。


どっぷりと、『魅惑アプローチ』漬けにしただけのことはある。


さて……


そろそろ狩り時かな?


――――


「はぁぁ……… ほし君の匂い…… 落ち着くぅ」


「よしよし」


僕はユエを膝の上に乗せて抱きしめる。


ユエは僕の膝の上で、僕の胸元に顔を埋めて深呼吸を繰り返している。


僕に体重を預け、脱力しながら僕を抱きしめ、そして甘えてきている。


僕の匂いを嗅ぎながら、すこし頬を染めてるところがもうたまらなく可愛い。


「ほし君…… 好きだよぉ」


「ああ…… 知ってる」


「知ってるのかぁ…… ふふ」


ふにゃふにゃに蕩けるユエ。


ふむ…… 我ながら完璧な仕上がりである。


あれから……


あのデートから一ヶ月が経過した。


デートにより一応正式なカップルとなった僕とユエ。


僕はあれから、毎日欠かさずユエに会いに来ている。


そして……


毎日『魅惑アプローチ』をユエに送りこみ続けた。


ユエの「初めての恋愛」と言うドキドキ感に紛れ込ませる形で、粒子化した僕の「スライム体」を『魅惑アプローチ』と共に大量に送り込み続けたのだ。


毎日、毎日、欠かさず、大量に……


僕はユエに『魅惑アプローチ』を供給し続けた。


しかもデートの時に使用した「スライム体」に少し改良を加えて、軽い「中毒性」と「快楽作用」も加えてある。


つまり、軽度の麻薬効果だ。


これを……


この「改良型魅了スライム」をユエたんに、継続投与したのだ。


こうして、僕の「スライム体」はユエたんに蓄積し、そしてそれがユエたんの体内に定着し馴染み始め……


結果……


「ほし君は僕の癒しだなぁ…… もうほし君の居ない生活なんて考えられないよ」


ユエは僕中毒になりましたw


ユエの僕への好感度は最早限界突破で上昇を続けており、加えて僕成分を定期的に摂取しなければ情緒不安定になる体質へと変質したのだ。


最早、完全に僕の虜である。


虜である。


「ほし君が居てくれるなら、僕はどんなことだって出来る気がするよ……」


「そうかい…… ありがとう」


ちなみに……


僕は今現在、完全に素の状態である。


デートの時に使っていたイケメンも、つくり笑顔も、キャラ作りも、全部していない。


だって…… あれ疲れるんだもん。


顔は一ヶ月かけて、毎日少しずつもとの造形に戻していき、キャラの方も「少しづつうち解ける」体を装って出していった。


プログラムした表情もやめたが…… 前提として「高い好感度と信頼」がある僕を、最早ユエは疑ったりしないので必要ない。


そんな訳で今や「星屑無印」でユエと会っているのだ。


そして、その上で……


「ん…… 好きだぁ」


このデレっぷりである。


くふふ……


さぁ、準備は全て整った。


後は……


「なぁ、ユエ」


「ん……………?」


僕はユエを真剣に見つめる。


「仕事を全て辞めて、僕と暮らさないか?」


「…………………え」


そして、唐突にそう言う。


今まで一度も「そういった事」を言わなかった僕。


そんな僕が、いきなり人生に関わるような重大な事を言い出す。


「え、えっと…… どういう…」


そんな僕を見上げて、戸惑うユエ。


思いっきり困惑をしている。


まぁ、そりゃあそうだろう……


いくら僕中毒とは言え、理性や良識がなくなった訳じゃない。


大企業のトップで在る彼女がいきなり辞められる訳がないのだ。


それに……


「そのままの意味だよ…… 僕と一緒になって欲しい」


「え、えっと…… う、嬉しいけど…… けど」


それにユエには一つ、問題があるのだ。


彼女にとって大きな問題が…… 一つ。


「あ…… 兄との約束が……」


それは彼女の兄、ジャスカスとの約束である。


実にくだらない…… 約束である。


「前に言っていたやつだろう……?」


「う、うん」


その約束とは、本当にくだらない…… ジャスカスの一方的な主張の様な約束だ。


その内容はこう……


なんでも、ジャスカスは昔「天才」と呼ばれる錬金術師だったのだとか。


そんな「天才」である彼は、学生の頃からその才能を遺憾なく発揮し、学術においてあらゆる好成績をたたき出していた。


そして、そんな彼が始めてぶち当たった壁があった。


それは「カブレシリァ理論」と言う、当時実証されていなかった魔法理論の証明に取り組んだ時の事であった。


周りから「いくら天才といえども無理だ」と言われながらも彼は、その証明に取り組んだ。


事実、その証明は天才である彼を持ってしても非常に困難なものであり、彼は数年立ってもその証明が出来ないでいた。


周りが「やはり無理なんだ」と諦め始め、彼は段々と「天才」とは呼ばれなく無くなっていった。


それでも彼は、しっかりと手ごたえを感じていたし、決して諦めなかった。


毎日毎日、休まず研究を続けたのだ。


天才と呼ばれずとも努力をし、笑顔を絶やさず、ただただ前向きに研究を続けたのだ。


そして……


その結果は実った。


彼は5年の歳月を費やして、「カブレシリァ理論」を証明したのだ。


彼は一躍輝きを取り戻し、「天才」の座に帰り咲いた。


世間は再び彼に注目をし、「努力の天才」、「偉大なる天才」と持て囃したのだ。


彼の人生は美しく彩られた。


努力は報われ、彼の人生は咲き乱れたのだ。


そして……


その直後にそのすべてがぶち壊される。


そう、ユエの手によって……


当時……


当時5歳だったユエがいた。


彼女は兄思いのいい娘で、無邪気で、純粋で…… そして桁外れに頭が良かった。


彼女は……


その頃の彼女は兄に遊んで貰う為に、良く魔法学校に訪れていた。


そして兄を待っている間に、学校の研究書や学術書を読み漁っていたのだ。


暇つぶしに… そして片手間に。


そんな彼女が、兄の論文を見た。


彼が実証した「カブレシリァ理論」についての論文を見たのだ。


そして…… 彼女は言った。


「これ違ってるよ?」


彼女は、彼が5年かかって積み上げて作り上げた論文を……


「多分こうだよね?」


彼の仕事が終わるまでの数時間の間に解き、あまつさえ改善してみせたのだ。


それから……


それからである。


彼女の、ユエルル・アーデンテイルの輝かしい人生が始まったのは。


そして……


彼の、ジャスカス・アーデンテイルの人生が朽ち果てたのは。


ユエの「兄に褒められると思って」と言う思いは凶器となって兄に止めを差し。


そして、兄は潰れた。


努力は報われず、彼の人生は枯れ落ちたのだ。


それから……


兄は引きこもった、そして情緒不安定になった。


やさぐれ、堕落し、とことんダメになった。


最早枯れの人生は終わっていたのだ。


心が折れていたのだ。


そんな……


そんな彼を救ったのは、皮肉にも枯れの妹、ユエルルだった。


ユエは紆余曲折の果て、彼にと一つの約束をして立ち直らせる。


それは…… ユエが「世界で一番優れた人間」になる事。


そして、ジャスカスがその礎となる事である。


ジャスカス曰く「偉人の踏み台」であれるのであれば、まだ報われるとの事だ。


………………………と、まぁこう言う話である。


まぁ、なんか少しいい話風な感じがしないでもないけど……


要約すれば「天才に負けたんだからしかたない」って自分に言い訳したいだけなんだろ?


僕とユエが会う事に良く思わないのは「恋愛にうつつを抜かしていてはダメになるから」だなんて言っているらしいけど……


要は、「俺の人生ダメにしといて幸せになろうとしてんじゃねぇよ」って事なんだろ?


ふむ……


実にくだらない。


そんなのは約束でもなんでもなく、ただの妬みだ。


「兄との約束と僕と…… どっちが大事なんだ?」


「え!? ……そ、そりゃぁ、で、でも」


だから僕はハッキリとそう言ってやる。


そんなくだらない約束を反故させるために。


ユエは……


ユエはそんなくだらない事を気に止めている必要はないんだ。


ユエは僕だけを見てればいい……


そして全てのしがらみを取っ払って、全身全霊で僕の為に尽くして欲しい。


僕だけを愛し、僕だけに尽くし、僕の為だけに働いて欲しい。


そして一生養って欲しい。


それを完全なものにするための努力なら…… 


僕は惜しまない。


「今日はもう帰る……」


「え…… も、もう?」


僕は少しだけ冷たい顔をしてその場を立つ。


今まで、全くしたことのない、冷たい顔で……


「え…… ちょ、ちょっとほし君…… お、怒ってるの?」


「怒ってないよ」


少しだけ泣き顔のユエに、僕は少し怒った顔でそう返す。


ああ、その「不安でたまらない」って顔…… 可愛くてたまらない。


ふふ…… さぁ、焦れ。


悩めよ、ユエ……


ユエは…… 約束に縛られている。


自分が「兄をダメにした」って負い目があるから、兄の出したその約束に縛られてるのだ。


純粋で、兄が好きで、無駄に頭が良くて…… なまじ約束を守れそうなだけの力があるから。


ユエは約束に縛られてる。


だから……


「じゃあ、また来るよ…… 考えておいてね」


「あ………ぁ… ほ、ほし君ぅ…」


だから、ユエには自分から約束を捨ててもらう。


自分の意思で僕の所に来てもらう。


自ら望んで、僕の物になってもらう。


ふふ……


君は最早完全な「星屑中毒者」だ。


最終的に選ぶのは僕と既に分かっている。


ここで、冷たく突き放された事で、君は更に僕を欲するようになるだろう……


さぁ……


後は、彼女の最後の選択の為の場を用意しないとね……


人生の決断には…… くふふ。


「ドラマが必要だ……」


僕はユエたんの研究室を後にしたのだった。








「やだよぉ……… ほし くぅ…ん」


――――




「くぉ!! くそぉ!! くそおおおおおおおぁあぁ!!!」


ユエたんの研究所から、少しばかり離れた雑木林。


そこで、一人の男が木を殴りつけていた。


「あの男ぉ!! ぐぎぃいいい!! 許さないぃ!! ゆるさなィイいいいいい!!」


その男の名はジャスカス・アーデンテイル。


僕の愛しのユエたんを縛る、クソ兄貴だ。


ユエを縛るのは僕だけでいい。


物理的にも精神的にも。


「がぁぁああああああ!! もう、使おう…… これでアイツをぉ!!」


激怒の表情のまま、彼は一枚の紙を懐から取り出す。


「この…… 『悪魔召喚式』でぇッ」


その紙は『悪魔召喚式』の契約書。


彼ほどの錬金術師なら判る、極めて命令力の高い、上級悪魔に対して「主人」になる事ができる契約書だ。


ある日彼が偶然、導かれるように「地下の骨董品屋」から購入した、世界的に見ても貴重な悪魔契約書である。


「悪魔を、召喚して、アイツを、殺して、やるぅぅぅぅ!!!!」


そして彼は、その契約書をぎりりと握り締め、完全にヤバイ目つきでそう唸る。


おいおい、完全にいっちゃってるな、あの男。


まるで、「丁度今頃に狂い始めるように調整されながら、『狂気化』の成分を含む『スライム体』と投与された」みたいな風貌じゃないか。


いやぁ… 怖いなぁ。


「ぜったい! 許さん!! ユエルルはぁ…… 俺のものなんだよぉおおおお!! アイツは俺の元で世界に貢献するんだよぉおおおおお!! 勝手に付くなゴミ虫めぇぇぇ!!」


ふふ…… さて準備も完璧だね。


勝負は明日だ。


「くふふ…… 楽しみだなぁ」


あれ? もしかして星屑さん…… 超クズじゃね?



御宮星屑 Lv1280


【種族】 カオススライム 上級悪魔(ベルゼバブ)


【装備】 なし


〔HP〕  7050/7050

〔MP〕  3010/3010


〔力〕 7400

〔魔〕 1000

〔速〕 1000

〔命〕 7400

〔対魔〕1000

〔対物〕1000

〔対精〕1100

〔対呪〕1300


【契約魔】


マリア(サキュバス)


【契約奴隷】


シルビア


【スライムコマンド】


『分裂』 『ジェル化』 『硬化』 『形状変化』 『巨大化』 『組織結合』 『凝固』 『粒子化』 『記憶複製』 『毒物内包』


【称号】


死線を越えし者(対精+100)  呪いを喰らいし者(対呪+300) 


暴食の王(ベルゼバブ化 HP+5000 MP+3000 全ステータス+1000)


龍殺し(裏)


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』 『悪夢の追跡者ファントム・ストーカー


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


味確定テイスティング』 『狂化祭(カーニヴァル)』 『絶対不可視殺し(インビシブルブレイカー)


常闇の衣(コートノワール)』 『魔喰合(まぐあい)』 『とこやみのあそび』 


喰暗い(シャドークライ)』 『気高き悪魔の矜持ノブレス・オブリージュ』 『束縛無き体躯(フリーダム)』 


完全元属性(カオス・エレメント)』 『魅惑アプローチ

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