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ああ勇者、君の苦しむ顔が見たいんだ  作者: ユウシャ・アイウエオン
第一章 夢と希望の始まり(勇者マジ殺す)
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12話 大いなる誤算と諦めない心

「ふぅ…… っし、いくぞ」


僕は大きな袋の口を開く。


その中には様々な用途で使われ、そして余った鉄の塊たちの姿。


大小様々な大きさ…… でも手の平の中には納まるよう砕いて調整した、数多の鉄塊。


これで奴を攻撃する。


「すぅ…… はぁ……」


一つ…… 深呼吸。


気持ちを入れる。


もう、始めたら最後。


戦いは始まり、戻れない。


いじめられるだけだった僕には…… もどらない。


………………………始まる。



僕は鉄塊を強く握る。


そして肩幅に真っ直ぐに立つ。


そして前方を見つめる。


目の前に広がるのは、緑の平原。


そしてその奥に広がっている…… 黒い平原。


僕はその黒い地平線を見つめて…… そして視界が一気に飛ばす。


はるか先の景色へと一気に視界が一気に飛ぶ…… 『万里眼ばんりがん(直視)』で一気に飛ぶ。


その視界の先にいたのは…… 黒い塊。


土下座のように地面に這い蹲り。


顔面を地面に押し付けて、恍惚の表情で草を貪る…… 狂気の塊。


涎をたらし、牙をむき出し、裂けるかのように口を開き、げらげらと笑う黒鬼…… ガヴィードメタルオーガ。


僕はそれを見据え、心の中で奴へのストーキングを開始する。


僕の感情が…… 奴へと入りこんでゆく。


ずずず…… っと低い音を脳内に響かせ、奴の、一挙手、一投足を、捕らえる。


僕は……


鉄塊を握り締め、大きく振りかぶる。


そして…… 765ある僕の力を、その全てを…… 鉄塊に伝えて行く。



足を踏み出し、「ズンッ」っと音を立て、地面が割れる。


「グリィッ」っと竜巻のように激しく腰を捻る。


「グォワァッ」っと風を切り、腕がしなる。


凄まじい「力」が今、俺の指先で生まれようとしている。


そしてそれは僕の「特訓」の成果による、抜群のコントロールで対象の元へと届くだろう。


「特訓」…… あの展望台から、眼下に広がる遠くの美女達の…… 


その可憐なる乳首に向かって小石をピンポイントで当てる「特訓」。


最大の集中力で行われた、最高の特訓。


それがこの技を生み出した。


標的に…… 目指すべき場所に…… あたることを前提して放つこの技。


標的に集中し、執着し、望み…… 強い的中のイメージを持つ事で、弾道補正を最大限に発揮させるスキル。


「ぅぁぁぁぁあああああああッ!!!」


腕の先から「ボッッゥ!!」っと爆発したような風音がうなる。


そして凄まじい速さの鉄塊が…… 弾丸が黒鬼に向かって放たれる。


これが投擲の上位に位置する必殺スキル……


「『オメガストライク』だぁ!!」


僕は、遠くに向かってそう叫んだ。


――――


僕の視界の先。


黒い塊が蠢くその場所に、鉄の塊が打ち込まれる。


げらげらと笑っているオーガの無防備なみぞおちに、鉄の塊が突き刺さる。


「ガイィィンッ!!」っと大きな金属音を響かせて、僕の投げたクズ鉄が着弾する。


そして……


僕の投げたくず鉄がぶつかったソレは……


ビクリ、と…… 一度体を震わせ。


















がばぁ、と目を見開く。


そしてぎょろりと目玉だけを僕に向けて、グギギ…… と首を傾げる。


そして…… 


に ち ゃ や ぁ …


と……


嬉しそうに笑った。



「………………っ…」


僕がその笑顔を見たときにまず感じたのは…… 狂気、そして恐怖。


あの真っ黒い鬼に、背中に歯を立てられながら嘗め回されるような…… おぞ気。


一瞬の…… 身震い。


僕は…… ソレを、唇と一緒にかみ殺す。



奴は。


すっと立ち上がって…… 無傷で立ち上がって……


そして……


「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!」


と……


狂気と凶器と驚喜をごちゃ混ぜにして、あいつの涎でべとべとにしたような……


そんな常軌を遥か上に逸した声で叫び…… そしてソレが、僕の耳元まで届く。


無駄に声が高いのが逆に怖い。


とても…… 怖い。


だけど僕はまだ冷静だ……


具体的には、4キロ先にあるはずのアイツの声が、なんでタイムラグ成しで届くのだろうと…… 


無駄に頭が働く程度には。


大丈夫だ……


落ち着け。


一撃ではけりがつかないことは想定済みだ。


さすがに無傷は予想外だったけど…… 


それでもまだ4キロも射程のアドバンテージがあるんだ。


大丈夫…… 攻撃を続けろ。


きっと勝てる。


勝てる。


勝てる。


僕は……


「すぅ…… はぁ……」


もう一度鉄くずを握る。


そして、投げる。


投げる、投げる。


投げる投げる投げる投げる!!


投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる投げる!!!



「うきゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおはぁぁああああああああああああああああああああああああああ、

ぬあああああああああああああああああああああああああああばがあああああああああああああああああああああ、

ぼぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


奴の!!


みぞおちに!


寸分の狂い無く。


何度も


何度も…………………… え?


「ぁ’ぁ’ぁ’ぁ’!!!」


なげ……


「あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’!!!!!!」


え?


「あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’!!!!!!!!!」


効いて…… な…… え?


「あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッ!!あ’あ’ぁ’ッあ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’あ’!!」


い?





あ…





え……?





まじ……で?





こいつ…… こんなに丈夫…… なの?





あ……やばい、やばいやばい…… これやばい!!





僕の予想より遥かにコイツ……… 強い!!





あ…… ああ!! あああああああああああ!!!





いつの間にか僕と奴との距離はおよそ200メートルでアイツの凄まじい速力をかんがみればここに到達するまでの時間はおよそ15秒でいやこんな事を考えている間に14秒13びょう12ビョウあああああやばいヤバイやばいあいつまだ無傷だこれ無理だああだめだった調子乗ってたんだ僕はいけると思ってた上手くいけると慢心していたとりあえず投げなきゃああああああやばい外れた当らないどうしようもうだめだ近い近いあいつチカイもうだめだ僕殺されるあいつにコロサレルもうだめだ………

























その時、僕の目の前が絶望に染まる…… 真っ黒に染まる

























絶望して死を感じた…… そんな僕の頭の中に今まで人生が走馬灯のように巡る……

























僅か16年程の短い人生、その全てが僕の頭をぐるぐる巡って………… そして感じた事が一つ























鳳崎……


「あいつだけは絶対ぶっッッ殺すッッッッッ!!!!!!!」


目標は前方10メートル、ガヴィードメタルオーガ!!


鉄を掴め!! 足を踏み込め!! 腰を回せ!! 腕を振れ!!


あいつのみぞおちにコイツをぶち込んでれぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!


「『オメガストライク』ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」


僕の体が真赤に燃えるように熱い!!!


筋肉が、腱が、関節がぶちぶちと音を立ててちぎりれる。


鉄塊を投げた右腕が、踏みこんだ左足が砕けて血を噴出す!!


だめだ…… もう右手左足は使い物にならない。


でもいい…… もうこれでいいい!!!


「おおおおおおおお………… お!?」


その時、僕の中から魔力がごっそりと持っていかれる。


くず鉄が放たれた手元に魔力が吸い上げられる感覚を覚える。


そしてソレと同時に…… 


僕の投げた鉄塊に…… 突然に……


火が…… 燃え盛っている!?


くず鉄は「ゴオオオオオオオオオオッッッ」と突然湧き出る炎を集約するように巻き込んで…… 一本の灼熱の槍となって真っ直ぐに……


オーガのみぞおちへと向かう。


「ぁ…………………?」


僕はポカンとしてソレを見送る。


ありえない事態に思考が停止する。


「え!? ぁ……っ!!??」


しかしその直後…… それまでとはまるで正反対に頭が激しく巡りだす。


何故か……


僕の脳内に真赤な文字が浮かび上がる。


『ハートストライクフレイム』


焼け付くように脳裏に刻まれる。


スキルの名前が刻まれたのだ。


そして、それと同時に僕の頭の中を高速で『悦覧者アーカイブス』がかけ巡る。


悦覧者アーカイブス』が新たなページをめくり、そして予想外の手記を僕に晒し出す。


ソレは神の書き記した手記…… 


書いた神の名は、性愛の神アフロデレス。



『ハートストライク・フレイム』


それは選ばれたものに与えし、神の御技。


相手のハートをあらゆる・・・・手段で焼き尽くす、情熱の神技。


「焼けるように熱い情熱」 「死ぬ直前まで誰かを思い続けること」 「諦めない不屈の精神」 「意中相手のハートを射止めようとするピュアなハート」


そして…… 「本気の思い」


それを持つものにこれを与える。










………………………………………そうか。










よかった……


やっぱり僕の思いは……


僕の君への殺意あいは……


本物だ!!


「いっっけええええええええ!!!!!!」


僕の炎の槍が唸りを上げ、飛来し、奴のみぞおちに突き刺さり、爆発を起こす。


「ごがぉぉぉぉぉああッ!??」


「ビキィ!」と言う鈍い音と共に熱と炎がはじけとび、それに大きくよろけるオーガ。


ああ、なんて刺激的なハートの射抜き方だ…… この世界の神は情熱的過ぎる……


最高だよ。


そして…… オーガのみぞおちには…… ついに!


「ぁ……! ヒビが入ったぁッ!!!」


僕とオーガとの距離は後3メートル。


いける!!


僕は残る無事な方の右足で、大きく踏み込み…… そしてオーガに飛び掛る!!


「があああああああ!!!!!」


飛び掛る僕に、オーガが闇雲に手を振るう。


それに僕の右肩は大きくえぐれる。


血がさらに噴出す、肉がちぎれ飛ぶ。


だが構わない。


もとより使えない右腕だ!!


捨て置け!!


「ミドス!!」


「ぎゅう”う”う”!!」


そして僕はミドスを右腕にまとわせる、ミドスを「装備」する、そしてソレを……


「ああああああああああああああああ!!!!」


オーガのひび割れたみぞおちに…… 全力を込めてぶち込んだ!!


「ッゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


唸る断末魔。


ひび割れたみぞおちから入り込み、オーガの体内を巡る…… ミドスの体。


腐敗の森の瘴気を…… 濃縮したそのミドスが、オーガの体内をかけ巡る。


「あああああぁッ!!!」


「ぐぉあああああああああ!!!」


次の瞬間、オーガの全身から血が噴出す。


真っ黒な血が当り一面に降り注ぐ。


「がぁ!! が がぁぁ!! がぁ…っ! が……ぁ…」


びく… びくっ…… っと血泡を吹いて痙攣をするオーガの体。


そして……


「……………………ァ」


ガヴィードメタルオーガは…… そこでやっと静止したのだった。


「ぁ…………………っ、は、はぁ……はぁっ…!!」


僕は動かなくなったオーガを見つめて…… 満身創痍で座りこむ。


ああ…… 本当に出し切ると…… 本当に何もできないんだな。


だが……


ただ…… 


ただ一つ湧き上がる感情がある。


これは…… 感謝だ。


「ああ…… 鳳崎君…… ありがとう」


僕は真っ黒に血まみれて、静かに微笑む。


あまりの喜びに自然と笑みがこぼれる。


ああ…… 鳳崎…… 死なずにすんだよ……


これで君を……


「殺しにいける」 



御宮星屑 Lv341


【種族】 人間


【装備】 なし


〔HP〕  3/50

〔MP〕  0/10


〔力〕 765

〔魔〕 0

〔速〕 0

〔命〕 765

〔対魔〕0

〔対物〕0

〔対精〕100

〔対呪〕0


【使い魔】


イノセントスライム ミッドナイトスライム


【称号】


死線を越えし者(対精+100) 


【スキル】


悦覧者アーカイブス』 『万里眼ばんりがん(直視)』  『ストーカー(Ⅹ)』


『オメガストライク』 『ハートストライクフレイム』


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