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SAVERS ―光なき心を救う者たち―  作者: 春坂 雪翔


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閑話【二人の相棒の形】

諸事情によりしばらく更新を停止します。

再開は来月三月の予定です。

詳しくは活動報告をご覧下さい。

「相棒って、なんだろうな」


 そこはだだっ広く、室内の電気が白い壁に反射して比較的明るい場所だった。

 無機質な冷たいコンクリートの上であぐらをかきながら頭に機械的なゴーグルを付けた少年が、自分の手のひらよりも大きな銃をくるくると回しながらそう呟いた。

 

 くるくると、とは言ったがその仕草はぎこちなく、まだ手に馴染んでる様には見えない。どちらかと言うとカッコつけてその仕草をしている様に見えた。

 そんな少年の手元の銃が回転する様を、隣で体育座りをしてる少女が横目で見ていた。

 少女も少年と同じく機械的なゴーグルを付けている。子どもが付けるには少し大きなそれは、少年同様板についているようには見えなかった。


「父さんが言ってたんだ。俺とお前が、これから一緒にロストを救出する相棒になるんだって」


 その言葉はどこか他人事で、あまり実感が湧いているようには見えなかった。他人に言われたからそういうものなんだろうという、少年の意思が感じられなかった。


「そんなこと、急に言われても分からねえよな。俺、話すの苦手で友達もいねえし」


 銃を回転させるのに飽きたのか、今度は引き金をかちゃかちゃと鳴らし始める。弾は入ってないからなのか、或いは撃つつもりがないからなのか、銃から何かが出る素振りは無かった。それはまるで、今の少年の心境を映しているかの様だった。


「私もだよ」


 それまで沈黙を貫いていた少女が呟く。

 唐突な言葉だったがそれは、少年の独り言に近かった言葉に対する返事であった。


「同級生はいるけど、友達はいない」


 少女が膝を抱えて足元に置いてある弓に触れながら淡々と話す。それは、諦めてるというより、最初から期待をしていない様な言葉で冷たい印象を受ける。しかし少年は、少女の言葉の温度と自分のそれが近いと思った。


「……そっか」


 少女の横顔に目を向けながら、少年はその言葉に同調する。

 友達がいないという共通点に、少しだけ親近感を覚えたようだ。


『準備が整いました。持ち場について下さい』


 スピーカーを通して機械的な声が室内に流れる。

 それを聞いた二人は立ち上がりゴーグルを顔に装着し、少年は銃を、少女は弓を構えて前を見る。前方の壁が大きなモニターになると、そこに巨大な怪物が映し出された。


 

 二人はロストと戦い救出するセイバーになった。

 しかしまだ年端もいかない子どもだった二人は実戦は一、二回程度で経験値は無いに等しい。故に実戦に近い訓練が必要だった。

 

 リアルな映像で体験型のゲームを元にDSIが開発したそれは、実際に攻撃は受けないもののリアリティのある戦闘が再現出来る。今後増えるであろうロストとの実戦に備え、二人はお互いの時間を合わせて訓練に励んでいた。


 ロストに見立てた怪物が太い腕を振り上げた。次の瞬間、爪を立てた巨大な腕がコンクリートに叩きつけられる。それが頭上に襲いかかってくる寸前で二人は左右に飛び退いた。爪が地を抉り、土煙が舞い上がる。


 少年はロストの死角を取ろうと駆け出した。銃を構えたまま、巨大の側面を走り抜ける。どこかに弱点のニードルがあるはずだ。あと少しで背中に回り込めるその時だった。


 少年の視界の端で、何か太い影が迫ってくるのが見えた。鞭のようにしなった尾が、少年の背中めがけて振り下ろされようとしている。避けられない。少年が思わず目をつぶり顔を覆ったその時だった。


 光の矢が空気を裂いて飛来し、ロストが振り下ろした尾に命中した。軌道が逸れ、少年の横を掠めてコンクリートに激突する。振り返ると、少女が弓を構えてこちらを見ていた。


「悪い、助かった」


 少年は少女に礼を言って息を整えながら、ロストの背中を見上げた。そこに、何か黒いものが突き刺さっているのが見えた。あれがロストに刺さってると教わったニードルだ。壊せばロストを助ける事が出来る。


 照準を合わせ、引き金を引く。銃口から光弾が発射され、ニードルに直撃した。

 ロストが断末魔の咆哮を上げ、巨体が大きく揺らぐ。そして、まるでスローモーションのように、ゆっくりとコンクリートに崩れ落ちていった。


『ニードル破壊、ロスト戦闘不能』


 再びスピーカーから機械的な声が室内に響き渡る。

 少年と少女は安堵の息を吐きながらゴーグルを外した。


 

『お疲れ様。それじゃあ一度ライトを消すよ』


 機械的な声とは違う、落ち着いた大人の男性の声が聞こえ、室内の電気が消える。暗くなった室内で、少年の右脇腹が赤く光っていた。


「え、なんで? 俺今回ロストの攻撃避けたじゃん」

『どうやら最初に振り下ろされた時の爪がかすったみたいだ。実戦だったら危なかったね』

「マジかー。今回はニードルも壊せたし、自信あったんだけどなあ」

『周りをよく見て瞬時に避けるのが、今後の課題だね。現地対策班も訓練でサポート出来るようにするから、お互い頑張ろう』


 男性の励ましの声を聞き、少年は悔しそうに座り込む。再び電気が付き、少女も目線を合わせるようにその場に膝を着いてぺたりと正座した。


「相棒になれるかは分からないけど、お互いの背中を守れる人には、なった方がいいと思う」


 淡々と言う少女の言葉を聞き、少年はぐっと唇を噛む。

 確かに今の戦闘でも少女の弓の攻撃が無ければ、少年はもっとダメージを受けていた。

 一人では戦えない。しかしそれは少女も同じだった。

 少年はあぐらをかいた膝をぱしんと叩く。


「……そしたら、俺達の目指す相棒はそれだな」


 そして少女に向かって手のひらを握り、んっと言いながら自身の腕を突き出した。


「……なに、それ」

「なにって、相棒のあいさつ」


 少年が、少しだけ口角を上げて笑みを作る。

 少女はその突き出された拳を不思議そうに見ていた。


「とりあえず、形だけでも相棒になろうぜ。明日香」


 少年に名前を呼ばれた少女、明日香は少し戸惑いながらも、同じように拳を作り少年に突き出す。


「……うん、よろしく。誠司君」

「呼び捨てで良い。相棒なんだから」


 少年、誠司が明日香の言葉にそう返すと、明日香はぎこちなく笑みを作って言い直した。


「……分かったよ。誠司」


 呼び捨ては慣れてないのか、名前を呼ぶ声はやはりぎこちなかった。

 しかし互いの拳と拳が触れ合った瞬間、二人の間で何かが芽生えたような気がした。

某恋愛無しの男女バディ映画を観賞してこの話を入れることを考えました。二人が今の関係になるまでの過程は書いた方が良いと思ったのと、前話の二人の決心の説得力を深める為です。

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