サザンクロス~願いをかなえて~ 2
残酷描写・性的描写があります。
☆エッジ視点☆
隣の応接室に戻り、コディと植物学者の話を黙って聞く。
昼になって、ようやく二人の話は終わった。
「待たせてごめんね」
「いや……」
王立研究所を出て、街に出る。
適当な食堂に入って昼食を取った。
混みあう大通りを避けて裏通りを歩いて宿に戻る途中で、ふとコディが足を止める。
「骨董市やってるね。
ちょっとのぞいていってもいい?」
「ああ」
横道に入ると、ずらりと道沿いに物が並べられていた。
陶器から木彫りの人形から古布まで様々だ。
コディは楽しそうに見てまわっていたが、ふと足を止めた。
地面に敷かれた布に無造作に並べられたものの中から、掌の大きさほどの石をじっと見つめる。
「……アンさんの【石】に似てるよね」
「ああ……」
アンが作る【歌う石】は月色だが、それは蜂蜜色に近い。
表面に刻まれた模様は、アンのものよりも複雑だ。
「あの、これ、触ってもいいですか?」
コディが店番をしていた十代後半の少女に聞くと、少女は愛想よくうなずく。
「どうぞー」
「ありがとう」
そっと手に取ったコディが指先で模様をなぞるが、歌いはしなかった。
「……見せてくれ」
「あ、うん」
コディから手渡された瞬間、独特の感覚があった。
本物の魔法具だ。
以前アンに頼まれた品に間違いないようだ。
「これ、【歌う石】じゃないんですか?」
コディの問いに、店番の少女は苦笑する。
「違いますよ。
【歌う石】って、有名な歌手の魔法者の人が作るっていう、アレでしょ?
それは先月死んだ私のおじいちゃんが集めてたものの一つなんですけど、贋物を騙されて買わされたんですよ。
本物だったら、おじいちゃんが買えるはずないですもん。
おじいちゃんは、これは全部本物だって、死ぬまで言い張ってましたけど」
「そうなんですか……」
「……いくらだ」
少女は驚いたように俺を見る。
「贋物ですよ?」
「かまわねえ。
こういう石を欲しがってる知り合いがいるんだ」
「……じゃあ、銅貨三枚でいいです。
売れなきゃ全部捨てるつもりなんで」
ポケットを探り、取り出した銀貨を少女に渡す。
「え、あの」
「取っといてくれ。
そのかわり、この石を誰から手に入れたか教えてくれ」
「……さあ……。
おじいちゃんが、どっかの骨董屋さんで買ったとしか聞いてなくて……」
「そうか。ありがとう」
石をポケットに入れ、不思議そうな顔をしているコディを促して歩き出す。
「知り合いって、アンさん?」
「……ああ」
「自分が作るもの以外の【石】に、興味あるのかな」
「……そうだな」
以前アンに頼まれた時は、存在するかどうかもわからないから、積極的に探さなくても、見かけたらでいいと言われていたが、まさか今見つけられるとは思わなかった。
どうやら寄り道しなくてはいけないようだ。
☆☆☆☆☆☆☆
ナリーとの約束の日の夕方、屋敷に着くと、すぐに応接間に通された。
ナリーは今着替えをしていてすぐ来るからと、茶を出される。
コディと話をしながら、もう一度考えをまとめる。
ナリーはコディを気に入っている。
文句を言われるだろうが、最終的には俺の要求を聞いてくれるだろう。
「待たせたな。
無事に帰ってきたようで、何よりだ」
「あ、はい。お久しぶりです」
しばらくして応接室に入って来たナリーとコディが挨拶をかわす。
使用人達が運んできた食事を摘まみながら、酒を飲む。
今回の旅で訪れた地方の話をしながら、コディに渡す果実酒の湯割りに入れる酒の量をいつもより多くすると、二杯目を半分ほど飲んだところでもたれかかってくる。
「眠いのか?」
「ん……」
「……部屋を用意させてある。
寝かせてやれ」
「ああ」
コディを抱き上げ、使用人に案内されて客間に運ぶ。
ベッドにそっとおろそうとしたが、首に腕を絡めて引き留められた。
「エッジさん……」
「なんだ?」
「いっちゃ、やだ……」
「…………」
酔っている時のコディは俺に甘えたがる。
だがもしかしたら、気づいているのかもしれない。
「……すまねえ」
ベッドに座り、膝にコディを横抱きにして抱きしめた。
抱きついてくるコディの背中を、ゆっくりと撫でる。
腕の力が緩んできたところで、頬に手を添えて顔を上げさせ、額を合わせるようにして目をのぞきこんだ。
「コーデリア・トレヴァーに、エドワード・シンプソンが命じる」
はっきりと真名を呼ぶと、びくりとその身体が震える。
カーラの見立てが確かなら、俺が【命令】できるのは一回が限度だろう。
失敗はできない。
慎重に言葉を選ぶ。
「俺のことを、俺と出会ったことも一緒に旅をしたことも、俺に関するすべての記憶を、……忘れろ」
「……っ」
コディは泣きそうに表情を歪めたが、俺の額から移った魔法の光が全身を包むと、意識を失った。
同時に自分から何かが抜けていく感覚がして、数時間戦い続けたような疲労感に身体が重くなる。
軽いめまいを、頭を何度か振って散らした。
もたれかかってきた身体を、そっとベッドに寝かせ、毛布を掛ける。
「……幸せに、なれ」
頬を撫でてそっと囁き、触れるだけのキスをした。
応接間に戻ると、ナリーが強い視線を向けてくる。
「何を企んでいる」
「…………」
ソファに座り、一番強い酒を杯にそそいで一気に飲み干す。
「エド。答えろ」
「……コディから、俺に関する記憶を消した」
ナリーは目を見開く。
「明日の朝目覚めたら、コディは俺のことをおぼえてねえ。
おちつくまで、面倒見てやってくれ」
記憶に多少の齟齬ができるだろうが、日常の生活に埋没してわからなくなっていくだろう。
「理由を言え」
鋭い声での詰問に、わずかにためらう。
だがナリーは、本当のことを言わなければ納得しないだろう。
そしてナリーなら、本当のことを言っても受け入れられるだけの強さがあるだろう。
「……魔法は、人知を超えた力だ。
使えばそれだけ身体に負担がかかる。
俺の身体は、もう限界らしい。
次に魔法を使ったら死ぬと、王立研究所の魔法者に言われた」
ナリーは息を飲んで俺を見つめる。
「コディの為に魔法を使うことをためらいはしねえ。
俺の命と引き替えでコディを救えるなら、安いもんだ。
だが、それはコディの心の傷になる。
自分のせいで俺を死なせてしまったと、一生後悔するだろう。
そんなことはさせられねえ。
だから、これ以上コディとは一緒にいられねえ」
「……ならば、おまえもコディもトールマン村の屋敷で暮らせばいいだろう。
あののどかな場所で暮らすなら、おまえが魔法を使わなければならないような危険な事態にはならないはずだ」
強い口調で言われて、小さく首を横に振る。
そう考えてもみた。
だが、俺がそばにいる方がコディの危険は増す。
俺は異端だ。
コディの平穏な生活を乱してしまう。
守りたいからこそ、愛しているからこそ、そばにいることはできない。
「コディを、頼む」
まっすぐに見つめて言うと、ナリーは深く息をついた。
「……おまえの自分勝手さは変わらんな。
残された者がどんな想いをするのか、考えてみたことがあるのか」
「……すまねえ」
「この後どうするんだ」
「……旅に出る」
「…………」
ナリーはじっと俺を見つめる。
「どこまでも自分勝手な奴だ」
「……すまねえ」
『旅』が、ひっそりと死ぬ場所を探すためだとは、わかっているだろう。
それでも、責めることで許してくれるのがありがたかった。
☆☆☆☆☆☆☆
夜明けまでナリーと酒を飲みかわし、屋敷を出た。
開門と同時に王都を出て、トールマン村のコディの屋敷に向かう。
王都に着いたと連絡は入れてあったが、一人で来た俺に驚く老婆と老執事に、嘘と真実を混ぜた説明をする。
「旅の途中でコディが怪我をしたから、俺の魔法で治した。
怪我は完治したが、魔法の影響で、コディは俺に関する記憶をなくした。
今は王都の、アトリーの屋敷で預かってもらっている。
いずれここに戻って来て、俺のことを聞いてくるかもしれねえが、黙っていてくれ。
俺がいなければ、コディはここで静かに暮らすことを選ぶはずだ」
以前ワイリーにやられて死にかけたコディを治したから、二人には俺が魔法を使えると話したが、そもそも魔法に対する知識が薄いから、俺の言葉をそのまま信じた。
それに、コディがここで暮らすことは老婆と老執事がずっと願っていることだから、そうなるように誘導してくれるだろう。
俺の存在を示す痕跡のすべてを消して、屋敷を出た。
そのまま街道を歩き続けて国を出て、アンが住む迷い森を目指す。
コディと共に旅した街道を通り、初めてコディに会った場所に一人で向かうことは、つらくはあったがかえって覚悟が決まった。
迷い森の手前の村で、念の為に酒場の店主にも口止めを頼む。
「俺を探して誰か来るかもしれねえが、何も言わねえでくれ」
金貨を渡すと驚いていたが、ほくほく顔でうなずいていたから、大丈夫だろう。
アン宛ての荷物をついでに受けとって、森を目指す。
殺気を出しているわけではないが、気配が荒れている自覚はあった。
そのせいか、灰色狼達は遠くから俺の様子を窺っていただけで、近寄ってはこなかった。
アンの家にたどり着くと、訝し気にしながらも出迎えられた。
「一年ぶりぐらいかしら。
コディは、無事に帰れたの?」
「……ああ」
俺に出会ってからの記憶を消しても、出会う前にアンに会う為に旅をしてきたことはおぼえているだろう。
アンにも口止めを頼む必要があった。
丸太のテーブルに向かい合って座り、この一年のことを手短に話す。
「……だから、俺に関する記憶を消して、王都に置いてきた」
黙って聞いていたアンは、ゆっくりと息を吐いて、俺を軽くにらむ。
「……あなたがそう決めたなら、私にはどうにも出来ないわね。
コディがかわいそうだとは思うけど」
「…………」
批判を込めたまなざしをかわし、上着のポケットに入れていたものを取り出す。
「以前おまえに頼まれたものを見つけた」
王都で手にいれた【石】を差し出すと、アンは驚いたように見つめる。
「……どこにあったの?」
「王都の骨董市だ。
持ち主は贋物だと言ってたがな」
「普通の人には、そうでしょうね」
受け取ったアンは、慈しむようにそっとその【石】を撫でる。
「私が作る月色の【歌う石】は、普通の人と魔法者で作るのに対し、蜂蜜色の【歌う石】は魔法者二人で作るものなの。
音も、魔法者が二人同時に触れなければ聞こえないわ。
だから贋物と思われたんでしょうね」
顔を上げたアンは、掌に乗せた【歌う石】を俺に差し出す。
「手伝ってくれる?」
「……ああ」
表面の模様を指先でなぞると、反対側から同じようにアンがなぞる。
すると【歌う石】が銀青色に輝き、語り出す。
「私はキャロ・アシュリー。
我が娘エッタ・アシュリーと共に、この【歌う石】を創る。
我が一族に伝わる歌を残す。
この歌を聞くあなたが、幸せであることを願う」
続けて聞こえてきた歌は、静かだが哀しい響きを持っていた。
「…………」
歌い終わった【歌う石】をアンが胸元にそっと抱きしめる。
「……おまえの係累か」
「ええ。
エッタ・アシュリーは、私のひいおばあさまよ。
私が生まれる前に亡くなったけれど」
今は魔法者はごくわずかになったせいで逆に優遇されることが多いが、国によってはいまだに見つけ次第殺すというところもある。
曾祖母ということは、魔法者にとっては生きにくい時代の人だろう。
『幸せであることを願う』という言葉に込められた想いは切実だった。
ふと思い出して、カーラが言っていたことを伝えておく。
「魔法力の使い過ぎには気をつけろよ」
「そうね、気をつけるわ。ありがとう。
エッジ、今夜は泊まっていって」
「…………」
「お願い。
これをもっと聞きたいの」
【歌う石】を渡したら、すぐに出るつもりだった。
だが、静かな瞳に見つめられて、迷った末にうなずいた。
「……ああ」
話はしないまま、何度も【歌う石】の歌を聞いた。
数回目からアンは【歌う石】に合わせて歌っていた。
静かで切ない歌だった。
アンが作った夕食を二人で黙って食べ、俺が片付ける。
夕食の後、外に出て空をあおぐ。
満天の星を見ていて、ふいにコディの言葉を思い出した。
『世界は広くて、人もたくさんいて、出会える確率なんてきっとすごく小さいのに、それでもエッジさんに出会えたのは、きっと奇蹟ですよね』
あの時も、満天の星空だった。
はにかんだような笑みが愛しくて、思わず抱きしめた。
コディと出会えたことは、俺にとっても奇蹟だった。
その為に生きてきたのだと思えた。
つらいだけだった人生を、憎いだけだった魔法を、受けいれることができた。
すべて、コディのおかげだ。
だからこそ、コディを苦しめることは、出来ない。
自分のせいで俺を死なせたという心の傷を負わせるわけにはいかない。
求めるのは俺自身の幸せではない。
コディの幸せだけだ。
ふいに背後から歌が聞こえた。
アンが歌っていた。
あたたかな、包みこむような声だった。
言葉の代わりに、言葉よりも確かに、感謝と惜別を伝えていた。
目を閉じてその歌声を聴く。
自分の為にしか歌わないアンが、俺の為に歌っている。
アンは、つきあいを続けていた唯一の魔法者だった。
気を許すことはできなかったが、それでも一緒にいることが苦痛ではなかった。
静かに歌が終わる。
振り向かないままつぶやく。
「……ありがとう」
言葉できもちを伝えることの大切さを教えてくれたのも、コディだ。
「ありがとう……」
☆☆☆☆☆☆☆
翌日も【歌う石】の歌を聞き続け、昼食の後に最後にもう一度聞いてから、小屋を出た。
アンが静かに問う。
「エッジ。
あなたは今、幸せなの?」
「……ああ」
たとえ二度とコディに会えなくても。
コディを守ることができるなら、それで充分だ。
「そう……」
「……元気でな」
「……ええ」
階段の上に立つアンに背を向け、振り向かないまま歩いていく。
森に入ってしばらくして、灰色狼の遠吠えが聞こえた。
何か獲物を見つけたのか、遠吠えをかわしあっている。
かなり近いが、俺を狙っているわけではない。
旅人でも迷いこんだのだろうか。
助ける義理はないが、気になってそちらを目指しながら思わず苦笑する。
コディと旅をしている間に、ずいぶんと甘くなったようだ。
コディは優しすぎる性格だから、困っている者を見かけたら放っておけず、揉め事に首を突っこんでしまう。
それで怪我をしてしまうこともあるから、先回りして片付ける癖がついてしまった。
灰色狼の声がする方向を目指していくと、ふいに吠え声が変わった。
獲物に襲いかかったようだ。
聞こえた悲鳴に、どくりと鼓動が跳ねる。
そんなはずはないと思いながら、木立の間を駆ける。
再び聞こえた悲鳴と感じた気配は、間違えるはずのないものだった。
「コディ!」
大木の根元に集まっていた狼の何頭かが、俺に気づいて振り向く。
その全ての口元が赤く染まっていた。
「どけっ!!」
全力で殺気を叩きつけると、狼達は悲鳴を上げて飛びすさった。
気絶した何頭かを蹴り飛ばして駆け寄る。
「コディ……!」
地面に横たわる赤く染まった姿を見て、思わず息を飲む。
全身のあちこちの肉が食いちぎられていた。
特に左足はの膝から下がなく、腿も大きくえぐられていて、右腕も肩のつけ根から取れかかっていた。
意識はない。
それでも、息をしていた。
「しっかりしろ!
死ぬな!!」
マントを脱いでその身体をくるみ、なるべく傷に響かないようにそっと抱き上げる。
来た道をコディの身体に負担にならない程度の早足で戻ると、外に出ていたアンが驚いたように駆け寄ってくる。
「エッジ、何が……コディ!? どうしたの!?」
小屋に運びこみ、台所の床にそっとおろす。
マントを開くと、背後からのぞきこんだアンが息を飲んで顔をそむける。
喉と、胸元は怪我はないようだった。
頭と喉を最優先で守るよう教え込んだ成果だろう。
声は、出るはずだ。
「……アン。
二人きりにしてくれ」
振り向かないまま言うと、息を飲む気配がする。
「……エッジ、あなたまさか……」
「頼む」
「…………」
アンは静かに小屋を出ていった。
冷たくなりつつある頬を撫で、耳元で囁く。
「コーデリア・トレヴァーに、エドワード・シンプソンが命じる。
エドワード・シンプソンと言え」
意識がない状態でも、声が聞こえれば【命令】は効果を及ぼす。
真名だと認識していなくても、呼べればいい。
銀青色に包まれたコディの青ざめた唇が動いて、かすかな音をつむぐ。
「エドワード・シンプソン……」
前回よりも重い疲労感とめまいを、奥歯を噛んでこらえる。
「コーデリア・トレヴァー。
俺とおまえの間に力を発動する」
なるべく早口で言ってくちづけると、コディの身体が魔法の光に包まれ、出血が止まった。
「……っ」
同時に襲ってきた全身のだるさを無視して、コディの服を脱がせ、傷の一つ一つにそっとくちづけていく。
「すまねえ……」
なぜコディがここに来ようとしたのかはわからない。
ナリーや老婆達は引き留めようとしたはずだ。
危惧した通り、欠けた記憶をたどって来たのかもしれない。
どんな理由にしても、俺のせいに違いないだろう。
「すまねえ……」
どれほど痛かっただろう。
苦しかっただろう。
誰よりも何よりも守りたかったのに、守るために離れたのに、結局俺が傷つけた。
「すまねえ……」
くちづけるたびに魔法の光が増していく。
比例するように鼓動が速く、呼吸が浅くなる。
視界がくらみ、身体が重くなっていく。
魔法力が尽きたのか、かわりに命が削られていくのが感じられる。
それでも傷へのくちづけを続け、限界まで魔法の力を強める。
「すまねえ……」
震える手をなんとか動かし、ベルトを緩めて前をくつろげる。
コディの脚を抱え、根元まで埋めて動き出すと治癒が始まった。
「……っ」
見えない手に全身を掴まれているような圧迫感に、呼吸が乱れる。
手足が指先からしびれ、感覚がなくなっていく。
唇を噛みしめてそれらを無視し、動きを速める。
骨が見えていた腿も、なくなっていた足も、取れかけていた腕も、元の形を取り戻していく。
どくどくと響く自分の鼓動がやけに遠く感じる。
すべての傷が癒えたことを確認して、熱を放った。
ゆっくりと身体を離すと、最後の傷を癒して魔法の光が消える。
強張る手で触れたコディの頬は、あたたかかった。
深く安堵の息を吐いて、目を閉じた。




