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おや、さすがですね。(対殺人鬼連合 蓮華サイド4)

 

  殺し屋集団ハイレンズ。そのボス蛇苺。

 

 私が彼女と関わりを持ったのはある事件がきっかけでした。


 今は私の預かり者になってる、ドールコレクターと切り裂き円。その二人がハイレンズ相手に派手に暴れまくった例のあれです。


 ドールコレクターを止めるべく私に協力を求めてきたのがリョナ子さんで、思えばあれがあったから、こうして厄介な人達との糸が一気に絡まった気がします。


 ハイレンズとの抗争は私やリョナ子さんも加わってごちゃごちゃになりましたが、最終的に双方かなりの犠牲者を出しつつ一応の終結を迎えました。


 ドールコレクターが大半の自称妹達(葵シスターズ)を無残に殺されたの対して、ハイレンズ側も蛇苺以外の幹部全員を失いました。

 

 でも、私はドールコレクターに貸しを、蛇苺とはパイプを手に入れ、そしてリョナ子さんとは友人になれた。概ねいい収穫だったと思えます。


 あの時最後まで姿を現さなかった蛇苺が今、こうして私の前に来てくれました。

 

 私が依頼したんです。

 殺し屋にです。

 つまりはそういう事です。


「誰って聞いてるんだけど?」


 狂璃さんは腕をピンと真っ直ぐ、刀を蛇苺に向けます。

 灯さんの方は、気づいているのか分からないですが、無我夢中で私の血を啜っていました。 


「あ、これは、これは、ごめんごめん。私は蛇苺っていいます。殺し屋集団ハイレンズの頭をやってまーす。つってもどっかの誰かさんのせいで今はほぼ一人なんだけどねー」


「殺し屋ぁ? 深緑深層に依頼されたの? 私達を殺してくれって?」


「うん。そこの子に。一応、値段的には一般人と同じにしといたよ」


 はたして、殺し代で領収書はおりるのでしょうか。

 ハイレンズは業界でも割高です、それでも設定価格でいえば下の方でやってくれるみたいです。


「私達を一般人と一緒にするか。ふーん、私が今まで何人殺してきたかわかんないもんね」


 少しむっとしたようです。大抵の人間は自分を特別と思いたいですからね。ましてや自分は世間を賑わす殺人鬼、それをただの人と同じ枠にされたのが気に入らないのでしょう。


「あ~、気に障った? ごめんごめん、でもあれだよ、君が何人殺そうが同じ。むしろ犯罪者ってのは一般人より安くていいくらい。一般人の不良品が君らだ。普通を50だとすると君らはマイナスだ、使い物にならないただのゴミだ。出来損ないだ。特別でもなんでもない。欠陥だらけの人間だ。部品が足りないクレーム品。置き換えれば分かる。ガスのないライター、切れたヒューズ。総じてゴミ以外のなにものでもない」


 そうですね。この二人がそうとは言いませんが、殺人犯にはそういうのもいます。

 自己顕示欲の塊。

 自分をアピールしたくてしょうがない。

 でも、正当な評価は受けられない。能力が低いから。

 だから人を殺す。そうすれば注目はしてもらえますからね。

 猟奇的に殺せば、その分より多く。

 

 でもそれって誰でもできるんですよ。

 やらないだけです。

 

 この世の生き物の中で最上は人です。

 著しく発達した脳は、言語や豊かな感情を人に与え、現代を築く。

力が劣るなら武器を。

 泳げないなら舟を。

 飛べないなら飛行可能な物を。

 高い知能が劣る部分を補完して他の種を圧倒する事でこうして地上を支配してます。


 同種間での殺し合いは別に珍しくない。

 猫だってイルカだって猿だってしてます。


 でも大抵の人間はしません。倫理があるから。


 犯罪者にはそれがないんですね。

 せっかく高い知能が人と他種を分けたのに、自分から下に降りていく。

 まったく理解できませんね。

 

「そうか、じゃあそのゴミに殺されなよ。見下す相手に殺されるのはどんな感じなんだろうねぇ~」


 狂璃さんが構えました。

 灯さんはまだ、ちゅぱちゅぱしてます。


「うん、まぁ殺されないけど。それ他の人に言わない方がいいよー。普通の人は殺すって事をしないんだよ。つまり一対一のリングだとしたら、相手は手足が縛られてる状態なんだ。それを君は自信たっぷりに勝負しようとしている。ほら、どうだっ強いだろうってね。馬鹿みたいだと思わない?」


「黙れっ!」


 狂璃さんが踏み込みました。

 それは一気に蛇苺との距離を詰めるほどの勢い。


 あっさり刀の間合いに入った狂璃さんが、蛇苺の首目掛けて振り抜きます。


「おっそ」


 それを蛇苺は身をかがんで避けます。

 そのまま、横腹に拳を撃ち込み、めり込ませました。

 狂璃さんは、横に吹っ飛びフェンスに激しく叩き付けられます。   


 衝撃で反発、狂璃さんの体が壁から跳ね返りました。


 その頭を蛇苺が両手で掴みます。

 その後、膝蹴り。狂璃さんの顔面に固い膝がめり込みます。

 一度では終わりません、二度、三度。

 何度目で折れたのかはわかりません、いつの間にか鼻から血が溢れていました。

 歯も折れてるでしょうから、口からもでしょうか。

 いずれにせよ、とうに狂璃さんから意識はないでしょう。

 刀は手から落ち、両腕がぶらんを垂れ流していて微動だにしてません。

 でも、蛇苺はやめません。

 その後、十発以上、膝を顔に打ち付けていました。

 

 両手はそのままに、狂璃さんの頭をもって持ち上げます。

 顔がすごい事になってますね。

 血だらけで、前の歯は上も下も無くなってました。


「一応、骨折っとこうかなー、反撃あるかもしれないしっ」


 蛇苺が手を離すと、崩れるように狂璃さんが地面に落ちます。

 今度は片腕を持つと、肘を足で踏みました。

 そして本来関節が可動しない方に無理矢理曲げます。


 耳に残る不快な音が耳に入りました。


「よし、これで安心してやれるね」


 蛇苺はそういうと、懐から銃を取り出しました。

 その銃口は、地面に倒れている狂璃さんの後頭部へ。


「あっ、蛇苺さん、その前にこれどうにかしてください」


 私は、自分の太股を舐めずってる灯さんを指さしました。

 もういい加減気持ち悪いです。


「あ、そだね。ラジャー」


 瞬時に引き金が引かれました。

 銃弾は、灯さんの右手の甲に当たりました。

 灯さんは両手を地面につけながら舐めてましたが、その下には電動ドリルが置かれてたのでそれを考慮にいれての攻撃でしょう。それにしても危ないです。

 驚くことにそれでも灯さんは舐めるのをやめません。

 少し体がびくつきましたが、口はつけたままです。


「もう、いつまでやってるのさー」

 

 消えるようにこちらに近づいた蛇苺さんが、灯の頭目掛けて強烈な蹴りをみまいます。

吹っ飛ぶ灯さん、これでようやく私は解放されました。


 フェンスにぶつかりながらも、灯さんがゆらゆらと立ち上がります。

 うねる長い髪と、口元の血がとても不気味さを演出していました。


「血、血、血・・・・・・」


 ふらふらとまだこちらに血を求め近寄ってきます。


「君しつこいねー、少し大人しくしなさいな」


 蛇苺さんが灯の胸を軽く押しました。

 ふわりという感じだったのですが、灯の体は思いの外かなりの勢いで後ろに飛ばされます。

 フェンスにまた激突、そしてその衝撃の分、体は戻されます。


 それを。

 

 蛇苺がタイミングを合わせて飛び、両足を灯さんの頭に挟めると、バク宙の要領で回転し固い地面へと灯さんの頭部を叩き付けました。


「おぉ」


 思わず感嘆の声を上げました。

 あれ、フランケンシュタイナーってやつですね。

 見事に決まりました。でもここコンクリートですよ。今ので死んだんじゃないでしょうか。

 目をこらすと、白目は剥いてますが灯の胸は微かに上下してます。生きていました。


「ゴミはゴミ箱へー、じゃあ仕上げだね」


 蛇苺さんが銃を灯に向けました。

 

 なにはともあれ生き残れたようです。

 ドールコレクター達には後できつくいっておかなくてはなりません。危うく死ぬとこでしたよ。


「ストーーーップ。ちょっと待ってぇ」


 止めを刺そうとしていた蛇苺に横槍が入ります。

 どうやらまた戻ってきたみたいですね、いまさらですけど。


「ん? あれ、君、もしかして、ドールコレクター?」


 蛇苺の視線の先には、さっきからうろちょろしている私の連れがいました。


「そういう貴方は、蛇苺? 先日はどうもどうもー」


 二人が直接会うのはこれが初めてです。

 お互い、仲間を殺された間柄ですが、怨恨は微塵もありません。


「あらあら、実物はずいぶん可愛いんだねぇ」


「そっちこそ、服で隠れてるけどすごい鍛えられてて中は美しそう。ぜひ、じっくり観察させてもらいたいよぉ」


 殺し合ったのに、随分和気藹々ですね。

 まぁ、ここでいざこざを起こされるより全然いいですが。


「で、なんで止めたの? 私は、この深緑深層に依頼されたんだ。ちゃんとミッションコンプリートしなきゃだよ」


「うん、そうなんだろうけど。ちょっと私の大切な人が生きたまま欲しいって言ってるんだよ。だから、その二人はそのまま私がもらうね」


「いやいや、私もプロだからね。ちゃんと殺すよ。それが仕事だし」


「うん、そうなんだろうけど。私の大切な人が生きたまま欲しいって言ってるんだよ。だから、その二人は私がもらうよぉ」


「だから、依頼を受けた以上プロだからね、ちゃんと最後まで・・・・・・」


「うん、そうなんだろうけど、私の大切な人が生きたまま・・・・・・」


 不毛です、不毛なやり取りが行われてます。これはどっちも折れそうにないパティーンです。 


「じゃあ、こうしましょう。この依頼無かったことにします。キャンセル料は支払いますのでそれでどうでしょう?」


 かなり無茶な提案ですけど、蛇苺は納得してくれるでしょうか。


「・・・・・・しょうがない。それで手を打とう。ドールコレクターはあぁ見えてかなり気が立ってるね。私としても無駄な争いは避けたい」


 蛇苺さんは肩をすくめて、私の提案を受け入れてくれました。瞬時に判断したのでしょう。このままだと、蛇苺さんはドールコレクターと切り裂き円を相手にしなくてはならなくなります、お金にもならないですから、申し訳ないのですけど、それが最良の判断だと思います。

 

「ありがとうー。その代わりに今度なにかあったら力になるね」


 ドールコレクターがにこやかにそういうと、蛇苺は背を向けて歩き出しました。


「殺人鬼のような欠陥品に手伝ってもらうほど私は落ちぶれてはないよ。私も人を殺すけど、今回のようたまにゴミ拾いもしてる。君達の遊びと違ってちゃんと社会に貢献してるよ。その分、君達よりは幾分ましさ」


 こうして、蛇苺さんの姿はいつの間にか消えました。

 彼女にはこちらの我が儘で悪い事をしてしまいました。いつかこのご恩はお返しします。


「うふふ、これでリョナ子ちゃんに褒められるかな」

「それは、そうだ、姉御はよくがんばった! ちゃんリョナさんも、胸くらい揉ましてくれる、はずだ!」


 なるほど、リョナ子さんの所に行ってたんですね。

 そりゃ私なんて置いてくわけですよ。


「もう、本当に貴方達は困った人達です。私だって死ぬとこだったのですからね」


 体中が痛いです。とくに背中。早く病院に連れて行ってもらいたい。


「うふふ、見捨てたわけじゃないよ。蓮華ちゃんならどんな状況でも死なないと思ったからだよぉ」

「うんうん、そうだ、レンレンがやられるわけない。必ず奥の手は残してる、だから置いてっても大丈夫、なんだ」


 信頼されてるって事でしょうか。なにか複雑な気分です。



 それにしてもですよ、お腹以外に傷が増えちゃいました。


 私を傷物にしたお礼はしなきゃですね。


 だれが頭なのかまだ知りませんが。


 どこのどいつだろうが。


 必ず探し出して。 


 私の前で。


 あはっ、とっても楽しみです。

 蛇苺は対殺し屋編参照です。

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