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なんか、ノープランみたい。(対殺人鬼連合 リョナ子サイド2)


 半場強制的に殺人鬼達を捕まえる事になったの。

 

 あっちは何人いるか分からない。

 どんな奴らかも知らない。

 それなのに、僕達はたった三人で可能なかぎり無傷で捕まえなくてはならない。


「金糸雀ぁぁ、服を全部脱いでそこに寝ろ」


 筆頭の楠葉さんがいなくなり、今代わりに特級を仕切ってるのは茶色い紙袋をかぶった天城さん。この中では一番の古株だ。

 下の者にはとても厳しい。少しでもミスれば激しく叱責するし、暴言も吐く。本当、この人の直属じゃなくて良かったよ。天城さんが指導した拷問士は悉く辞めていったと聞く。

 いうなればパワハラお局様って感じかな。 


そんな天城さんが金糸雀カナリアにそう指示した。


「なんでデース?」


「お前は馬鹿か、そのままじゃこっから出られないだろが! いちいち言わせんな」


 そういうことね。

 本来、金糸雀は執行局から出られない。

 普段は隔離され、仕事の時だけ部屋から動かされる。

 彼女に自由はない。

 じゃあ、どうするか。

 こうするしかない。


 金糸雀は身に纏っていた服を下着を含め全て脱ぎ去った。

 真っ白な肌が露呈する。

 蒼い髪と瞳が際立つ。

女の僕も息を飲むほど美しかった。


「よし、床に仰向けで寝ろ。当然だが麻酔はない、暴れんなよ」


 金糸雀は目隠しをされ、その場で寝かされる。

 天城さんの手にはメスが握られていた。


「おい、全員でやる、特定されないように関係無い箇所も抉れ」


 その場の皆にメスが配られた。

 

 金糸雀は超危険人物。万が一逃走された場合に備え、居場所を特定する物を無数に埋め込まれている。

 それを今取り除こうというのだ。


 雪原の肌に、メスの切っ先が触れる、張りのある肉が押し返すがやがて反発が破れ、ぷちりと赤い球が浮かぶ。

 (天城さんあーだこーだ中)。


「・・・・・・う・・・・・・」


 金糸雀の顔が苦痛に歪む。

 天城さんの一刀に続き、他の拷問士達も(あーだこーだ中)。


「うが、んんん、あああ・・・・・・んあう」


 解剖されていく、チップが何個で何カ所埋まってるのか分からないように、関係ない部分にもメスが入る。

 ある者は、乳房を。ある者は、腋を。

 ある者は、二の腕を。ある者は、肋骨を。

 そして、僕は痛みの少ない、肘を裂いた。


「あああがっがががぁぁぁあ」


 特級だろうが、元殺人鬼だろうが、痛みがないわけがない。

 金糸雀は涙と涎を垂れ流しながらそれに耐える。


「これは、執行じゃない。だから別にお前の罪が軽くなるわけじゃない」


 そう、これはただ、ここから出るために必要だからやってるだけ。

 金糸雀にとっては体中を切り刻まれているだけ。

 それでも、金糸雀が黙って従っているのは。


「ああう、ク、クズハは・・・・・・みんなから嫌われていたワタシに、話しかけてくれたデス、ああうううっ、ク、クズハはワタシに、ジュースをくれたデス、いあああだああ、ク、クズハは、クズハは、初めて、うなああっ・・・・・・ワタシに優しくしてくれた人デェェェスっ!」


 傷口から血が溢れ流れていく、途中から俯せにされ、背中や腰、お尻、太股にも傷がついて行く。

 金糸雀は歯を食いしばって必死に耐えた。


「だ、だから、我慢するデス、クズハの仇は、ワタシが必ず・・・・・・」


 ピンセットで肉を抉り、チップを取る。

 最終的に5個出てきた。

 縫合前に、新たに用意した別のチップを埋める。


「よし、これで全部だ。傷はホッチキスで止血しろ。終わったらすぐに行け」


 血だらけのまま、金糸雀は立ち上がった。綺麗だった白い肌が今は真っ赤に塗りつぶされていた。   

 染み一つ無かったのに、傷だらけなっちゃった。


「おい、殺菜にリョナ子、こいつには手錠をはめておけ。本当にどうしようも無い時だけ外していい」


 もうすでに金糸雀はボロボロ。さらに手錠で自由を制限。

 ここまでして連れていく意味があるのだろうか。


「職員にも協力者はいる、だが、とりあえず夜には一度帰ってこい」


 こうして、僕達三人は裏口から外に出る。


「久々に太陽を浴びたデス」


 金糸雀が肺いっぱいに空気を吸い込む。

 袖が異様に長いダルダルの黒いカットソーに、チェックのスカート、破れたタイツ。

 両手の手錠が、これにより余り違和感がないように見える。

 ただ、首から下がる鎖を、殺菜ちゃんがリードの様に掴んでる。

 一見僕らはド変態である。


「さて、どうしよう」

「そうすっね」


 10時ってとこか。出たのはいいけど、一体なにをすればいいのやら。

 一応、天城さんから犯人の目星は教えてもらった。


 職業上、世間の事件はつねに耳に入る。

 手口から推測するに、どうやら容疑者は、今派手に暴れてる殺人鬼達みたい。

 眼球だけを取り除く、通称眼球アルバム。

 血を抜き、それを飲み干す、吸血殺人鬼。

 まるで人間で切れ味を試すかのように、首を切り落とす処刑人。

 この三人以外にも、違った殺害方法が見られる。

 全部で何人いるんだ。


 今回は蓮華ちゃんや葵ちゃんの力は借りられない。

 これは拷問士の問題だから。

 多分、あっちも上から要請がいってるはずだ。 

蓮華ちゃん達にすれば捕まえるより殺すほうが手っ取り早いだろう。

 なんとか、先手をとらないと先を越されちゃう。


「この犯人達、明らかに楠葉さんが拷問士と知って殺したんすよ。理由は分からないっすけど、一般人を殺すのとはわけが違うっす」


「そうだよね、拷問士じゃなくちゃ駄目な理由があるはずだ。そもそもその情報はどこから出たんだろう」


 国家機密の情報だ。素性を知ってる人は限られる。

 身内ではないだろう、楠葉さんを殺せばどうなるか分かるはず。一番影響が大きくリスクも他の比ではない。


「あのー、リョナコ、コロナ、ワタシ今丸腰デース。これじゃ流石に何も出来ないデース」


「あぁ? 犬畜生は黙ってろや。お前に道具を持たせるわけねーだろが。ただでさえ一般人に危害を加える可能性がある屑なんだからよぉぉ」


 殺菜ちゃんはそういうけど、たしかにかなり危険な連中と対峙しようってわけだから、なにも武器が無いってのはどうかな。


「まぁまぁ、殺菜ちゃん。相手も相手だからね。金糸雀の武器は用意しよう。本当に使う時になるまで僕達が持ってればいいじゃない」


「う~ん、リョナっちがそういうなら・・・・・・」


 殺菜ちゃんはしぶしぶ了承してくれた。

 しかし、そうなるとどこで手に入れようか。


「あぁ、近くにいい場所があるね。金糸雀は行ったことないだろうけど、入る資格は一応ある」


「ふむ、お千代さんのとこっすね。たしかにこいつは排泄物にも劣るっすけど、特級っすからね、無条件で入る事はできるっす」


「オチヨさんデスカ?」


 拷問器具専門店とでもいえばいいかな。

 元特級拷問士のお千代さんが店主をしているんだ。

 一階は普通の雑貨屋さんなんだけど、地下でひっそり営業している。


「まずは、そこに行ってみよう。お千代さんは顔も広いからもしかしてなにか知ってるかもしれない」


「そうすっね。でも、あそこに店員苦手なんすよね。なんかあのギョロリとした真っ黒の目で見られると寒気がするっす」


 目黒ちゃんの事かな。たしかに、視線は凄まじいけど。

 本来、気さくで良い子なんだけどなぁ。  

  

 この時、無意識でなにかが引っかかったんだ。

 でも、気にもしなかった。

 よく考えれば気づいたのかも。


 僕達は呑気にその店に足を向けた。

 ここから一気に色々動き出すとは思ってもなかったよ。

 地味な話が続いてますが、そろそろ動いていくと思います。考えながら書いてるので全く先は見えてませんけど。

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