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なんか、午前中は仕事ないみたい。

 出社時、すごい雨だった。仕事場についた僕は、濡れて不快な靴下やらを脱いで椅子にかけ乾かしていた。


 ここに来ると雨の音は全くしない。それでも、外の天気が悪いのがわかってると少しだけ気が楽になる。晴れ渡る青空からこの薄暗い部屋に来て一日中籠もると思うとなんだか気分が沈みがちになるからね。


「さて・・・・・・今日のお仕事はなんでしょね~」


 僕が来る前には予定表がすでに置かれている。他に罪人の資料などと一緒にセットになって、部屋の前に置かれた鍵付きの書類箱に入れてあるのだ。

 それを確認するのが初めの作業。


「あら・・・・・・午前中、仕事ないじゃない」  


 拷問士の階級もピラミッド型で上に行くほど人数も少なくなる。高レベルの執行が無い時で忙しい時はレベル1とかも来るけど、今日は下の者に任せられるような執行ばかりなのだろう。


「なんだよぉ、ずぶ濡れになって来たっていうのに・・・・・・」


 なんか損した気分。僕は白衣(黒)と一緒に濡れていたシャツも脱ぎ捨てた。どうせ誰も来ないし、蒸し蒸しするし乾くまでこれでいいや。上半身だけ下着姿になると、僕はこれから何をしようか考えた。

 こんな時にかぎって本は持って来てない、そうなるとメンテとかしかないかな。


「・・・・・・そういえば、午後はレベル4があったな」 


 犯罪にも季節柄ってのがある。

 冬、年末なんかは窃盗や詐欺は増えるし、今のような春から夏にかけては痴漢とかの性犯罪が多くなる。そんな訳で午後の執行は路上痴漢を繰り返していた男。この手の事件は、なかなか検挙しずらい。被害者も被害届を出さない場合があるからたとえ捕まっても罪が軽くなってしまう。


 しかし、今日の罪人のレベルは4。つまりそのレベルに達するほど何十回もやってきたって事だね。これは腕がなるよ。


「よしっ、いつもはちょんぎって終わりだけど、今日はそれだけじゃ済まさないぞ」


 僕はリョナ子棒のストックの一つを取り出した。

 午前中はこれを改造しよう。午後までに間に合うかなぁ。


 僕は椅子に座り、ジャンク品の箱から選んだ材料を机に並べていく。

 ゴム手袋をはめ、ハンダ鏝の温度を上げる。これ、拷問に使ってたんだけど、ちゃんとした用途で使うの始めてかもしれない。


「元のやつからインバーターとコンデンサを流用して・・・・・・」


 こういう細かい作業は得意だ。全体的に流れるように改良していく。


「ここは直列に・・・・・・」


 僕はブツブツいいながら作業を続けた。


「・・・・・・これで・・・・・・完成っと」


 手で汗を拭う。最後まで夢中でやってから案外早くできた。


「・・・・・・と思ったけど、もうこんな時間か」


 時計を確認する。気づいたらお昼を過ぎていた。もうご飯を食べる時間はない。


「ま、いいか。早くこれ試したいし」


 僕は急いでシャツを着て、黒衣を羽織った。

 暑いからこのまま下着のままやりたいけどそうもいかないよね。痴漢相手にサービスする訳にもいかないし。とはいったものの、今まで痴漢なんてされたことないけどね。もしかして魅力がないのだろうか。たしかに先輩のように大きくはないけど、それなりに・・・・・・。


「失礼しますっ! 罪人を連れてまいりました。執行のほどよろしくお願いします」

「あ、はい。どうぞ~」


 いけない、今からお仕事だ。集中しよう。僕は両手でしっかりお面の位置を正した。

 床に仰向けに固定してもらう。これで準備完了。


「じゃあ、始めよう。じゃじゃじゃーん」


 僕はさっき出来たばかりのリョナ子棒改を空に掲げた。罪人に見せつける。


「ただの鉄の棒だったリョナ子棒を強化。雷属性を追加したよ」


 ようは棒状のスタンガンに改造しただけの話なんだけど、これ他の属性も作れるね。火とか、後火とかそれと火とか。風とか水はその内考えよう。


「威力はどうかな」


 僕は罪人の顔に棒をあてがえスイッチオン。独特の効果音と共に光が部屋を一瞬照らす。


「ふんぎゃぁ」


 男は短い悲鳴を上げた。信じられないものを見るように目を見開き僕を見ている。前振りなしでいきなりやったから驚いてるのかな。電気は高ぶってるときより平常時の方がダメージが大きいからね。


「うん、いい感じだね」


 電気系の拷問も加減が中々シビアだ。電流電圧と通電箇所によっては行き過ぎちゃう場合がある。強すぎると心臓麻痺、呼吸中枢傷害からの窒息、循環器系の障害によるショック死。さらに強力にしちゃうと雷を落とすように物理的な破壊も可能になる。


「交流は300、直流は500以下に抑えたから大丈夫でしょっ」


 こういうのは電圧より電流の方が重要なの。電圧がいくら高くても電流を低く押さえれば問題ない。市販のもので死ぬことは勿論ないし、気絶することもない。僕のリョナ子棒(雷)は少しだけ強めに設定したつもりだけど悲鳴を上げる余裕があるならまだ改良の余地はありそうかな。


「さぁ、どんどん行くよ。普通なら電気系は反射的に離せるけど、ここまでがっちり固定されてたら全く逃げられないね」


 首、腕、胸、お腹、太ももとリョナ子棒を当てていく。スイッチを押すたび男が体が揺れた。


「そういや、君、露出もしてたんだって? どれ、さぞ立派なのだろう」


 罪人の(規制中)いく。


「あらら、寝てるのかな? 起こしてあげようか?」


 僕はすっかり縮こまっていたそこにも棒を当てるとスイッチを押した。罪人の体は固定されてるにもかかわらず力強く動いた。


「あ、口に入れるの忘れてたよ」


 うっかりしてた。


 〈お仕置き中〉

 

「・・・・・・ふう、もうちょっとやってもいいけど、これ調子に乗ると癖になるからもういいや」 


 僕はリョナ子棒を置く。罪人は目を細め、涙を止めどなく流した。これでようやく解放されたと思ってたのだろう。いつものことだけど、こういう切り替え時に勘違いする罪人の多いこと多いこと。

 棚から枝を切る長めのハサミを取り出した。それを見た罪人の顔が一気に青ざめる。


「さて、これで仕上げだ。もう少しで終わるから、そしたら今度こそ安心するといい」

「や、やめてください・・・・・・もう二度としない、頼みますから・・・・・・」


 結局最後まで起きなかった男の(規制中)


「うん、二度としてもらっては困るよ。そんな当たり前の事をなぜ今いうのだい?」


〈お仕置き中〉


「あふあしゃうささっぁぁぁあじゃじゃ」


 切り裂くような声が上がる。部屋中を駆け巡る苦痛の叫び。


「・・・・・・レベル4、執行完了」


 怖かったろう、悔しかっただろうね。罪人がじゃなくて被害女性達がね。

 君達のその怒りは、僕が変わりにぶつけておいた。執行内容を聞いて少しは気が晴れてくれると嬉しいよ。


「雨、帰るまでには止んでくれるといいのだけど」


 降り注ぐ雨のように、この世界には数え切れない犯罪者が降って湧いてくる。その雨はきっと止むことはないのだろう。


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