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 私が怒りをぶつけると、先生が物凄い勢いで首を振る。


「違う! 使ったのは普通の符だ。誓ってもいい! そもそも符の構造上、光ることしかできないんだよ。燃えるなんてありえないんだ!」


「タイラの言ってることは本当だよ。構造が単純だから私も分かる。燃えるような術式は組み込まれていないよ。複雑な術式になら簡単な細工を紛れ込ませることくらいならできるかもしれないけど、今使った符は構造が単純すぎて無理。一本線に別の線を紛れ込ませるなんて、できないでしょ?」


 先生の言葉に次いで、ナナちゃんが必死に説明してくる。


「……じゃあ、なんでこんな事に」


「不思議ですわね。そもそも爆発するなら、マオちゃんの方だと思うのですが」


 私の言葉を聞き、レイちゃんが同意する。


 けど、最後の方がおかしい。


「え、何で私?」


「それはもちろん、マオちゃんの霊力が私の霊力より高いからですわ」


 レイちゃんが自信満々にそう言うと、先生がハッとした顔になる。


「……もしかして、そういうことか?」


「何か気づいたの?」


 もしかして原因が分かったのだろうか。


 先生は符を一枚取ると、私に渡そうとしてきた。


「マオお嬢さん、悪いがこいつに霊気を通してくれ。俺の読みが正しければ、今みたいに強烈に光って爆発したように燃えるから気を付けろよ」


「防御の符? まあ、やってみるか。皆は下がってて」


 また光るというのなら、準備が必要だ。


 私は常時携帯している遮光グラスをかけた。


 そして、予備をレイちゃんに渡す。


 手持ちは二つだけだったので、先生とナナちゃんには大きく距離を取ってもらった後、目を閉じて瞼を手で塞ぐように言う。


「それじゃあ、いくよ。3、2、1、ほいっ!」


 カウントダウンをした後、符に霊力をそそぐ。


 私は、すぐさま符を投げ捨て、バックダッシュの要領で符を見ながら後退った。


 符は、霊力を通した瞬間わずかに光ったがそれだけ。


 完全に沈黙していた――。


 と、思った次の瞬間、ゴーグル越しの視界が真っ白になる。


 符が強烈な光を放っているようだ。


 数秒後、耳をつんざく大爆発が起きた。


 さっきの火柱も強烈だったが、今回はそれどころじゃない。


 破壊兵器として運用可能な領域に達している。


「ぎゃああああ、目が、目が」


 という悲鳴が聞こえ、後ろを振り向けば、先生が両眼を押さえて転げまわっていた。


 ……だから、目を閉じておけと言ったのに。


「ゴーグルをかけていたのにクラクラしますわ」


 パチパチと何度も瞬きするレイちゃん。


「なに今の、強烈すぎるんですけど……」


 ドン引きした表情で、後退るナナちゃん。


 リアクションが三者三様である。


 それにしても、私の性格や言動以外で気持ち悪がられたら、どうしようもないんですけど……。


 ちょっと符に霊気を流しただけなのに。


「まあ、これで分かったな」


 目を強く閉じ、腕組みした先生が納得顔で何度も頷く。


「え、何が?」


 結局よく分からなかった私は、つい聞き返してしまった。


「答え合わせも兼ねて、他の符にも霊気を通してみてくれ。燃えると思うが、爆発はしないと思う」


「まあ、もう慣れたからいいけど」


 先生に言われるままに試してみた結果、初めの二枚と同じ結果となった。


 つまり、防御以外の符は炎上。防御の符は大爆発という結果。


 その後、レイちゃんでも試してみたが、一番激しく燃えたのは初めの一点集中の符。


 それ以外は、一点集中より少し弱めで同程度に燃え上がった。


「つまり、こういうことだ」


 分かっただろ、と視線を送ってくる先生。


「どういうこと?」


 やっぱりよく分からなかった私は、再度聞き返した。


「今まで、それぞれの属性は一つの系統しか使えないと思われていた。だけど実際には使えたんだ。ただし、威力が低すぎて術として成立させることができなかった、という話だ。だが、お前さんたちは、霊力が高すぎるせいで、問題なくできてしまったってわけだな」


「ふうん?」


 なるほど、なんとなくは理解できたかもしれない。


 私が相槌を打っていると、先生が話を続ける。


「火属性で例えると、普通の霊術師が一点集中攻撃の術で100の力を出せるとすると、他の範囲攻撃、強化、防御、回復の術は0.001程度の力しか出せないってことだ。つまり、今のお前たちは霊力が高すぎるせいで、元々使える系統が10000の力があって、それ以外の系統が10の力を出せるみたいなイメージだ。そのせいで、元々使える系統に符が反応した場合、耐え切れずに大爆発したってことだ。わかったか?」


「それ以外の系統でも過剰反応していたように見えたけど?」


 結局全部燃えてたもんね。


「尋常じゃないくらい霊力が高いってことだろうな。さっきは分かりやすく10000と言ったが、それどころの数値じゃないってことだ。だから他の霊術師なら使用不可能と判断してしまうほど反応しない系統も光るのを通り越して、燃え上がったってわけだ。うん、自分で説明していておかしくなりそうだ」


「霊力が高すぎてキモいね」


 先生の説明に納得したナナちゃんが、腕組みしたまま何度も頷く。


「とうとうわたくしまでキモいカテゴリーに……」


 ナナちゃんのリアクションに、ちょっとショックを受けるレイちゃん。


「まあ、大は小を兼ねるって言うし、多いに越したことはないんじゃない?」


「そ、そうですわ! 要するに全ての系統の霊術が使えるということですよね?」


「うんうん、それって凄くない?」


 使えないより、使えた方がいいに決まってる。


「やりましたね、マオちゃん!」


「だね!」


 どうやら私たちは一属性でありながら、五系統全ての霊術が使えるみたいだ。


 私とレイちゃんは手を取り合って喜び合った。


「ま、まあ……そうだな。こいつは、凄い戦力だ。ナナ、こいつは稼げるぜ」


「それはキモくないね。素晴らしいことだね。二人とも親友だよ。私のことは、気軽にナナって呼んでね」


 先生の稼げるという一言に、フランクかつフレンドリーに激変するナナちゃん。


 顔をよく見れば、目の中が¥マークになっている気がした。


「分かりやすく豹変しおった」


 私たちのこと金づるか何かだと思っているのだろうか。


 と、ここで場を仕切りなおす様に、先生が咳払いをした。


「とにかく、二人とも霊力は高いが問題なしってことだ。そうと分かったら、練習に戻るぞ」


「「はい」」


 私とレイちゃんは姿勢を正して、返事を返した。


 よく考えたら、まだ得意系統を調べただけ。


 本格的な授業は、まだ何も受けていない。


「まず、二人には探査術を覚えてもらおうと思う。……というか、術の制御がある程度できるようになるまで、攻撃系の術は怖くて教えられん」


「その術は何系統になるの? 使える属性は? いや、全系統が使えるから大丈夫なのかな」


 よく考えたら五系統全て扱えるわけだから、全ての術を覚えられるんだよね。


 それはちょっと楽しくなってきた。


「探査術は属性や系統を気にしなくていい術だ。自分の属性に合うようにカスタマイズする必要はあるけどな」


「そんな術があるんだ」


 先生の説明を聞き、驚く。


 五系統全てで扱える術というのもあるのか。


 霊術というのも、中々奥が深そうである。




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