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 なんか、こっちが脅してるみたいになってるんだけど……。




 でも、これ以上の歩み寄りは不可能そうだ。


 これから時間はあるし、少しずつ仲良くなっていくしかないね。


 ここは切り替えていこう。


 それにしても、驚いたのは先生のことだ。


「でも、先生がナナちゃんの父親になってるなんて驚きました。失礼とは思いますけど、そういう印象じゃなかったので……」


 まさかナナちゃんと家族になっているなんて。


「ああ~……。まあ、普通の親子って感じじゃないかもな。養子縁組したのも、情がどうこうって話でもないし」


「そそ、ビジネスパートナーって感じよ」


 先生が、どこか照れくさそうに頬を掻いて説明していると、ナナちゃんがニヤリと笑って補足する。


「こいつはスゲーんだぜ。見てみろよ、これ。霊術師免許取得の最年少記録保持者だぜ」


 そう言って、先生が携帯端末の画像を見せてくれる。


 そこには、鼻に絆創膏を貼った少年と見間違えそうな見た目のナナちゃんが、満面の笑顔で免許を見せながらVサインをしていた。


 右隣には、ラーメン屋の店員っぽい女の人が一緒に映っている。


 スタッフTシャツには、豚骨ビッグバンと書かれていた。


 そして左隣には、鷹羽アキラと鷹羽雷蔵が映っていた。


 鷹羽アキラの顔は、どこか不機嫌そうだ。


 私はその画像を見て驚愕する。


 まさか二人がそんな時期から知り合いだったとは……。


 マンガでは鷹羽アキラとナナちゃんが出会うのは高校に入ってから。


 それが第一話であり、物語の始まりなのだ。


 その辺りについて詳しく聞きたいところだけど、マンガの話を口にすると、また異常者を見る目で見られてしまう。


 そのことに気づいた私は、慌てて口をつぐむ。


 そんな感じで私とレイちゃんが珍しそうに画像を見ていると、ナナちゃんが過敏な反応を示す。


「ちょ、止めてよ。恥ずかしい」


「どこがだ? 相棒の有能さを自慢して何が悪いんだ」


「もう……」


 画像を勝手に見せたせいで先生は責められていたが、理由が今一つ理解できていないようだった。


「へぇ、凄いですね」


 私は無難な相槌を打つにとどめた。


 残念だけど、これ以上の深掘りはやめておいた方がいいだろう。


 これから部活をやっていけば、また聞ける機会もやってくるだろうし、無理は禁物だ。


「そろそろ始めませんか?」


 それぞれの自己紹介が終わったところで、レイちゃんがソワソワし始める。


 早く仕事がしたくてしょうがないのだろう。


 そんなレイちゃんの言葉に、先生が姿勢を正して敬礼する。


「承知いたしました、お嬢様!」


「……ですから」


 先生の接し方に、レイちゃんが眉根を寄せる。


 このままだと仕事と指導に支障が出るので、私が間に入って先生の口調を強制。


 目を合わせなければ、いつもの調子で話せるまでになったところで指導を開始してもらった。


 とりあえず、初めは座学を交えながら実践風景を見学することとなった。


 私とレイちゃんは、霊術師の資格を持っているというのに、専門知識は皆無だ。


 なんせペーパーテストがなかったしね。


「ナナ、お前がやってみろ。人に教えるのは良い経験になるからな。不足部分があったら、俺が後で補足する」


「ん、分かった」


 先生の言葉にナナちゃんは素直に従い、私たちに妖怪退治について説明してくれた。


「妖怪は人口が多い地域の人気の少ない所、人目に付きにくい場所に出現しやすいの」


「あれ? 私たちは、人里離れた森で戦ったことがあるけど、あれは例外だったのかな」


 母に連れられて行った森は、人が立ち入った形跡がなかった。


 獣道を進んで妖怪退治したのも良い思い出である。


「あんたたち、なんでそんなところに行ってるのよ……」


「あはは……。まあ、色々とありまして……」


 呆れ顔のナナちゃんに、苦笑いで応える。


「いや、例外ではないな。ナナが言ったのは、都市部での出現箇所だ。こいつは東京でしか妖怪退治したことがないからな。田舎だと、森なんかで出るのはよくある話だ。ようするに、なんか不気味だなと感じる場所で出没すると覚えておけばいい」


 と、先生が補足を入れてくれる。


「田舎のことは分からないけど、この辺のことなら詳しいから任せて。小さいころからやってるから、庭みたいなもんよ」


 ナナちゃんが利き腕を叩いてアピールする。


 なるほど、実戦経験豊富ってわけね。あれ、でも……。


「小さいころから? 霊術師の資格は?」


 確かに、霊術師の資格を最年少で取ったとは聞いた。


 だけど、今の言い回しはもっと早い段階のような印象を受けた。


 一体いくつから妖怪退治をやっていたのだろう。


「そこはまあ! 色々あるといいますか! はい……」


 初めは勢いでごまかそうとしたが無理と悟り、小声になっていくナナちゃん。


 先生の方を見れば、顔を逸らして口笛を吹き始める。


 ビジネスパートナーみたいな感じって言ってたもんね……。


「その辺りのことは、どうでもいいですわ。それより、早く行きましょう」


 と、話が逸れたことにじれったさを感じたレイちゃんが先を促す。


「分かってるじゃん。こっちだよ!」


 ナナちゃんは、これで誤魔化せると思ったのか、逃げるような勢いで案内を始めた。


 そして連れてこられたのは、人気の少ない路地裏。


 奥まったところにある広めの空間には、素行の悪そうな青年たちがしゃがみ込んでいた。


 どう見ても、完全に不良のたまり場である。


 こちらの接近に気づくと、ノータイムで睨んでくる。


 しかし、ナナちゃんと目が合うと、バネ仕掛けの人形の様に全員が一気に立ち上がった。


「あ、ナナさん。チッス」


 そのまま直角に腰を折って、頭を下げる面々。


 ナナちゃんはそんな反応に一切動じず、慣れた様子で手を振りながら話しかけた。


「おう。最近はどう? 妖怪が出てきたりしてない?」


「そっすね、今のところは見てないっす。でも、そろそろっすよね?」


「うん。前に出た日から逆算すると、いつ出てもおかしくないね。見かけたら連絡して。それじゃあ」


「うっす。お疲れっす」


 軽く会話を交わし、その場を後にする。


 て、手慣れている……。


「え……、なんで溜まり場の不良っぽい人とツーカーの仲なの」


 と、堪らず聞いてしまう。


「まあ、よく顔を出すからね。助けてあげたりしてたら、あんな感じよ」


 しれっと、そんな回答が返ってきた。


 妖怪は人気のないところで出る。人気のない所には、物騒な人がいる。


 仕事で出入りしているうちに仲良くなり、強さが認められて上下関係が出来た、と。


 そんな感じだろうか。


 つまり、ナナちゃんは、疑似的にこの辺りの不良グループのリーダー的存在になってしまっているということではないのだろうか……。


 うん、あまり深く考えないでおこう。




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