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 ――三日後、理事長からの鶴の一声により、第二フォーゲート部の創部許可が下りた。


 更に、元からあったフォーゲート部を第一フォーゲート部とし、大会参加人数の上限を八名から四名に減らした。


 それに加えて、第二フォーゲート部に大会参加許可を与え、参加上限人数を四名とした。


 四名とは団体戦の参加が認められる最小単位である。


 毎年行われるフォーゲートの大会では、各校からの参加人数に上限が設定されている。


 が、部の参加上限数は決まっていない。


 当然だ、そんなルール設けるような状態になることなんて普通は想定しない。


 その穴を突き、元々のフォーゲート部から大会参加人数を半分減らして、第二フォーゲート部も大会参加可能という形にしてしまったのだ。


 とはいえ、わざわざ大会運営を混乱に招くようなことは避けるべき。


 書面上では峰霊中学校フォーゲート部とひとくくりにされることだろう。


 理事長の横暴な判断に、一部の教師から反発が出た。


 しかし、大半の教師は静観の態度をとった。逆に賛成に回った教師も少なくない。


 なぜなら、この学校が私立だからだ。


 オーナーでもある取締役に反意を示して良いことなんてない。


 たかだか部活の些細な変更点で、減点を食らうのは避けた方が無難と考えた者が多かったのだ。


 特に、校長や教頭、学年主任などの上長的立場の教師たちは賛成の上に大喜び。


 それは詳細を聞かされていたためだ。


 反発する教師たちをなだめるため、校長から細かな説明がなされた。


 曰く、第二部は特殊。


 非常に限定的な部活動となるため、混乱は最小限で収まる。


 第二部の活動は長くて一年限定。早ければ、大会終了と同時に廃部となる。


 そして、それに見合わないほどのメリットがあると、力説した。


 それは多額の寄付。現ナマである。


 反発していた教師たちは、校長からその金額を聞き、沈黙した。


 これにより、長らく放置していた施設の修理、改修が可能となる。


 中には、非常に重要な設備だが修繕費が高すぎて放置されていたものもあり、上の者であればあるほど、断り切れない提案だった。


 更に、校長は寄付金の使用用途が限定されておらず、人件費に充てても問題ないと理事長が寄付者から言質を取っている旨を教師陣に伝えた。


 つまり給料アップの報せだ。


 次いで、分割して継続的に支払われると、寄付が尽きて元の給料に戻った際にモチベーションの低下を招く恐れがあるため、追加ボーナスという形をとる可能性が濃厚だという説明もなされた。


 確実な決定事項として校長からもたらされた情報は、会議室を歓喜の渦に巻き込んだ。


 というのが、この三日間に起きたことを人づてに聞き、私がまとめた内容となる。


 ――どう見ても、ガチの買収である。


 霊術師に、どういう価値観を持った人たちが多いのかは、知っているつもりだ。


 だから、入試前に学校を選ぶ際にも、事前に調査を綿密に行った。


 その調査結果をもとに、ご近所で金に緩いところを選択したのだ。


 結果、大成功といった感じである。


「いやあ、出来ちゃったね」


「ええ。お父様に頼る結果となってしまったのが悔やまれますわ」


「そこは結果で返していくしかないね」


「そうですわね。わたくし、頑張りますわ!」


「その調子その調子。あとは部員を揃えないとね」


 超特例で作られた部のため、五人以上いないと部として認められないというルールも撤廃されている。最悪、二人だけでも部として認められるように話をつけてある。


 部員を集められなかった時のことを考えて、そういう風にしてもらった。


 一応、理事長の力でフォーゲート部から強引に強い部員を引っ張ってくることも出来た。


 が、それはしなかった。


 それでは、人数が揃っても部内で強烈な反発を招くからだ。


 けど、このままでは団体戦に出場できない。


 私たちの狙いは団体戦優勝だ。個人戦で優勝しても、論功行賞が適用されるのは一人。


 だけど、団体戦であれば、チーム全員が対象となる。


 どちらも出場できた方が優勝できる可能性が高くなるので、両方参加するつもりではある。


 だけど本命はあくまで団体戦なのだ。


 というわけで最低でもあと二人、部員が欲しい。


 まあ、ダメだった場合はレイちゃんに個人戦で優勝してもらい、私は不法侵入でもいい。


 誰にも気付かれずに、目的達成する自信ならある。でも、なるべくその手は使いたくない。


 できれば、団体戦参加可能な部員が四人いる状態に持っていきたいんだよね。


「最悪、アルバイトという形をとれば、人数は揃えられると思いますが……」


「優勝を目指すとなると、それなりの実力者が欲しいよね」


 お金を払えば、派閥に執着しない人間を入部させるのは可能と踏んでいる。


 だけど、それは最終手段。できれば、実力者を探し出して勧誘したい。


 フォーゲートは霊気を使うので、競技の実力は霊力の高さと密接にかかわりあう。


 つまり、出来るだけ霊力が高い人を勧誘したいのだ。


「ですわね。マオちゃん、誰か当てはありませんの?」


「一人、いないこともないけど……」


 そう言って、思い描いた人物を見る。


 その人物は、教室の主人公席で窓から外を眺めていた。


 私の視線の先を見て、レイちゃんが納得顔で頷いた。


「なるほど、兎与田七海さんですか。あの方は五属性。しかも霊術師特有の偏見がない」


「だから、話しやすいと思うんだよね。……本来なら」


「マオちゃんが、変なことを言うから……」


「反省してます。だけど、そのあとに盛ったのはレイちゃんだからね?」


「承知していますわ。ですが、悔いはありませんの」


 清々しい笑顔で胸を張るレイちゃん。


 ……結構滅茶苦茶言ってくれたんですけど?


「そこは反省しなさい」


 私は、レイちゃんの両頬を軽く引っ張った。


「いひゃい……。マオひゃん、行っちゃいますわよ」


 私たちが話していると、兎与田七海が教室から出て行ってしまう。


 多分、下校するのだろう。


 私は慌てて、呼び止めようとした。


 だけど、私より先に彼女を呼び止めた子がいた。


 なんとなく見覚えがある女の子だ。


 私が相手の子を思い出そうとしている間に、二人は追いかけっこをするように走って行ってしまう。


 あっという間の出来事だった。


「なるべく早く勧誘したいし、追いかけようか」


「そうですわね」


 私たちは全速力で追跡。


 途中で追い越し、先回りに成功した。


 私たちが急に目の前に現れて道をふさいだため、驚いた兎与田七海と女の子が急停止する。


 私はその隙を逃さず、話しかけた。


「ごめん、兎与田さん。ちょっとお願いがあるんだけど」


「なに?」


 と、ぶっきらぼうに聞き返してくる兎与田七海。


 ふう、何とか避けられずに済んだ。それに、ちゃんと返事を返してくれたよ。


 最近はこういう感じで、ある程度は聞く耳を持ってくれるようになった。


 きっと、合格発表の日から今日までで、彼女の中で私たちの評価が多少変化したのだろう。


 アレな発言は最初だけだったし、合格で気分が高揚して変になったと思ってくれていると、ありがたいんだけどね。


 一応、兎与田七海を勧誘するかどうかについては葛藤があった。


 こちらからマンガのヒロインと積極的にかかわりを持つことになるからね……。


 でもまあ、彼女の今の自分たちに対する評価を考えると、これ以上下がることはないと思った。


 それなら、レイちゃんのためになるなら誘ってみてもいいんじゃないかと心の天秤が傾いた次第。


 それに部活を一緒にすれば、私たちの印象も良い方向に傾くかもしれないという希望的観測もある。


 私のことはどうでもいいけど、レイちゃんが良い子だってことは是非知ってほしい。


 だからダメ元でやってみることにしたのだ。


 私たちが会話の態勢に入った瞬間を狙って、追いかけっこをしていた女の子が、兎与田七海を背後から抱きしめた。


 本当は羽交い絞めにしたかったのかもしれないけど、身長が足りていない。


「捕まえたのじゃ! 今日こそ勝負!」


「これから帰るから。あと会話中だから」


 と、むげに断る兎与田七海。


 そのそっけない対応に頬を膨らませて、ポカポカと攻撃する女の子。


 その顔をじっと見て、やっと誰だったかを思い出す。




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