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 ◆九白真緒



 マンガの主人公である、因幡七海と思しき人物と邂逅を果たしてから数日。


 今日は、入学式だ。


 登校するとグラウンドに集められ、クラス分けが発表された。


 そこでなんと、レイちゃんと同じクラスということが判明。


 これはありがたい。


 更には、兎与田七海とも同じクラスだった。


 苗字が違ったり経歴が違ったりしたが、あれは間違いなく、マンガでいうところの因幡七海。


 彼女が放つ雰囲気。端的に言えば、主人公オーラを発していたので間違えようがない。


 何より、髪型が変わっても顔が変わっていないのだから、疑う余地もない。


 随分マンガと違うが、一体彼女に何があったのだろう。


 色々聞きたいが、今の関係性では無理だ。


 ――あの時は失敗だった……。


 あまりにマンガと違うことが多かったため、混乱してしまった。


 私と同じ転生者ではないかと思ってしまったのがボタンの掛け違いの始まり。


 もし同じ転生者なら、色々と交渉できる。


 うまくいけば、レイちゃんの死亡イベント回避の一助になる、と浮かれてしまったのだ。


 興奮のあまり、グイグイ行き過ぎてしまった。


 今考えると、悪手以外の何物でもない。


 結果、ドン引きされてしまった。


 どうやら私は、レイちゃんの事になると視野が狭くなる傾向にあるようだ。


 と、自覚は出来たが矯正できそうにない……。


 かなり誤解されてしまったが、上手くやっていけるだろうか……。


 そんな事を考えながら、レイちゃんとともにクラスごとに指定された場所へ。


 その後、先導する先生の後に続き、式のある講堂へ移動となった。


 霊術師が通う特別な学校とはいえ、入学式の内容は至って普通。


 つまり、長話のオンパレードである。


 様々な長話に耐え、締めに校長先生のありがたい話を聞いた後、新入生代表の挨拶になった。


 壇上に上がった子は低身長の女の子。


 立ち居振る舞いが堂に入っており、余裕が感じられる。


 なんというか、人前に立つことに慣れている雰囲気がする。


 今回の入学式で初めて見る子だ。


 正直、新入生代表にはレイちゃんか、兎与田七海がなると思っていた。


 こういった代表には、成績優秀者が選ばれるのがセオリー。


 ならば、家柄重視ならレイちゃんで、成績重視なら兎与田七海だと思ったんだけどな。


 残念ながら、私の予想は外れてしまった。


 新入生代表の挨拶で入学式は終了。その後、教室へ移動となった。


 席順は、出席番号順ではなく、ランダム。


 隣の席はレイちゃんだった。これはありがたいね。


 ちなみに、兎与田七海の席は窓際の一番後ろ。いわゆる主人公席だ。


 目が合ったら、そらされた……。


 彼女が、因幡七海なのは間違いない。苗字が違うのはなぜなんだろう。


 兎与田姓は前の世界でいうところの豊田姓。かなりポピュラーな苗字である。


 私の知り合いにも、酔っ払いの兎与田先生とかいるし。


 私のように転生して前世の知識があるわけでもなさそうだし、謎である。


 合格発表の時の誤解が解けないままに今に至っているので、私の印象は良くない。


 今の私に対する心象で強引に誤解を解きに行っても、関係が悪化する未来しか見えない。


 ましてや、周辺の調査なんかをして、バレようものならストーカー認定されてしまうに違いない。


 ここは、無理に抗おうとせず、時間をかけて解決していこう。


 まあ、こちとら悪役令嬢の取り巻き。


 主人公に関わらないのは、トラブルを避けるためにも良いこと。


 そう割り切っていこう……。


 そのうち誤解を解くチャンスもやってくるはず。


 やってくるといいなぁ……。


 などと、自分で自分を慰めていると、視界の端で異変を捉えた。


 ガラの悪そうな雰囲気の男子数人が、兎与田七海を取り囲んだのだ。


「おい、お前。実技試験で高記録を叩き出して、注目を集めたらしいな」


 兎与田七海は男子たちの偉そうな態度に辟易したのか、返事もせずに睨み返す。


「ふん。自称五属性だそうだし、俺たちの派閥に所属させてやる。放課後に顔を貸せ」


 派閥に所属させてやる、と言っているけど何のことだろう。


 受験勉強はしたけど、学校の内情までは把握してないんだよね。


「あ? 貸すわけないだろ」


 男子たちの勧誘に、兎与田七海は威圧交じりの視線で睨み返し、ドスの効いた声で断った。


 ええ!? 何、あのヤンキーみたいなメンチ切り。


 ヒロインがやる表情や行動じゃないんだけど……。


「……っ! てめえ、逆らうのか? こっちは十家、衣津葉家系列の坂本派だぞ! 誰に向かって口を利いているのか分かっているのか!」


「別にお前がそこの頭ってわけじゃねえだろうが。そもそも、派閥の話をするなら、こっちは十家、鷹羽家の直系だ。お前のとこみたいな、傍系じゃねえんだよ」


「は? 鷹羽家だって。なんでそんな所と……」


「五属性なんだから、十家のどこかと繋がってるのは当たり前だろうが。ちょっとは調べてから来いよな。信じられないなら、ここに爺さんでも呼ぶか?」


「あ? 爺って誰のことだよ」


「決まってるだろ。当主の鷹羽雷蔵だよ」


「はっ、嘘だな。お前みたいなガキが、鷹羽雷蔵と接点があるはずがねえ」


 男子の一人がそう言った瞬間、兎与田七海が携帯端末を取り出し、どこかに連絡を取り始めた。


「おう、悪いんだけどさ、爺さんと話したい奴がいるから替わるわ」


 通話相手と早々に会話を切り上げ、「ほれ」と携帯端末を投げる兎与田七海。


 男子が「え」呆けた表情で端末を両手で受け取った。


 そして、恐る恐ると言った体で、通話状態の端末に出る。


「あのぅ、もしもし? はい……。はい。いえ、そういうわけでは! はい。はい。すみません。はい。はい。すみませんでした! はい、失礼します!」


 端末を持った男子は、通話相手に何度も謝罪しながら頭を下げていた。


 ひたすら謝り続け、相手の許可を得て通話を切る。


 その時には、疲労困憊と言った様子で深い溜息を吐く。


 一連の様子を見て、通話を終えたと判断した兎与田七海が声をかけた。


「分かったか? 面倒だから、これからは絡んでくるなよ」


「はい……」


 兎与田七海に釘を刺され、完全にしなしなになってしまう男子生徒。


 そして、それを気遣う仲間たち。


 初めの勢いを完全に失い、ガラの悪い皆さんは意気消沈した様子で席に戻っていった。


 その一部始終を目撃し、クラス内がざわつく。


 どうやら、兎与田七海が発した人物の名前が相当大物だったみたいだ。


 十家とか言っていたし、かなりの影響力を持つ人なのだろう。


 気になったのは、兎与田七海が所属している鷹羽派という派閥。


 鷹羽というのは、マンガ、きらめき☆スピリットスターのヒーローの苗字と同じなんだよね。


 ヒーローの名前は、鷹羽アキラ。さっき言ってた鷹羽雷蔵とは違うけど、関係がありそうだ。


 まあ、ここまで情報が出そろえば、後で簡単に調べられる。


 十家の鷹羽派については、知っておいた方がよさそうだ。


 それにしても、兎与田七海が全然ヒロインらしくない。


 可愛らしさが欠片もないよ。


 もし、今のがマンガのワンシーンなら、怯えながらも持ち前の正義感と勇気を振り絞って正論で反論するも、ごり押しで返されて状況が悪くなり、ヒーローが仲裁に入るってパターンになっていたと思う。


 しかし実際は、一切怯まないわ。メンチを切るわ。権力を使うわ。


 キュートとは、無縁の行動の数々。


 一体どうしてこんなことに……。


「おい、お前が一属性で合格した奴か?」


 などと考え事をしていると、これまたガラの悪そうな別の男子が、私に話しかけてきた。




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