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「それは……、高校生であれば、専用の試験を受ければいいようです」
「優秀と認められるための試験ということは、難しいんでしょうね」
「ええ、そのようです」
私の問いかけに、後藤さんが頷く。
「わたくしたちは四月から中学生ですが、その試験を受けることはできるのでしょうか」
と、レイちゃんが質問する。
高校生であれば、という注釈がついたことが気になったのだろう。
「本来であれば無理です。ですが、可能性がある方法がひとつだけ」
「それは?」
と、レイちゃんが先を促す。
「フォーゲートの中学生部門の全国大会で優勝することです。優勝すると、論功行賞として、随伴免除証がもらえます。本来、霊術師の資格を得ても、未成年者は成人した霊術師と共に行動することが義務付けられています。事故を防ぐため、個人裁量を最小限にし、随伴を主として活動するようです。ですが随伴免除証を手にすれば、未成年でも単独活動が可能となります。この状態であれば、高校生と同等の扱いを受けられると思われます」
「分かりました。あいにく、フォーゲートに関しては素人ですわ。マオちゃんは何か知っていますか?」
「プロの試合をテレビで見たことがあるくらいだよ。中学生の大会のことは知らないなぁ。進学先で部活を見学してみるしかないね」
という私の言葉を聞き、後藤さんが首を振る。
「残念ながら、お二人が進学される煌爛学園中等部にはフォーゲート部は存在しません」
「なら、部を作るところからになるのか。部員が集まるかどうかが未知数だね」
まずは霊術が使える子を探すところから始めないといけないから、かなり難しそうだ。
そんなことを考えていたら、またもや後藤さんが首を振る。
「真緒様、その方法では大会には参加できません」
「え、そうなんですか?」
「はい。フォーゲートの大会に参加できる学校はあらかじめ決まっています。東京都だと、四校です。すべて私立なので、入学には受験が必要ですね」
「ちなみに、どの学校のフォーゲート部が強いのでしょう?」
ここまでの会話を聞いて、レイちゃんが尋ねた。
そんなことを聞くってことは、煌爛学園に入学するつもりはないのだろうか。
「もしかして、進学先を変えるの?」
「当然ですわ」
私の質問に、レイちゃんは即答。
なるほど。とにかく北海道に行きたいわけね。
「今調べた感じですと、毎年順位が入れ替わっているので、実力は拮抗しているようです。また、現在在学中、これから入学予定の実力者までは把握できないので、確度の高い予測を立てるのは難しいと思われます」
今の段階では、どの学校が強いかは不明。
上手いプレイヤーが、どの程度在籍しているかも不明、と。
「あんまり上手い人が沢山いる学校に行ってしまっても、レギュラーに選ばれない可能性も出てくるよね」
「そうですわね……。遠い学校へ行って、通学距離で時間を消耗するのも惜しいですし……」
私たちは、どういう基準で学校を決めるかで悩み始めた。
しばらく各々で黙考していたが、レイちゃんが声を上げた。
「決めました。一番近い学校に、わたくしたちの進学先を変更しましょう」
「かしこまりました」
「となると、煌爛学園とは、さよならだね」
マンガでは煌爛学園の中等部に進学し、そこからエスカレーター形式で高等部へ行っていた。
けど、ここで大きく進路が変わった。ここから先はどうなるか、全く予想がつかない。
でも、レイちゃんが自分で決めたことだし、応援したい。
「やむをえませんわ」
「うん、心機一転頑張ろうか」
急な展開に驚いたが、これは案外ラッキーかもしれない。
学校を変えれば、マンガの登場人物たちと会わずに済む。
うん、これはこれでいいんじゃないだろうか。
「一番近いのは峰霊中学ですね。霊術師を育てることを目的としている学校となるため、普通の学科試験とは別に、特殊な試験を受ける必要があるようです。入学試験の時期は……」
「特殊な試験というのは?」
霊術を扱う学校だけに存在する試験の内容が気になり、レイちゃんが後藤さんの言葉をさえぎって尋ねる。
「霊気を使う試験の様です。霊力の高さ、霊気を扱う能力、それに加えて身体能力を測るテスト、とのことです」
「成人の儀を済ませた私たちなら問題なさそうだね」
「ええ、楽勝ですわ」
「つまり、私たちのこれからの道筋としては、峰霊中学校を受験して合格し、そこでフォーゲート部に入部、大会に出場して優勝するってことね」
と、私が確認すると、顎に手を添えたレイちゃんが頷く。
「試験は問題なさそうですわね。そうなるとフォーゲートの技量を上げることが必要になってきますわね」
「そうだね。上手くないとレギュラーになれないし、何より優勝できないからね」
普通に考えれば、三年生までにレギュラーを取って優勝すればいい、という感じだろうけど……。
レイちゃんは絶対、一年でレギュラー入りし、大会初出場で優勝するつもりでいるはず。
そもそも、峰霊中学に入学するのも、フォーゲート部に入るのも、そこでレギュラーを取って優勝を狙うのも、本来の目的じゃない。
本当の目的は北海道で妖怪討伐することだ。
となると、少しでも早くそれらを終わらせようと考えているはずなのだ。
そうなってくると、一番の問題はフォーゲートだ。
私も、レイちゃんも、未経験。完全な素人だ。
今から、少しでも練習して上手くなっておく必要がある。
やるべきことを理解した私とレイちゃんは、視線を合わせると頷き合った。
「後藤、すぐにフォーゲートの講師の手配を」
「かしこまりました」
後藤さんは軽く黙礼すると、素早く準備に取り掛かった。




