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そんなことがあった数日後。
「で、なんで俺は呼び出されたんだ?」
我が家に兎与田先生をお呼びした。
理由はいくつかあるんだよね。
「いやあ、ちょっと確認したいことがありまして」
「なんだよ、こええな。また、雲上院の家に行くとかじゃねえだろうな」
「いや、これなんですけど。先生は出来ます?」
と、圧縮した霊気の塊を霊装にくっつけて見せる。
いわゆる、私のオリジナル霊核拡張法である。
「ん、霊装を二つ出してくっつけただけじゃないのか? いや、待て、そんなことできるか……」
「出来るんですか? まあ、今やったのは全く違うことですけど」
どうやら二つの霊装をくっつけたと勘違いしたようだ。
ということは、知識自体がなさそうな気配だ。
「分からん。もったいつけずに教えろよ」
「霊気を限界まで圧縮したものを霊装にくっつけたんですよ。この状態で霊核に戻すと、その分霊核が大きくなります」
じれた先生に、再度同じ事をして見せながら説明する。
何でタイムラグなしで同じことが出来るかって?
霊核の圧縮が極まりすぎて、発生する霊気が霊核と同等の濃度だからです、はい。
「はあ? んなわけないだろ。そもそも圧縮してもそんな状態にならないぞ」
「え、出来ますけど。先生は出来ないんですか?」
「出来るわけねえだろ。ある程度圧縮することは可能だが、そんなカチカチになるまでは無理だ」
「なんで? ある程度まで出来るなら、そのまま固めればいいだけなんじゃないです?」
意見がかみ合わない。
私は割と簡単に出来た。まあ、それなりには頑張ったけど。
だけどそれは力加減や放出量の話で、特段工夫が必要だったわけではない。
ストレートに試して、すぐ成功したもんね。
いや、無理だろ、とぼやいた先生は自分でも圧縮を試しだす。が、うまくいかない。
その結果を元に、黙考して自分の考えをまとめた後、どうして圧縮できないかを説明してくれた。
「多分、属性が混ざり合ってるからだな。例えば、二属性の霊気は、二種類の属性の霊気が混じり合ってる。それを圧縮していくと、それぞれの属性が反発しあって段々難しくなっていくんだ。属性数が増えたら難易度が上がるってワケじゃないが、一定ライン以上はどうやっても圧縮できない感じだな」
「つまり、これは一属性だからできたってことですか?」
「……そうなるな。俺も初めて見たぜ。というか、誰もやったことないんじゃないか?」
「え……、そんなに?」
そこまでレアな体験だったの?
それほど難易度が高かったわけじゃないので、驚きだ。
「お前が思っている以上に、一属性の人間は希少だぞ。霊術師の家系では出てこない。高い霊薬を飲んでも、極々稀に出るだけ。しかも一属性だったら待遇が悪い。更に成長も絶望的だ。そんな中で、わざわざ霊術磨こうって奴もいないだろ? 普通なら別のことに時間使うよな」
「そう言われてみれば確かに……」
一属性の人間は希少。その中で霊術を学ぼうとする人間は、ほぼゼロ。
なぜなら、将来性が無いから。
仕事にすれば、虐げられる未来が待っているから。
「というか、お前、その方法で霊核を大きくしたのか?」
「そうですよ。霊装もこんな感じで出せるくらいにはなったので、霊術を教わろうかと思って呼んだわけです」
頷いた私は、指揮棒サイズの霊装を出して見せる。
その昔、霊核が育ったら、また授業してやるって言ってたじゃん?
「そういう事か。だが、霊術を教える前に、秘密保持契約を結ぶぞ。その技術、誰にも洩らすんじゃねえぞ。そうしないと、大変なことになる。俺以外には誰にも教えていないだろうな?」
「あ、えーっと……」
ジロリと探るような視線を受け、つい顔を逸らしてしまう。
レイちゃんとレイちゃんのお父さんには教えちゃったんだよな。
なんせ、一属性だったし。
「教えた奴全員と契約しろ。ご両親には説明しておくから、ちゃんと用意してもらえ」
「分かりました。それほど重要なことですかね?」
「お前が見つけた方法は多分、世界初の新発見になる。だが、多属性の人間には使えない方法だ。……バレると、どんな嫌がらせを受けるかわからんな」
「なんとも心の狭い話ですね」
「霊術師は属性の数で上下関係が決まる部分がある。それは属性が多いと最初期の霊核のサイズも大きいからだ。元のサイズが大きければ、それだけ育ちもいい。で、霊核が大きいと霊気の総量が多くなる。つまりは、属性数なんてどうでもよくて、霊気の量が多いか少ないかがポイントなんだ。だから、お前が独自方法で霊核を大きくして、霊気の量を増やすと、困ってくる奴が一杯出てくるってことなんだな」
「理解しました」
一部の人にとって、五属性以外の人が五属性以上の霊気を持っちゃうと、困ると。
まいったなぁ、調子に乗って霊核をドンドン大きくしちゃったよ。
まあ、いっか。どれだけ大きくしても、そう簡単にはバレないだろうし。
大は小を兼ねるって言うしね。
「今お前、どうでもいいか、とか思ってないか?」
「思ってないですよ」
私は顔を逸らしながら即答した。く、なぜバレた。
「ほんとかぁ? まあ、相手の霊気の総量や霊核の大きさを詳細に知る方法なんてないから、バレにくいとは思うけどな」
「それなら、これからも遠慮なく大きくしていけますね」
厄介なのは分かった。だが、霊気圧縮を止めるとは言ってない。
こんな面白いこと、止めてたまるか。私は限界を目指すのだ。
誰も到達したことのない高みへ。私は頂点になる! なんちゃって。
「……お前なぁ、何を妄想してるか知らんがニヤニヤしすぎだぞ? しかし、羨ましい話だな。俺にも出来ねえかな……」
と、うらやむ先生のアドバイスを受け、秘匿契約を結ぶことにした。
先生自身からこんな契約を切り出してくるなんて、律儀な話だ。
誰かに売って一儲けしようと思ったらできそうなのに。
と、思ったら「そんなことしたら、どうでもいいところで目を付けられるんだよ」と、愚痴っぽく返された。
その後、レイちゃんとパパさんにも同じ契約を結んでもらった。
これで、簡単に秘密が漏洩する事はないだろう。
まあ、バレたとしても利用方法がない知識ではあるんだけどね。
契約が一段落したことを報告したついでに、霊術のレクチャーを先生から受ける。
そっちの方は簡単に終了した。
修練は、なるべく霊気の消費を抑えたいので、限界まで省エネで挑んだ。
霊気をケチりすぎて全ての効果が微妙に終わったけど、技術は習得できた。
先生からは勘違いされ、「気を落とすな。才能は絶望的だが、練習すれば何とかなる」と慰められてしまったよ。
いや、霊気を節約しただけだから。
でも、わざわざ説明するのが面倒だったので、そのままにしておく。
もう、先生の前で霊術を使うこともないだろうし、別にいいかなと思ったのだ。
今の私は霊術より霊気圧縮。どれだけ霊核を大きくするかにしか興味がない。
これで、霊核拡張法も周囲に広まる心配はなくなったし、憂い無く集中できるというもの。
霊術の修行も終わったし、これからは無駄なことに霊気を使わず、全てを霊核拡張に注ぎ込める。
よーし、今日も目一杯圧縮するぞ!
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