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 しかし、レイちゃんは子供の体格を活かし、人込みの間をすり抜けて行ってしまった。




 追跡を途中で諦め、立ち止まってしまう昭一郎さん。


 空気で察した黒服さんたちが後を継ぎ、レイちゃんの後を追った。


 むぅ、なかなか難しい問題だねぇ。


 昭一郎さんは私のことを思い出し、こちらへ近寄ってきた。


「すまない。見苦しい所を見せてしまったね」


「いえ」


「わざわざアレの関係者が居ない遠くの場所まで来たというのに……。向こうからやって来るとは……」


 昭一郎さんも相当参っているようだ。


「大丈夫ですか?」


「もっと、入念に調べておくべきだったか……。いや、今はそんなことを考えている場合ではないか」


 黒服さんから差し出された水をあおり、表情が引き締まる昭一郎さん。


 どうやら気持ちが切り替わったようだ。


「レイちゃんを捜しましょう!」


 今は、それが一番大事だ。


「そうだね。すまないが手伝ってくれ」


「はい!」


 頷きあった私と昭一郎さんは、二手に分かれてレイちゃんの捜索に向かった。


 ――昭一郎さんと別れてしばらく捜索していると、あっさりレイちゃんを発見した。


 なぜか、知らない子供と三人でいる。ちょっと離れているので、詳細が分からない。


 目を凝らして様子を窺うと、男子の二人組に絡まれているように見えた。


 レイちゃんはさっきの出来事が尾を引き、完全に参ってしまっているようだ。


 何か言われているようだが、反応が薄く、動かない。


 私は会話内容を聞き漏らさないため、足音を消して近づいて行った。


「お前、霊術が使えるって、嘘を言って回っているらしいな」


「霊術師に憧れるのは分かるが、すぐバレる嘘をついても、自分が恥ずかしい思いをするだけだぞ」


「嘘ではありません!」


 どうやら、霊術が使えるかどうかで揉めているようだ。


「ああ? 雲上院の家は代々霊術師だったのか? 初耳だな」


「だよな。すぐバレる嘘をつくなよな」


「霊術は使えます。霊薬を飲んで使えるようになったのですわ!」


 二人組の言葉に対し、レイちゃんは反論を続ける。


「おいおい、冗談が過ぎるだろ。よりにもよって霊薬かよ。あんな物、飲み続けられるわけないだろうが」


「絶対に無理だ。失敗した奴なら知ってるけど、成功した奴なんて聞いた事がないよな」


「本当です。ちゃんと使えるんです!」


 レイちゃんは必死に事実だと訴えていた。


 しかし、二人組はその言葉を一切信じようとせず、嗜虐的な表情を浮かべる。


「なら証明して見せろよ」


「だよな。霊装でも出して見せろや」


「こ、これですわ!」


 レイちゃんは指にはめた霊装を掲げて見せていた。


 途端、二人が笑い出す。


「アハハハハ! なんだそりゃ! あり得ねえくらい小っちぇえ!」


「一体、属性数はいくつなんだよ」


「ひとつですわ……」


 レイちゃんは顔を伏せ、呟くようにして答えていた。


「一属性で、霊術が使えるなんて言うんじゃねえ!」


「一属性なんて、数に入らねえんだよ! お前が雲上院でも通用しねえんだよ!」


「ちゃんと、使えていますわ!」


 二人組の威圧的な物言いにも、しっかりと言い返す。


 そんな様子を見て、私の足取りは自然と早くなっていく。


「なら、お披露目会に出ろよ!」


「そうだそうだ。霊術が使える奴は、みんな出場しているぜ? お前も出るよな」


「……そ、それは」


 とうとう黙り込んでしまうレイちゃん。


 なんと無体なことを。許さんぞ。


「何やってるの!」


 接近した私は、素早く間に入って叫ぶ。


 すると――


「なんだ、お前……って、お前は!」


「ああ!」


 二人組が私の顔を見て叫んだ。


 ん……、この顔どこかで見たような?


 ああ、思い出した。学校で問題を起こして、転校という名の退学になった二人組だわ。


「お前には関係ないだろ! 向こうへ行ってろ」


「そうだそうだ! これは霊術が使える奴にだけ関係がある話だ!」


「なら問題ないよ。私も霊術が使えるから。レイちゃんと同じで、霊薬を飲んで使えるようになったの」


 二人組は私には関係ないと言って遠ざけようとしたが、そんな言葉に従う気はさらさらない。


「そ、そうかよ。まあいい。とにかく、こいつにはお披露目会に出てもらう」


「あ……、ああ。霊術が使える奴は、みんな出ているからな!」


 二人は強引に話を進めようとする。


 どうしてもレイちゃんをお披露目会に出したいみたいだ。


「彼女は、最近霊核と繋がったばかりよ。そんな人間がお披露目会に出るの?」


「そ、そうだ……!」


「で、出るぜ!」


 私の問いに、二人組が言いよどんだ。


 ここで更に追い打ちをかける。


「いえ、違うわ。私はパーティーに参加していたけど、参加者は皆、中学生くらいだったわ。霊術師の家系なら、もっと小さい頃から霊核と繋がっているはずよ。それなのに、お披露目会に参加する者の平均年齢は十代前半。きっと、霊核がある程度育った者しか参加資格がないのでしょう? ここで嘘をついても確認を取れば、すぐ分かるよ?」


「そ、それは…………」


「えっと……」


 完全に言葉に詰まる。


 まあ、正解だろうね。お披露目会って、要するにフォーゲートをするっぽい。


 ということは、ある程度霊気を放出できないと話にならないのだ。


 つまり、霊核に繋がった記念のお披露目ではなく、霊核がある程度育った記念の披露目なのだろう。


 でも、まあ……。


 ここで何もせずに帰るというのは、溜飲が下がらないよね。


「だから、代わりに私が出るよ」


「え?」


「お前、何を言っているんだ?」


 私の言葉を聞き、二人組は意味が分からないといった表情で固まる。


 ここは、もう少し補足説明をしたほうが良さそうだ。


「霊術を使える者はみんな出てるんでしょ? 私、霊核と繋がって数年経つから、霊気の放出もできるしね」


「いや、別にお前が出ても……、なあ?」


「だよな……」


 レイちゃんをいびりたかった二人組からすれば、私が参加しても意味がないのだろう。


 言葉にしなくとも、完全に顔に出てしまっている。


「私も霊薬を飲んで霊術が使えるようになった一属性よ。つまりは、レイちゃんと同じなの。だから、丁度いいんじゃない?」


 と、二人が食いつきそうな餌を目の前にぶら下げてみる。


「え、お前一属性なの?」


「まじで?」


「そうだけど?」


 私の答えを聞き、二人組がニヤつき始めた。ヒットである。


「いいぜ、出てもらおうじゃないか!」


「そうだな! 霊術が使える奴は、みんな出てるしな」


「ええ。それじゃあ、行きましょうか」


 私は二人組に先導され、会場へと向かうこととなった。


 という一連の流れを見て、一番驚いていたのはレイちゃんだった。


「マオちゃん!?」


「大丈夫だから。あんな奴ら、ぶっ飛ばしてやるから。見てて」


 私は、驚くレイちゃんの肩を撫で、ウィンク。


 レイちゃんにあれだけのことをしておいて、ただで済むと思うなよ。





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