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 あれから、レイちゃんは頑張った。


 毎日かかさず霊薬を飲み続けたのだ。


 味に対して相当な苦手意識があるはずなのに、飲むことを止めない。


 私にできることといったら、応援することくらいしかない。


 霊薬を飲むときは側にいて励まし、飲み終われば照れて顔が真っ赤になるまで褒めまくった。


 ものすごく辛そうにしている時もあったので、つい止めてもいいんだよ、と言いそうになってしまう。


 だけど、本人からは中止をほのめかすような消極的な言葉は出てこない。


 それなのに、私がやる気をそぐ言葉をかけるわけにはいかない。


 だから、一杯褒めることにした。


 どこまで続けるかは分からない。とにかく最後まで見届ける。


 そんな毎日を過ごすうちに学校生活の方でも変化が出てきた。


 以前は授業中以外、ずっと手を繋いでいないと落ち着かない様子だった。


 それが霊薬を飲むようになってから、その頻度が少しずつ減ってきた。


 でも、霊薬を飲みきった後は甘えてくるので、大仰に抱き締め、頭を撫でて、褒めちぎっているんだけどね。


 そしてとうとう――


 レイちゃんが霊薬を飲みきった。やり遂げたのだ!


 毎日頑張っている所を見ていたせいか、ついホロっと来ちゃったよ。


 最後の日は昭一郎さんも同席し、その瞬間を見届け、飲み終えると同時にパーティー。


 盛大にお祝いした。


 その時、タイミング的にも丁度いいので、昭一郎さんとレイちゃんに霊術の講師について説明しておいた。


 自分がどんな目に遭ったか、どういった人物が適任か。


 昭一郎さんは、しっかりと私の話を聞いてくれた。


 大好きな娘のことだから真剣なのだろう。


 側で話を聞いていたレイちゃんも、私が遭遇した出来事を知り、驚いていた。


「う〜ん、それは確かに注意する必要があるな。そうなると、母さんに頼めれば話が早いのだが……」


 昭一郎さんが、困ったような顔で言う。


 そういえば、お祖母さんが霊術師だったっけ。


「お忙しいんですか?」


「お祖母様は、数年に一度顔を出す程度で、滅多にこちらには来ませんの。ついこの間会ったばかりですし、難しいかと思いますわ」


「頼めば来てくれるだろう。ただ、そうすると色々とね……。そうだ、君に頼めないかな?」


 昭一郎さんから希望に満ちた視線が送られてくる。


「初歩的なことならいけます。練習方法を教えることや、訓練を監督する事はできると思いますよ」


 一度教わったし問題ない。今も霊気圧縮に勤しんでるしね。


 ただ、私は初歩止まり。当時は霊力が無さ過ぎて、何も出来なかったんだよね。


 というわけで、中級以上のレッスンはできない。


 でも、それ以前の問題がある。


「おお! それじゃあ!」


「すみません。一番初めに行う、属性数と属性を調べる方法を知らないんです。それだけは講師を雇って調べてもらわないと駄目ですね」


「そうか……。霊術師の知り合いはいるが、条件に合う者となると心当たりがないな……」


 難しい顔になる昭一郎さん。


 まあ、うちも母が無理矢理見つけてきたからなぁ……。


 そうだ、同じ人でいいんじゃない?


「それなら、私がお世話になった人を紹介しましょうか? 多少難はありますが、私が遭遇したトラブルは回避できます」


 私の言葉を聞き、昭一郎さんは顔を明るくした。


 まさか酔っ払いを紹介して、喜ばれる日が来るとは。


「うん、お願いしよう。その時は同席したいから、日程を調整しようか」


「分かりました」


 というわけで、酔っ払いを召喚だ。


「……おいおいおい、なんだここは」


「雲上院家です。説明したでしょ?」


「そうか……、俺は秘密裏に作られたここの地下室に監禁されて、人知れず死ぬんだな。やっと真っ当に生きられると思った矢先に、地獄へ真っ逆さまか……」


 雲上院家の応接室に通された酔っ払いこと、兎与田先生は、たそがれた表情で天井を見つめていた。


「先生が雲上院家に対してどういうイメージを持っているか知らないけど、そんなことにはならないから。それにしても、以前お会いした時とは大分変わりましたね? 酒臭くないし」


 髪がサッパリしている。無精ヒゲは相変わらずだし、服装もラフっぽくはある。


 だけど、服の選び方が変わった感じがする。


 動き易い物を選んだから、ラフになっているというイメージだ。


 何より酒臭くないんだよね。


「前に会ってから何年経ったと思ってるんだ。俺だって変わったのさ。酒は、まあ……嗜む程度におさえてる」


「へぇ、良かった? ですね」


「まあ、良かった? のかな」


 お互い首を傾げあい、つい笑い合ってしまう。


「おや、賑やかだね。そちらが礼香の先生になる方かな」


 と、そこに昭一郎さんとレイちゃんのご登場だ。


「はっ、ハハ〜……!」


 酔っ払い改め、兎与田先生は、その場にひれ伏した。


「それじゃあ、九白さんの時と同じ条件でお願いします。私も授業を見学させてもらうから、そのつもりで頼むよ」


「か、かしこまり〜っ!」


 床に額を擦りつけ、叫ぶ兎与田先生。


 そんな姿を見ても昭一郎さんは、動じない。


 もしかして雲上院家では、これが日常的な光景なのか……?


 と、とにかく、事前に話し合っておいた結果、先生には属性数と属性の調査のみ行ってもらう。


 その後の授業は、私が引き継ぐ形だ。


 ただし、私が行う授業の報酬は先生に支払われる形にしてもらった。


 なぜそうしたかと言えば、酔っ払いだと思っていたからだ。


 以前会った時の様に、酒臭い息で延々と授業をするようなら、昭一郎さんの逆鱗に触れる可能性がある。


 そうなった場合、我が家にも飛び火するかもしれないからー! と、我が家のパパが申した為、そういった形に落ち着いた。


 でも、今の先生なら授業の全てを任せても問題なかったね。


 契約を結んだ後で分かったことだから、変更はしないけど。


 というわけで、早速属性数と属性の調査が始まった。


「……………………………………ッ」


 だが、調査開始と同時に、先生が固まったまま一切話さなくなった。





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