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なんだかんだと忙しない日々が続くうちに、フォーゲートの大会当日となった。
霊術師の人口はそれほど多くない。その中で中学生となると更に少ない。
そうなると、学校数も少なくなる。霊術師の学校は都道府県に一つあるかないか程度。
東京だけは四校あるけど。それは例外なのだ。
そのため、大会に予選はない。いきなり全国大会だ。
会場は東京なので、初参加でお上りさんの私からすれば、都大会と変わりない。
我が峰霊中学校第二フォーゲート部は、一属性二名に、謎の五属性一名、名家の五属性一名が参加という異質な内訳。
かなり波風が立つと予想していたが、そうはならなかった。
それは最後のメンバー、鳳宮未花さんこと、ミカちゃんのお陰だ。
私たちの間であだ名呼びが定着したころ、ミカちゃんから自分だけ仲間外れは嫌だと言われてしまった。
確かに、一人だけ苗字呼びだと距離感があるよね、と皆納得。
というわけで、四人揃ってあだ名で呼びあうようになったのである。
そんなミカちゃんだが、彼女は十家の上に当たる四柱の家の一人娘。
しかも現当主だったのだ。それなら新入生代表に選ばれるのも頷ける。
というわけで、生徒どころか大会関係者も低姿勢で私たちに接してくる。
が、ミカちゃんがいないところでは、態度が豹変。当たりが強くなったりする。
けど、その程度で済んでいるともいえる。
今のところ、妨害にまで発展するようなことにはなっていない。
うちは部員が四人。
団体戦参加権が得られる最低人数しか部員がいないため、一人でも欠員が出ると出場できなくなる。
いつもの一属性に対する態度なら、そこをついて妨害工作でもしてくるはず。
だけど、欠員が出てうちの部が団体戦に出場できなくなると、当然、ミカちゃんも出場できなくなる。
多分、そのお陰で何事も起きていない気がする。
ミカちゃんには、たまたま入部してもらったけど、こんな形で助けられるとは思いもよらなかった。
当の本人は四柱の家の子だからといって、あまり特別扱いしない私たちとの関係が気に入っているらしく、楽しんで部活に取り組んでいた。
私たちに対する偏見もなく、同じ学年ということもあり四人で仲良くやれている。
非常にありがたい話である。
そんなわけで何のトラブルもなく受付が済み、開会式が終わり、試合が始まった。
団体戦は全十ホールを回る。そして、チーム内選手の合計スコアで勝負する。
参加するチーム数は全部で四十。
全国には、フォーゲート部がない霊術師の学校もあることを考えるとそれなりに多い。
それは、一校につき大会参加上限人数が八人のため、部の人数が多い所はうちみたいに二チーム出場しているからである。
団体戦は進行をスムーズにするためか、要所で脱落者を出すルールとなっていた。
初めの三ホールで上位半数が次のホール。
次の三ホールで上位半数が次のホール。
最後の四ホールで順位が決定という感じだ。
つまり、予選と本戦が合わさって、全十ホールになったと考えればいい。
私たちの順番は三十二番。後半スタートのため、待ち時間がある。
しばらくは観戦して、敵チームのデータ収集に努めるとしましょう。
◆とある監督
俺は成田。
霊正中学でフォーゲート部の監督をしている。
今年も恒例の全国大会の日がやってきた。
ここで良い成績を残すのはプロへの第一歩。
今回参加するレギュラーの中には、そのことを視野に入れて気合を入れている者もいる。
少し自画自賛が含まれるが、今年のレギュラーは良い選手が育った。
個人戦はもとより、団体戦でも上位に食い込めるかもしれない。
といっても、大会が始まる前から気張っても仕方がない。
俺は、休憩していた顧問と生徒の引率を交代してもらい、一服に行った。
するとそこで、珍しい人物を見つける。
同期の三沢だ。俺は部のアマチュア止まりだったが、奴はプロに行った。
今は引退してコーチをやっていると聞く。
といっても、プロ向けのコーチングだ。
中学生の大会に足を運ぶような奴ではないのだが……。
興味が湧いた俺は、三沢に声をかけた。
「どうした、こんなところで会うなんて珍しいな」
俺の声に反応した三沢が「おう」と、軽く片手を上げた。
「まあ、普段なら絶対来ないな。そっちは監督をやってるんだっけ?」
「そうだ、今年のうちのチームは強いぞ。もしかして、新人発掘か? そういえば今年は、四柱の家の人間も参加しているらしいしな」
四柱、鳳宮家の現当主である鳳宮未花だ。
粗相のないようにと、学校に顔写真付きで資料が送られてきた。
大会には毎年参加しているが、今までこんなことはなかった。
事前に参加している全ての学校に通知しているということは、運営も相当ピリピリしている様子。
そんな有名人を一目見ようとやってきたのだろうか。
が、俺の言葉を聞いた三沢が首を振る。
「ちげーよ、教え子の様子を見に来たんだよ。……いや、待て。教え子ということなら、含まれるか」
三沢は自分で言った言葉に首を傾げる。こいつ、大丈夫か?
「おいおい、しっかりしろよ。それにしても、お前が中学生に教えるなんて珍しいな。で、どこのなんて子なんだ?」
意外な答えに驚く。こいつが子供相手に教えるなんて珍しい。
いや、むしろ初めての事なんじゃないのか。
こいつが目をかけた選手となると気になるな。非常に好奇心が刺激された。
が、三沢の返答は素っ気ないものだった。
「言わなくても分かるよ」
「分かるわけねーだろ。エスパーじゃないんだから」
四十チームも出場しているのに、どうやって見分けろというのか。
さすがに無理がある。
「本人たち曰く、優勝を目指してるらしいから、優勝した奴らがそうだよ」
「はっ、すげえ自信だな。いくらお前が名プレイヤーで名コーチでも、中学生の大会は畑違い。いくらなんでも優勝は無理だろ」
余りの大言に鼻で笑ってしまう。
プロ選手と中学生の指導では内容も変わってくる。
いくら三沢が凄くても、中学生のコーチングに転向して、すぐに結果を出すのは無理だ。
そもそもこの大会は、そんな甘いものではない。
「そうだな。あいつら、フォーゲートもそんなに得意ってわけでもないし、むしろ下手か? いや、上手いって言えば上手いのか? う~ん……」
顎に手を当てた三沢は、考えをそのまま口にしたような、まとまりのないことを言いだした。
フォーゲートが得意ではない選手に対して、なぜそれだけの自信を持つ?
根拠がなさすぎるだろ。
「なんだよ。そんな選手が優勝できるわけねえだろ。この大会を舐めてるのか?」
「舐めてるわけじゃない。あいつらは本当に、そんなに上手くないんだ。だが、それはあいつらの基準で自分の実力を測った時の話だ」
三沢は身振り手振りを交えながら、なんとか理解を得ようと言葉を探って説明した。
が、こちらには全く伝わらない。何を言っているんだ、こいつは。
「すまん。言っている意味が分からないんだが」
「どうせ、見てれば一発でわかる。優勝するといった理由もな」
説明を諦めた三沢は投げやりに言い放って、そっぽを向いた。
「なんだそりゃ。わけがわからん」
俺が肩をすくめたのと同時に、運営から開始準備のアナウンスが入った。
「俺は学校関係者じゃないから、このまま観戦するが、お前はいいのか?」
「おっと、俺は学校関係者で監督だから中で観るんだった。じゃあな」
「おう。うちの選手を見て落ち込むなよ?」
「はいはい、メンタルケアも俺の仕事だから任せとけ」
これは、三沢なりの冗談なんだな、と理解する。
実際は親戚の子でも観戦に来たのだろう。
それが恥ずかしくて言えないだけ。
だから、説明もあいまいで要領を得ない。
下手な嘘をついて誤魔化そうとしているからだ、と察した。
俺は、三沢の言葉を適当にあしらうと、集合場所へ急いだ。
本日の連続更新はここまでとなります
お楽しみいただけたなら、幸いです
何より、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
そして、誤字、脱字報告ありがとうございます!
投稿前の予定では一週間かけて連続更新の数を減らしていく予定でした
が、気が付けば十日で100話投稿……。さすがに突っ込みすぎました
明日からは最終更新は20時という部分だけ維持して、一日当たりの投稿数は減らしていきます
これからも本作をよろしくお願いいたします!
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