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大人気モデルになった幼馴染が幼い頃に交わした俺との約束を果たすために帰ってきた件  作者: 本町かまくら
第二章 星降る夜。この先にはきっと……

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41 おかゆを冷まして

「……ん、んぅ……」


 食欲をそそる匂いが鼻孔をくすぐる。

 私はその匂いにつられて、深い眠りの海からだんだんと引き上げられていった。


「んぅ……んにゃ」


 目覚めた時、真っ先に飛び込んできたのは最愛の人の顔。

 今日も相変わらず気だるげで、でも最高にカッコいい。


「茜?」


「すき」


「んぁ?」


 最近私の愛の告白に嬉しい反応を見せてくれない。

 そんな歩夢はちゃぶ台の上に何かを置いた。


「何それ」


「おかゆ。こういう時はおかゆが定番だろ?」


「もしかして……歩夢が作ったの?」


「まぁな」


 照れくさそうに頭をかく歩夢。

 これは照れているときに歩夢が見せる癖の一つだ。


 それにしても、歩夢がおかゆを作れたなんて知らなかった。

 私はおにぎりでさえまともに握ることができないのに……頑張らないと。


「おかゆ、食べれるか?」


「うん」


 布団の中からむくりと起き上がって、布団から出る。

 そしてベッドに座って、私は歩夢をじーっと見つめた。

 たぶん、これで歩夢に私の思いは伝わると思う。


「…………食わせろ、と?」


「うん♡」


「……ったく、しょうがねー奴だな」


 なんだかんだで私の願いを叶えてくれるところが、私は好きだ。

 ほんと歩夢は、私に対して甘い。


 歩夢はちゃぶ台をベッド付近に寄せて、おかゆをすくう。

 そして私の口元に持ってきた。


「私、猫舌だって知ってるよね?」


「そ、そうだった……くそうこのわがままお嬢様め……」


「さぁ食事なんてやめて、私のことを食べちゃいなさい!」


「誰が熱出してる奴を食べるか」


 歩夢のガードはほんとに固い。

 男の子は野獣なんだと先輩から聞いていたのに、歩夢はむしろ真逆。穏やかな草原で暮らす牧場の牛さんだ。



「じゃあ、熱が引いたら私を食べちゃうっていうの……どうですか?」



 私の言葉に、おかゆを冷ます歩夢が静止する。

 そして何も言わずにスプーンを皿に置き、無表情で私に迫ってきた。


「あ、歩夢?」


「…………」


 私がそう言っても、歩夢からの返答はなし。

 歩夢は相変わらず無表情で私に迫ってきて、顔と顔がくっついてしまうくらいまで近づいてしまった。


「…………す、するの?」


 私の言葉に、またしても歩夢は答えない。

 なるほど。沈黙が答えというやつか。


 私は歩夢の表情から察して、ゆっくりと目を閉じた。

 

「いい……よ……?」


 すると、歩夢が私の前髪を上げた。

 そして露出したおでこに、何かが当たった。


「ん……ん?」


「熱はなさそうだな。じゃあこいつ平常運転でこんなこと言ってんのかよ。体力底なしか」


「いたっ」


 去り際にデコピンを食らった。

 私は頬を膨らませて、欲求不満さと期待させた恨みを込めた視線を歩夢に向ける。


「むぅ~」


「病人は病人らしくしとけ?」


「じゃあ病人を労わった方がいいんじゃないんですかね?」


「食べちゃったらそれ労わったことにならなくない?」


「私がそうして欲しいんだけどなぁ?」


「……そういうの、俺が本気で受け取ったらどうすんだよ」


「本気なんだけどなぁ~」


 実際、八割がたは本気だったりする。

 でもきっと堅物の歩夢には、こういう流れじゃなくてもっとムードがあるときにちゃんと言わないとダメなんだろうけど。


「ったく……お前は冗談が好きだな」


「むぅ~冗談じゃないのに~」



「――だったら、あと少し待ってくれ」



「へ?」


 おかゆを冷ましながらそういう歩夢。

 冷まし終わったのかスプーンを私の口元まで寄せてきて、私はぱくりとおかゆを口に入れた。


「お、美味しい……」


「だろ?」


 歩夢はドヤ顔で「してやったり」という表情を浮かべた。


 ――そういえば歩夢の手……絆創膏だらけだな。


「ほんと、美味しい」


 私はそうひたすら呟いた。



 


その言葉……どっち?

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― 新着の感想 ―
[一言] 並び立つまであと少しって? 草食なのではなく、自制心がものすごく強いのだろうなあ。茜さんはそこんところ見誤ってはいけません。 まあ、あんまりつり合いを考えすぎると、時期を逃してこじれたりしが…
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