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8、はじめての対象者さがし

 僕は、白衣を身につけた追放ざまぁ支援局のアロンさんと並んで、街の中を歩いている。彼には、目的地があるわけでもなさそうだ。


 対象者を探しているわけだから、僕の壺が反応する対象者がどこにいるかは、彼にもわからないためだろう。


「エドさんは、この街トランクには、一年前に来られたのですか?」


 世間話のつもりだろうが、僕の胸は苦しくなった。一年前に、この街にたどり着いたときは、希望に満ちていた。幼馴染たちも、人と話すことが苦手な僕に、優しくしてくれた。


「はい……」


 僕は、返事しかできなかった。腕輪の魔道具は、僕の考えをすべて暴露するわけじゃない。僕が知られたくないことは、隠してくれる。



「あぁ、今の質問はデリカシーがなかったですね。すみません。しかし、エドさんは、もう魔道具を制御できているのですね。あっ、壺ではなく、エドさんが主人だからか」


「いえ、大丈夫です。他の人は、僕とは違う反応をするのですか?」


「はい。初回に、追放ざまぁ支援局の担当者が同行するのは、そのためです。対象者とケンカになることも多く、当局へのクレームもあるため、私達が、新人さんの能力を確認することにしているのです」


「あっ、そうか。引き継ぎのために仕事の見学はしたから、担当者が同行しなくても仕事はできるのですね」


「エドさんは、理解が早くて助かります。おっしゃる通りです。しかし、うーむ、まだ対象者は見つかりませんか? 私の方の反応としては、何度もすれ違っていますが」


 僕も早く対象者を探したいから、ずっとキョロキョロしながら歩いている。



「僕が見逃しているのかもしれません。どんな反応が起こるのですか?」


「反応は大きいので、気づかないことはないはずです。だから逆に、追放ざまぁ支援局員さんからは、日常的に目障りだという、厳しいご意見をいただくきこともあり、当局としては今後の課題となっています」


「もしかして、目障りだから早く辞めたいという人も、いるんじゃないですか。あっ、それを狙ってるのかな」


 うわっ、また僕は嫌な言い方をしてしまった。彼は、一瞬、返答に困ったように見える。


「エドさんは、鋭いですね。ご指摘の通りですが、内密にお願いします。当局員が固定化してしまうと、別のトラブルが発生するためです。ご理解ください」


「顔バレしてしまうと、嘘つきな冒険者が寄ってくるんですね。ヤヨイさんも、そうだったみたいですが」


「ええ、当局員が、逆にカモにされてしまうトラブルもあります。ですが、魔道具の反応がなければ、ガチャは引けません。それを知らない冒険者が、いろいろとトラブルを起こします」


「頻繁に追放ざまぁ支援局員が交代することで、ガチャを引くためには魔道具の反応が必要なことを、冒険者に広めようとしているのですか」


 僕は、また嫌なことを言ってしまったらしい。彼は、苦笑いしているが、気分を害したようには見えない。


「エドさんは、本当に鋭いですね。おっしゃる通りです。当局としましても、ガチャは魔道具の反応がないと引けないことを発信しているのですが、なかなか浸透しないのですよ。あっ、よかったら、あちらで昼食にしませんか?」


 彼にそう言われて気づいたが、僕も少しお腹は空いている。さっき、昼を示す鐘の音が聞こえた。かなり長い時間、歩いているということだ。


 だが僕は、魔道具によって話せるようにはなっても、親しくない人と一緒に食事をすることには、抵抗がある。



「長い時間がかかってしまってすみません。もう、今日は解散でもいいと思います」


「いえいえ、そういうつもりではないのですよ。こちらこそすみません。ただ、あの店は、若いお客さんばかりだから、オジサン一人では行けないなと思っただけなのです。私は空腹なわけでもありませんから、もう少し探しましょう」


 彼は、慌てたようだ。初回は必ず同行しなければならない決まりがあるのか。


 僕はその店の方を見てみた。確かに店内は、10代の客ばかりのようだ。だが僕は、あんな陽キャだらけの中に入る勇気はない。彼は、若い客だらけの店だから僕が入りやすいと、考えたのかもしれないな。


 あれ? あの人……。


 店の中の客の一人が、まるで光を照らされているように光って見える。壁があるのに、壁の奥にいる人が見えるんだ。僕がそれに気づいたためか、その光は、チカチカと点滅を始めた。



「アロンさん、対象者は、光に照らされているように見えますか?」


 僕がそう尋ねると、彼は目を輝かせた。


「はい、光って見えるはずです。緊急性の高い対象者は、さらに光が点滅して見えることもあります。私には、今はその対象者は見つけられないのですが、店内ですか?」


「店内です。チカチカと点滅しています」


「エドさんの壺は、探索範囲が広いのですね。やはり、特殊だからか。窓や壁などの遮蔽物しゃへいぶつがあると、通常の当局員には発見できません」


「壁の向こう側です。店内で食事中らしき男性です」


「点滅しているのですよね?」


「はい、チカ、チカ、チカというくらいのペースですが、点滅しています」


 僕がそう話すと、彼の表情が変わった。彼は、うす汚れた白衣を脱ぎ、どこからか取り出した黒い魔導ローブのようなものを身につけた。左胸には、金色の糸で『錬金協会』と刺繍されている。


「エドさん、そのスピードの点滅は、非常に緊急性が高い。対象者の心臓の鼓動と同じ速度は、非常事態です。行きましょう」


「は、はい」


 僕は、彼の後ろからついて行く。点滅する光を見ていたせいか、僕の心臓もバクバクしてきた。




 ◇◇◇



「いらっしゃいませ、お二人様ですかぁ?」


「客ではありません。錬金協会のアロンです。ちょっと人探しをしています。ご協力ください」


 彼はそう言うと、店内をサッと見回した。だが、対象者を見つけられないようだ。


 一方で、僕の目の前には、不思議な情報が表示されていた。対象者の素性らしい。



 ────────────────


【名前】 ジョーモ(21歳)

【職業】 冒険者(Bランク)

【スキル】 土偶(レベル26)[MAX30]


 ────────────────



「エドさん、見つけられますか?」


「はい、柱の向こう側にいるジョーモさんです。スキル土偶のBランク冒険者です」


 僕がそう答えると、彼は一瞬、目を見開き、そして静かに頷いた。


「皆さん、お食事中に失礼します。錬金協会のアロンです。こちらに、ジョーモさんはおられますか」


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