1、突然の追放
「じゃ、エド、おまえ追放な」
突然、集合場所のギルド前広場で、おはようの挨拶代わりに告げられたパーティからの追放。その理由には全く心当たりがない。
僕達は、同級生が5人だけの小さな村の学校を卒業した幼馴染だ。卒業式の翌日に皆で村を出て、助け合いながら大きな街まで旅をした。たどり着いたこの街トランクで、冒険者登録をしたのが一年前のこと。
そして昨日、僕達のパーティは、この街の新人としては歴代最速でCランクに上がった。
僕個人の冒険者ランクは、まだDランクだけど、パーティランクによって受注可能なミッションが決まる。Cランクからは一人前とみなされ、討伐ミッションを受注することができるんだ。
皆で、早く討伐ミッションを受注できるようになろうと、この一年間ずっと頑張ってきたのに、どうしてそんな……。
「なぜ、僕が……」
「俺達のパーティは、Cランクになったんだぜ? もう遊びじゃないんだ。エドは混ぜ混ぜしかできねぇだろ。おまえの混ぜ飯には飽きたし、おまえが作っていたポーションなら店で買えばいい」
「剣も魔法も学生レベルでしょ? 冒険者としては通用しないよ。討伐は危険だもん。私達も、エドを庇う余裕なんてなくなるよ」
「そんな……」
僕は同じ村で育った幼馴染のみんなと、冒険者として一緒に頑張っていきたい。だけど皆は、僕のことが邪魔なのか。
反論したくても言葉が出てこない。僕は、人と話すことは苦手だ。争うことは、もっと苦手だ。
「エドのためでもあるんだよ? 冒険者じゃなくて、混ぜ飯の料理屋でもする方が良いんじゃない? すごく美味しいしさ」
嫌だ。僕は冒険者として一人前になりたいんだ。皆と一緒に頑張りたいんだ! だけど……。
学校卒業前には、誰もが、ひとつだけスキルを得る。僕が引き当てたスキルは『混ぜ壺』だった。
学長先生は、珍しいスキルだと驚き、どんな能力を秘めているか楽しみだと言ってくれた。
珍しいスキルは成長が遅いこともあると説明され、皆は学長先生に、僕が成長するまで何年かかっても、みんなで助けると約束してくれた。
あのとき僕は、とても嬉しかった。だから、あまり戦えない分、できる限りの裏方を引き受けていたんだ。
それなのに皆は、たった一年で、僕を見捨てるのか。
恐る恐るみんなの顔を見る。だけど皆、同じ目をしていた。彼らの目には、もう、僕は映っていない。
「じゃあな、エド、元気で」
「脱退の手続きは、俺らがやっておくから、おまえは気にすんな」
そう言うと、彼らはギルド前広場に僕を残し、冒険者ギルドの中へ入っていった。
僕は、その場から一歩も動けなくなっていた。
◇◇◇
「不幸な冒険者、ハッケーン!」
どれくらい時間が経っただろう。
呆然と立ち尽くしている僕の目の前に、派手なメイクをした金髪の女性が現れた。冒険者ギルドのカウンター内にいるのを見たことがある。ギルド職員かな。
「不幸な冒険者くんに説明するね。突然の追放って、ムカつくよね? 復讐したいよね? そんなキミを支援するのが、私達、追放ざまぁ支援局なのですっ」
「えっ……」
彼女は、土色の大きな壺を見せて話を続ける。
「この壺は、魔道具なの。キミの不幸な話を聞かせて。それに応じてレア度が決まるよ。話が終わったら、ガチャを引くことができるわ。武器や防具そして魔道具の中から、不幸なキミが復讐するために役立つ物が得られるよ」
あぁ、噂に聞いたことがある、追放ざまぁ支援ガチャだ。不幸な冒険者が自殺することを防ぐために、最近、このなんちゃら局というものができたらしい。
あまり良い物は出ないけど、無料だから文句も言えないって、誰かが言ってたっけ。
「さぁ、キミの不幸な話をしちゃって!」
いや、僕は……。知らない人と話すこと自体がストレスなんだ。
「僕は、いらないです」
「ええっ? 本気? いらないの? 復讐しないの? お金はいらないよ。無料だよ? 冒険者ギルドと錬金協会の慈善事業だもの。本当にいらないの?」
「いらないです」
すると、彼女はニヤッと笑った。
「キミ、次のパーティは決まってる? 他の仕事をするの?」
「いえ……」
「じゃあ、私がスカウトするよ! 私と交代ね。来て!」
彼女は大きな壺をスッと消すと、僕の腕をガチッと掴んだ。そして、すごい力で、冒険者ギルドの建物へと引っ張っていく。幼馴染がいるはずだから入りたくないのに、彼女の力には敵わなかった。
スカウトって何だよ?
本作を見つけていただき、ありがとうございます。
しばらくは毎日投稿を予定しています。時間はバラバラになると思いますが、よろしくお願いします。




