表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒騎士と私  作者: みあ
36/45

きっとそう

「准将も強くならなくちゃいけないと思うんです」 

 

 王都に向かう途上、私は後ろに乗る上司に言った。 

 もう普通に二人乗りしてますけど仕方なかったんです。 

 馬車は中将が使うから、荷物は後で届けてやるから、と言われて仕方なく。 

 

「僕はもう充分に強いと思うけど……(性的な意味で)」 

「精神的に、です」 

 

 あの巨人を一瞬で倒したこともあるし、魔王ですら最強と言っていた。 

 その肉体的な強さに疑う余地はない。 

 

「そう言いながらあっさり無力化されたくせに」 

「うっ(性的な意味で)」 

 

 そんな短いうめき声ですらいやらしいって色んな意味ですごいですね。 

 場違いな感動すら覚えるが今はそんなことはどうでもいい。 

 

「私を殴りましたよね? 覚えてますよね?」 

「は、はい、しっかりと覚えています(性的な意味で)」 

 

 何か性格変わってたし、一人称が俺になってたし。 

 本で読んだ「二重人格」というのかと思ってたけど記憶があるのなら違うのだろう。 

 

「どういう状況なんですか、あれ?」 

 

 准将から聞き出した所によると、カッとなるとああなるらしい。 

 つまり、部下を傷付けると言われて怒ったということ。 

 この「部下を」の所で言い淀んでたけど、よく分からないので流しておいた。 

 

「君を傷付けたことは謝る。償いなら何でもするから許してほしい(性的な意味で)」 

「じゃあ、今後は戦闘中にカッとならないようにして下さい」 

 

 これで解決である。 

 准将はアワアワと何かを言っていたがやがて諦めたのかうなだれる。 

 

「……努力します(性的な意味で)」 

 

 努力するといっても出来るものではないだろう。 

 出来ていたのなら、今までだって改善しようとしていたはずだ。 

 このあたりは先任にも話を聞いておいた方がいいと思う。 

 狂戦士を食い止めていたのは先任だし、彼が改善しようとしていないはずがない。 

 

「とりあえず、私の怪我は全治一ヶ月でしたよね?」 

「うん、そのくらいかな(性的な意味で)」 

 

 包帯を替えるたびに准将に『治癒』してもらっているために治療期間がかなり短くなっている。 

 骨はもうほとんどくっつきつつあるらしい。医者が驚いていた。

 知らない所でビックリ人間にされるのも嫌なので種明かしはしておいたが、今度は逆に譲ってくれと言われて大変だった。 

 これについては中将に報告して軍から広めてもらった方がいいだろう、と言う准将の言葉に従いたいと思う。 

 

「その間は准将の精神的鍛錬に付き合います。その代わり、怪我が治ったらこちらの鍛錬にも付き合って下さい」 

「うん、分かった。何をするのかは分からないけど(性的な意味で)」 

 

 王都の門が見えてきた。 

 ようやく日常に帰って来られたんだ。 

 そんな気持ちでいっぱいだった。 

 

 

「……せめて下ろしてもらうべきだった」 

「まあまあ、包帯してるから皆気付いてるって(性的な意味で)」 

 

 行きと同じく兵士達から奇異な視線で出迎えられた。 

 戦場では准将とセットみたいに考えられてたから私も違和感が無かったのだが、戦場でもない街中に入れば当然人目を惹きますよね。 

 行きは門で待ち合わせだったからまだ良かったが、このまま軍務局までとかどんな拷問。 

 英雄が女連れで馬に乗ってる、とか噂になりませんように。 

 

「……すみません、軍務局辺りの風景が行きと違う気がするんですが」 

 

 何か、どこかこう、違和感というか。 

 もう少し向こう側の風景が見えていたような。 

 

「うん、急遽宿舎を増築することになってね(性的な意味で)」 

 

 その言葉の後に小さな声で、仕方なかっただの、時には妥協することも大事だの呟いていたが、そういうことらしい。 

 言われてみれば、士官用の宿舎が各階五部屋分しかなかったのが一部屋ずつ増築されている。 

 私が王都を離れていた一週間の間に建てられたのだから本当に急なことだ。 

 聞けば、私の部屋もあの一角に入ることになっているらしい。 

 まさか私のために建てたわけでも無いだろう。 

 さすがにそこまで自分に価値があるとは思わない。 

 

「とりあえず、今日のところは学生寮の方に。また言ってくれたら引越しの手続きするから(性的な意味で)」 

 

 寮の入り口まで送ってくれた准将が馬から下ろしてくれる。 

 脇の下に手を入れるようにして子供みたいに抱かれるのは非常に不本意だが仕方がない。 

 せめてお姫様抱っことか……違う、私は何を考えてるんだ?! 

 准将はそういう相手ではない、そう分かってるはずなのに……。 

 

「今日と明日はゆっくり休んで。明後日の二の鐘くらいに執務室に来てくれたらいいから(性的な意味で)」 

 

 混乱する私に准将がそう告げる。 

 私は魔法か何かで混乱していたのだ。きっとそう、そうに違いない。 

 普段の私がそんなことを口走るはずがない。 

 後から考えても私の行動は不可解だったと言わざるをえない。 

 何故か私は准将の腕に手を掛けて言ってしまったのだ。 

 「このまま部屋まで運んで下さい」と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ