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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第二部 カズハ・アックスプラントの初めての建国
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取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて消滅する事にした。

『ギャギャギャン!』


 最後の一匹を《ツヴァイハンダー》でスライスし戦闘終了。


「ええと……3125Gかぁ……。まあまあかな」


 《エーテルクラン》に歩を進めながらも成果を確認する。

 この辺りのモンスターもだいぶ強くはなってきたが、相変わらずGはこんなものだ。

 2億近く持っていたあの頃が懐かしい……。


「あー。マジで金欠……。本気でストリッパーのバイトとか考えてみようかな……」


 全裸の俺を野獣の様な目でみる男共。

 おさわり禁止でも手を出してくる前席の馬鹿共。

 ・・・。


「……吐き気がしてきた……」


 想像しただけで生きて行くのが嫌になる……。

 絶対にそれだけは止めよう。

 やっぱ確実に優勝して1000万Gを稼ぐっきゃない!


「そういや俺……。この女の姿になって初めてした事って『全裸になる』事だったっけ……」


 男の夢。

 女の身体に転生したら絶対に誰もがやる事。

 男って……。


「あー。ルルをハグしてぇなぁ……。あいつら元気かなぁ」


 取り敢えず国に戻ったらルルを強制ハグは確定として。

 タオの料理も食いてぇし、グラハムに悪戯とかして遊びたいし。

 アルゼインとセレンの喧嘩とか見て煽ってやりたいし。

 レイさん……はいいか。

 リリィとゼギウスじいさんはマイペースだから、まぁ上手くあいつらを纏めてくれてるだろうけど……。


「さあ、そろそろ戻らねぇと」


 なんだかちょっと懐かしみながらも俺は《エーテルクラン》へと急ぎ足で戻る。




◆◇◆◇




『次の試合を始めます! 両者! 前へ!』


 ぎりぎり間に合った俺。

 あぶねぇ……。

 今度からちゃんと時間とか確認しておこう……。


「……て、おまえかよ」


「あうぅぅ……。遂に私……カズト様と……!」


 目の前に立っているのはお腹を押さえながら長い耳が垂れてしまったエルフ少女。

 もとい愛犬。


「俺と当たるって事は、お前も勝ち進んできたって事か? マジかよ……」


「わ、私だってびっくりしているのですよぅ! う……。叫んだらお腹が……」


 大丈夫かこいつ……。

 たまたま対戦相手が弱くてここまで勝ち上がってきたとか……?


『それでは――始めえええぇぇぇ!!』


 試合開始の合図と同時に沸く場内。

 うーん。

 始めちゃってもいいものか……。


「手加減は――」


「ぜひ宜しくお願い致しますぅ! 本気だしたら駄目ですからねカズト様ぁ!」


「・・・」


「うぅ……。お腹痛い……」


 どうしろと。

 俺にこいつをどうしろと?


「ええと、あ、武器は……」


 ごそごそとアイテムウインドウを不慣れな手つきで操作するエアリー。

 てか事前に装備しとけよ!

 なんで今探す!?


「あ、間違えました」


 俺の周囲に突如蔦が出現。

 そして俺の手足を思いっきり縛り上げる。


「おい」


「ご、ごめんなさい! つい間違えて《木魔法》の《ウッド・バインド》っていう魔法を押しちゃいましたぁ!」


「・・・」


 ぎゅうぎゅうと締め付ける蔦。

 うん。

 痛い。


「あれー、おっかしいなぁ……。私の《レイピア》は何処に……」


 俺の頭上にありえないほどでかい切り株が出現。

 そしてそのまま俺目掛けて急降下。


ずううぅぅぅん!


 という音と共に当然下敷きになる俺。


「あわわ……! 大丈夫ですかぁ! カズト様ぁ! あ……また私……ボタンを間違えて……。す、すぐに解除しますからねぇ!」


「・・・」


 うん。

 いま首がぐきって鳴ったから、たぶん首やっちゃった。

 うん。


「ええと……どれだったっけなぁ……。これ……かな?」


 ポチっとウインドウのボタンを押すエアリー。

 どう考えても嫌な予感しかしない俺。


「あ! 違う違う! これ《陽魔法》の《遁甲》じゃないですかああぁぁ!」


「・・・」


 俺の周囲に異空間から『陰陽師』みたいな格好のおっさんが10人程出現。

 なんかぶつぶつ念仏みたいなのを唱えながら白いフサフサしたのが付いている棒を一心不乱に振ってるし。


『開門休門生門傷門杜門景門死門驚門……。開門休門生門傷門杜門景門死門驚門……』


 10名の陰陽師が同じ念仏を繰り返す。

 大きな切り株に押し潰されている俺の身体がさらに圧迫されていく。

 これは……?


「ああ! カズト様が沢山の門の下敷きに! ああ……どうしたら……オロオロ……」


 四方八方から次々と出現する様々な形をした巨大な門。

 うん。

 重い。

 死ぬ。


『滅ッ!!!』


 一斉にそう叫んだ陰陽師達。

 俺は切り株やら門やらに圧縮されたまま時空の狭間に飲み込まれる。


「ああ……行ってしまわれるのですねカズト様ぁ…………南無」


「『南無』じゃねえええええええええええええええええええええええええ!!」


 全ての《力》を開放し、蔦やら切り株やら門やら陰陽師やらをいっぺんに吹き飛ばす俺。


「おお!」


 目を輝かせたエアリー。


「お前アホかああああ! 『時空の狭間』ってシャレになんねぇだろうがあああああああああああ!」


 おしっこちびったよマジで!

 この世から消滅するとこだったよ!

 冗談じゃねぇっつうの!


「危うく私も犯罪者になるところでしたぁ……あうぅ……」


「お前……」


 こいつは……マジもんだ……。

 恐らく計算なんてしていない。

 本当の……馬鹿なんだきっと……。


「ええと、カズト様?」


「んだよ」


「……怒りましたか?」


「怒りましたよ!」


「ひぃ!」


 頭を抱えて蹲るエアリー。

 だから俺にどうしろと!


「覚悟は……出来てますわよね……? エアリーさん?」


「うぅ……。あの、なるべく痛くしないで下さいぃ…………ぽっ///」


「・・・」





 ――エアリー・ウッドロック。


 三回戦、敗退――。

















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