取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて分析する事にした。
『エーテルクラン:闘技場:食堂』
無事開催式を終えた俺は自身の出番が回ってくるまで珈琲を飲みながら待機する事にした。
「ああ……。やっぱり金が足りねぇ……」
財布の中身を確認し溜息を漏らす俺。
前回参加した時も大会中に空いた時間を使ってモンスターを倒しG稼ぎをしてはいたが。
「くそ、今回はちゃんと計画して1ヶ月分の生活費を結構多めに持ってきたのによぅ……」
昨日のデボルグとルーメリアに奢った酒のせいで殆ど金が残っていない。
結局は大会に参加しながら近辺の草原地帯でモンスターを狩って金稼ぎをしなくてはならない。
面倒くせぇ……。
取り敢えず珈琲片手にウインドウを開く俺。
相変わらず過去3回の転生人生で集めたアイテムが所狭しとウインドウを埋め尽くしている。
しかしその殆どが二足三文でしか売れない『強化素材』ばかり。
他の冒険者にトレードすら出来ない仕組みになっているので、結局は俺にとったらアイテム欄を埋めるただのゴミでしか無い。
「せっかくこんなに集まってるんだから、何かに再利用とか出来れば良いんだけどな……」
強化素材として使用するつもりもなければ、強化費用も持っていない。
売っても二足三文にしかならない。
冒険者に高く売りつける事も出来ない。
これを『ゴミ』と呼ばずして何と呼ぶ。
「《ツヴァイハンダー》も結構愛着湧いちまったから買い換えるつもりもねぇしなぁ……。てか金がねえんだっつの」
それなりの大剣を買い、有り余った強化素材で強化していけば『+99』の最大値までは簡単に強化も出来る。
めっちゃ金の掛かる『属性強化』もゼギウスに頼めば他の鍛冶屋に頼むよりも確実に安い費用で済むだろう。
でも結局は金がかなり掛かるし、何より面倒臭い。
この9ヶ月間で俺の『大剣スキル』も6割方はコンプリート出来ている。
今大会でスキル使用を縛らずにガンガン使って行けば、ランキングが上位に行けば行くほど『スキルポイント』も大幅に溜まって行くだろう。
強い相手に使用すれば、それだけ大きなスキルポイントを得られるのだ。
この1ヶ月の闘技大会参加で一気に8割くらいまでコンプリート出来れば儲け物だし。
さらに言えば、本来ならば9ヶ月間で『大剣スキル』が6割もコンプリートするのは異常な速さらしかった。
確かに前世で《片手剣スキル》をコンプリートさせるまでは約5年くらいは掛かった筈だ。
2周目でゼギウスから『二刀流スキル』を伝授された時もコンプリートさせるまでは同じくらいの時間を要したと思う。
で、今、俺の《大剣スキル》は異常な速さで成長を遂げている。
そこでようやく理由が分った俺。
普段全然考えていなかったから気付くのが超遅れたんですが。
スキルポイントの急激な獲得に関係していたのは――この《ツヴァイハンダー》だったのだ。
『強い相手と戦うほど、使用したスキルが所属するカテゴリーに対し、多くのスキルポイントが獲得される』のでは無い。
正確には『装備している武器と敵の強さとの差が大きいほど、それに比例して使用したスキルが所属するカテゴリーに対し、多くのスキルポイントが獲得される』。
だからこそこの《ツヴァイハンダー》とは名ばかりの、中身は最弱の『木の棒(攻撃力1)』でスキルを使用し、相手を撃破すると、異常なくらいに沢山のスキルポイントが獲得出来るという訳。
「そりゃぁ気付かねぇよなぁ……。普通は装備なんて現時点での最高装備を目指す筈だし、わざわざ武器を弱くして強敵に立ち向かう馬鹿はいねぇだろうし……」
図らずも俺は最短でスキルポイントを貯められる方法を身に付けていたと言う事だ。
ふ……。俺のドMさがこんな形で日の目を見る事になるとはな……。
「おねーさん、おかわりくださーい」
隣の席で食器を片付けていたウエイターに珈琲のおかわりを頼む俺。
これ飲んだら待合室で準備しよう。
俺はストローの袋を縮めさせ、水を一滴垂らして遊びながら注文が来るのを待った。
◆◇◆◇
『闘技場:待合室』
大きな待合室のソファーに腰掛ける俺。
「えっと……。今回は『事前準備』は……」
前回は『縛りプレイ』を楽しむ為に色々やったな。
《SPポッド》を使ってSPを空にしたり。
《ドレインバッジ》を使ってSP自動回復不能にしたり。
極め付けには《ツーエッジソード》を使ってダメージホイホイ状態にしたり……。
「……あん時はアルゼインの《光魔法》がやヴぁかったよな……。おお怖……」
ただでさえ俺の『弱点属性』の《光》に《ツーエッジソード》のスキルで倍のダメージなのだ。
流石に通常の5倍ダメージはかなり痛い。
結局あいつはレイさんとほぼ互角で前大会2位にまで登り詰めたんだしな……。
もうあんな奴とは当たりたくにゃいな……。
『わーーー!』という歓声が闘技場から聞こえて来る。
試合が終わったらしい。
さて……。
「次! エントリーNO.030276、カズト!! 前へ!!」
「へーい」
「返事ははっきり言え! カズトっ!!」
「ういー」
「く……! まあいい!! ではこれより――」
なんか前にもこんなやり取りがあったよな……。
てか審判のおっさん、前回と同じ奴か……?
俺は自身の容姿を確認する。
長い髪に何箇所か三つ編みも済ませた。
黒の眼帯もばっちし。
服装も前大会とは違う服に変えたし、大分印象は違うだろう。
俺は《ツヴァイハンダー》を肩に乗せ、闘技場の中央まで躍り出る。
さあ――。
――俺の大剣捌きでもお披露目してやっか。




