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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第六章 追跡者の野望編

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四 提案

感想をお待ちしております。

 「あなた達はどういう繋がりなの?」


 私はアンネリーゼとメアリーに尋ねた。


 「師匠と弟子の関係ですわ。わたくしは魔界にいる頃、この子に魔術を教えていましたの」


 アンネが答える。彼女はヘロヘロになったメアリーをおんぶしている。

 メアリーはヒッヒッと苦しそうに息をしていた。お仕置きという名のコチョコチョがかなり効いたみたいだ。しばらくまともに会話できそうにない。


 「これからどうするの? その子、魔界に返した方がいいんじゃないの?」


 これ以上ここにいても仕方ないだろう。魔女は何人もいらない。また私を襲ってくるかもしれないし。


 「そ、そんなわけには……いかない……わ。私は……お姉さまを……」


 呼吸が整わない内からしゃべり始めるメアリー。彼女はまだ人間界を去るつもりはないらしい。どうやら、この世界にやって来たのには、何か大きな理由があるようだ。私を殺すつもりみたいだけど、なぜ彼女はそんなことをするのだろう。


 「私を狙う理由は何? あなたに何か失礼なことでもしたかしら? もし私が悪いなら謝るわ」

 「と、とぼけるつもりね、柊春華……! 貴様はお姉さまをたぶらかした。私はそれを許さない……」

 

 アンネをたぶらかした? 私が? 言いがかりはやめてほしいものだ。私は何もしていない。彼女が一方的に私と契約を結んできただけだ。悪いのは私ではない。


 「そんなことをした覚えはないわ」

 「ふん。まぁいいわ。次は必ず貴様を……」

 「ダメですわよぉ、メアリー? やはり、まだお仕置きが必要みたいですわね」

 「ひいぃ! お許しください、お姉さまっ!」


 この魔女は何がしたいんだ……。やたらと私を敵視してくるけど、もしかして、アンネに惚れているのかしら。だとしたら、私に嫉妬しているのかもしれないわね。


 岸和田もそうだった。彼女は桃とべったりしている私に嫉妬して、ライバル扱いしてくるし……。私は全くそんなつもりはないというのに。

 

 どうしてこうも面倒なことが多発するのだろう。一方的に恨まれる展開はこりごりだ。私としては、敵ばかり作りたくはないんだけど。


 「早く戻りましょう。皆が待ってるわ。ボウリングの続きがあるでしょ」

 私はいつまでも手洗い場にいるわけにはいかないと主張した。


 「そうですわね。お待たせするのはよくありませんの。そういうわけですし、あなたはもう帰るのですわ、メアリー」

 「そんなのできません! 私は柊春華を仕留め、連れて帰らなくてはならないのです! そうでないとゲートを開いてもらえないのです!」


 メアリーは自力では魔界に戻ることができないと訴えた。


 「ねぇ、待って。連れて帰るってどういうこと? 私をどこへ連れて行く気なの?」

 「そうですわ。それに、ゲートを用意できないあなたをこの世界へ送り込んだのはどなたですの?」

 「そ、それは……」

 

 メアリーは返答を渋る。

 何を隠しているのか。


 「いいから答えるのですわ。でないともう一度コチョコチョですわよ?」


 アンネが脅しにかかる。指をくねくねと動かしながら。


 「人間界の神を名乗る女です……。その女が柊春華を天界へ連れて来いと言うんです。お姉さまを柊春華から取り戻したくて、私は神の命令に従ったのです」

 「神? 神の命令であなたはここへ来たのね?」


 私は納得した。このメアリーという魔女が私を狙うのは、神の命令であるからだった。

 アンネを私に奪われたと思い込んでいる彼女は、神と利害が一致したということだ。私を天界へ連れてゆくことで、彼女はアンネと二人きりになれると考えたのだ。


 「そうよ、神よ。彼女のおかげで私はこの世界へやって来ることができたわ。これは貴様からお姉さまを取り戻す絶好のチャンス。貴様を始末するまで、私は戻るわけにはいかないのよ」


 メアリーは言った。


 「そう言われても……」


 私は困惑した。魔女を相手に戦うのはごめんだ。私には倒せない。

 しかし、アンネがいる限り、メアリーは私に手出しすることはできないだろう。このままでは、何も状況は変わらない。


 「春華への攻撃はわたくしが禁じますわ。それを守らないというのなら、たとえあなたでも、このわたくしは容赦しませんの。命が惜しければ、素直に魔界へ帰るのですわ。ゲートはわたくしが用意しますの」


 アンネはメアリーに魔界へ戻ることを指示した。

 神の命令よりも、敬愛する上司であるアンネの命令の方が、メアリーにとっては重要だろう。


 「し、しかし……。このまま手ぶらで戻ったら、私は神に殺されてしまいます! お姉さまはそれでもいいとおっしゃるのですか?」


 泣き顔でメアリーは言った。どうか見捨てないでくれと訴えている。


 「それはいけませんわ。あなたは私の大切な弟子……いいえ、愛する妹ですわ。失うわけにはいきませんの」

 「お姉さま……! では、柊春華の抹殺許可を……」

 「いいえ、それもダメですわ」

 「じゃあどうしろと……!」


 アンネリーゼにおんぶされたまま、メアリーは喚いていた。この二人、仲が良いのか悪いのか。


 「私にいい考えがあるわよ」

 「いい考え? それは何だ、柊春華!」

 「あなたもこの世界で暮らせばいいじゃない。神の命令なんて無視して、このまま人間界にとどまればいいのよ。そうすれば、あなたの大好きなアンネリーゼお姉さまと一緒に過ごせるでしょ?」

 「な、なるほど……。私は魔界に戻らなくて済むということね……」


 私の提案に納得し始めるメアリー。


 「それはいい考えですわね。わたくしも賛成ですわ」


 アンネも肯定的だった。


 「そうね……。柊春華の抹殺は当分不可能……。お姉さまを魔界へ連れ戻すことも……。これでは私は何もできないまま。それよりはずっとマシ……。ええ、わかったわ。私も人間界にとどまる。お姉さまのそばを離れたくないから」


 メアリーは決断した。


 また面倒なことになってきた。提案したのは私だけど、魔女が増えても困るだけだ。正直うっとおしいんだけど……。


 まぁこのまま私を殺す殺さないで揉めるよりはいいでしょ。


 こうして、アンネリーゼの弟子は神をあっさりと裏切った。

 


 

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