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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
第五章:五月の憂鬱編

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九 苦悩

感想をお待ちしております。

 今日は水曜日だ。この日は一限目だけで講義が終わる。一回生の頃は火曜日がそうだったが、二回生になって時間割が変わった。今期は火曜日は一限から三限まで講義が入っており、夕方からはバイトもある。だが、水曜日は一限終わりでなおかつバイトも入っていない。そのため、午後は完全にフリーとなる。


 二限目以降は暇を持て余している状態である。ならば私は何をするのか。そんなものは決まっている。もちろん勉強だ。優等生の私にはプライドというものがある。上位の成績を維持するためには、復習が欠かせないのだ。


 美波や桃たちは午後も講義がある。だから彼女たちを待つ間、私は休憩をはさみつつ自主学習に取り組むことにしている。この時間を利用して課題やレポートなどを仕上げることもある。


 大学生活の良いところは、勉強時間が確保しやすいという点だと言えるだろう。私のように部活やサークルに所属していない学生は、バイト以外にすることがない。だからこうして勉強に励むのだ。


 私は大学の図書館に来た。静かな環境で落ち着いて勉強をするにはここが最適だ。ここなら、マ〇オ・カートの通信対戦でバカ騒ぎしている奴らもいない。


 参考文献を探したり、暇つぶしの読書をする学生の姿が見受けられる。また、白髪のおじいさんの姿もあった。たまにこうして大学の施設で年配の人を見かけるのだが、彼らはどういう立場の人間なのだろうか。私と同じく学生として入学しているのだろうか。まぁ、老後に大学生活を送るのも悪くない気がする。


 学問に年齢など関係ない。人はいつでも自由に学ぶことが許されているのだ。だから、おじいさんが学生を名乗ることもおかしいことではない。

 

 私も彼らに負けてなどいられない。さて、早速講義の復習でも始めますか……。

 カバンからノートや参考書、筆記用具を取り出して机に並べる。家で勉強するよりも、この場所の方が断然集中できる。むしろ家だと全然できない。ネットやラノベなどの誘惑が多すぎるからだ。

 それに、図書館は他人の目がある。真面目に勉強や読書をしていなければ浮いて目立ってしまう。だから必然的に学習に身が入る。


 「う……。答えの数字がおかしい……」

 私は小声でつぶやいた。

 ミクロ経済学の問題を解いているのだが、微分と二次方程式の計算が上手くいかない。計算のやり方がわからない、というわけではない。出てきた答えの数値がおかしいのである。極値が分数にしかならないのだ。


 どこかで計算を間違えたのだろうか。もう一度やり直してみる。

 だけど、何度やっても答えは変わらない。やっぱりこれで正しいのかもしれない。

 そもそも、極大値と極小値が分数になることは普通に有り得る話だ。でも、普通はこういうテンプレな計算問題って答えが整数になるものじゃないの?


 私の中の変な固定観念が邪魔をしてくる。「答えは整数になるはず」という思い込みが計算式の答えの自信を喪失させる。

 答えが分数だとスッキリしない。「割り切れない」というのが嫌だった。

 こんなどうでもいいことにこだわるのは私らしくないが、今はなぜかやたらと気になってしまう。


 今の私がまさに「割り切れない」気持ちに陥っているせいだろうか。前島の気持ちに答えを出すことなく、逃げることを選んでしまった自分自身に不甲斐なさを感じているからなのかもしれない。そして、バイト先で次に彼女と顔を合わせるのが怖かった。彼女から逃げたいと思ってしまう。


 告白に対するハッキリした答えが出せなかった自分と、スッキリした答えが出せない計算式。これらを重ねてしまうほど、今の私は神経質になっていた。


 こんな憂鬱は初めてだ。誰かの好意を無視するのが、こんなに辛いことだったなんて。

 好意を無視された前島はもっと辛いかもしれない。彼女は私以上に悩んでいるかもしれない。

 彼女は思い切って気持ちを伝えたのに、私はそれに対する答えをごまかしたのだ。

 

 最低だ。本当に私は最低だ。

 前島に「クズ」と言われた今朝の夢が脳内で蘇る。夢であることに変わりはないけれど、私がクズなのは事実だ。


 あああ! バカじゃないの? 何で逃げたのよ私は! あの告白された時の微妙な空気を何とかしなさいよバカ!


 「ううぅ~……」

 私は頭を抱えて机に突っ伏した。図書館で一人、悶絶する。バカみたい。

 前島にどんな顔で会えばいいのだろう。彼女はこんな私をどう思っているのだろう。もう嫌われちゃったかもしれない。


 ワガママだな、私は。普段の自分は「キモオタ滅べ」とか「リア充爆発しろ」とか、人を嫌いまくってるくせに、人から嫌われることに関しては異常に抵抗感を持っている。人を嫌うくせに人から嫌われたくないと願うのは、とても自分勝手ではなかろうか。


 ダメだ。今日は勉強に集中できそうにない。ここは一つ、気分転換になることをしよう。

 私は図書館を出て、行きつけの喫茶店へ向かうことにした。あの店のコーヒーでも飲んでリラックスしよう。


 自主勉を中断し、一人カフェをすることになった。

 弱った心を慰めるためには甘いコーヒーが一番だ。今日はスペシャルミックスで、角砂糖十個とクリームも入れちゃうもんね。


 

 

お読みいただきありがとうございます。

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