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私のキャンパスライフは百合展開を避けられないのか?  作者: 平井淳
最終章

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エピローグ

感想をお待ちしております。

 楽しかった夏休みも終わり、後期の授業が始まった。

 早いもので私の大学生活も折り返し地点を迎えようとしている。


 先日、前期の成績が返ってきたのだが、結果は物凄くよかった。『近代社会経済学』は予想通り満点のS評価だった。


 この調子で後期も頑張ろう。スカラシップ獲得が現実味を帯びてきたといえる。


 自動車の運転免許も夏休み中に取得することができた。おかげで最近は親の車を借りてドライブをするのが新しい趣味になりつつある。休日は友達を乗せてどこかへ出かけるようになった。


 今は昼休み。私は友人たちと学食に来ていた。

 今日の昼食は好物のカレーだ。気合いを入れたい時はいつもこれを注文している。


「いただきます」


 スプーンですくって一口食べる。

 うん、美味しい。この味は何度食べても飽きないわね。


「桃さん? 具合でも悪いんですか?」


 ぐったりとした桃を美波が気遣う。


「お腹痛いよぉ。午後は自主休講ってことでいいかなぁ?」


 わざとらしく腹部を抑える桃。彼女が仮病を使って講義をサボろうとしていることはわかっている。私と同じカレーを注文したが、一瞬でペロリと完食していた。


「ダメ。ちゃんと出席しなさい」


 前期の終盤、やる気を見せた桃はテスト勉強に勤しんだ。その努力が実り、無事に単位をすべて取得することができたのだが、夏休みを挟むとすっかり元の無気力大学生に戻ってしまった。人の性格はそう簡単には変わらないようだ。


「頭も痛くなってきちゃった……。風邪かなぁ?」

「今日はゼミの一発目でしょ。初回から欠席なんて評価最悪よ?」


 うちの学部では二回生の後期からゼミに所属することになっている。私は村松教授のゼミを希望し、無事に採用された。


「春ちゃんと別のゼミなんてヤダもん!」


 村松教授のゼミを希望する学生の数は多く、定員オーバーとなっていた。そのため事前に教授と学生による二者面接が行われたのだが、アピールが足りなかったためか、桃は採用されなかった。


「桃先輩、ドンマイっす」

「きっとそっちのゼミも楽しいですよ」


 城田さんと林さんが桃を励ます。


「わたくしの魔法を使えば、春華と同じゼミに移籍することも可能ですわ。いかがいたします?」


 アンネリーゼが言った。

 あなたは余計なことしないで。


「ホント? お願いアンちゃん!」


 桃が食いつく。


「はいはい。魔法なんてないから現実を見なさい。それより、今日の放課後なんだけど、いつもの喫茶店に行かない? また期間限定メニューが出てるそうよ」


 ややこしくなる前に私は話題を切り替えた。


「あ、行きたいです」


 美波が言う。


「いいですわね。わたくしも行きますわ。久々にレモンスカッシュが飲みたい気分でしたの」

「自分も特に予定ないんで行きます!」

「私もです」

「桃も行くー! チョコバナナパフェ食べたいの!」


 決まりね。桃を連れて行けば岸和田先輩も喜ぶだろう。


 友人たちと喫茶店でおしゃべりをする。

 何気ない日常がどれほど尊いものなのか、今の私は重々承知しているつもりだ。

 

「じゃ、講義が終わったら正門前に集合ね」


 そう言い残し、私はゼミが行われる部屋へ向かうことにした。


「待ってください。春華さん」


 ここで美波に呼び止められた。


「どうしたの?」

「えっと……その……。ちょっとついてきてほしいところがあるんです」

「今から?」

「はい。すぐ終わりますから」


 何だろう? もうすぐ昼休みが終わるというタイミングだというのに、そんなに急ぐことなのかしら。


 私は美波に手を引かれ、学食の外へ出た。


「どこへ行くの?」

「こっちです」


 手を繋いだまま、私たちはキャンパス内を駆けていく。


 やって来たのは無人の講義室だった。

 シーンと静まり返った部屋に私と美波の呼吸だけが響いている。


「こんなところに何の用かしら?」

「はぁ、はぁ……。春華さん……」


 顔を紅潮させ、息を乱す美波。

 彼女がこうなっているのは走ってきたせいではない。


 私はわかっていた。美波が何を求めているのか。


「私……もう我慢できなくて……」


 恥じらいを含みつつ、笑みを浮かべる美波。


「また? 今朝もしたばかりなのに。欲しがりなんだから」


 そう言って私は意地悪に笑ってみせる。


「えへへ……」

「ホント、イケナイ子ね。美波は」


 二人きりの空間で私たちがすること。

 それは唇と唇を重ね合わせることだった。


 私と美波の関係が変わったのは夏休みのことであった。

 いつものメンバーで温泉に行った日の夜、美波は改めて私に内なる想いを伝えてきた。


『私は春華さんのことが好きです……』


 彼女の気持ちは初めて会った時からずっと変わらない。

 今までは友達として過ごしてきたけれど、やはりそれだけでは物足りないのだという。


 今度こそ、私は彼女の告白に応えなければならなかった。


『私も好きよ』


 それが私の出した答えだった。


 こうして私たちは恋人になった。

 女同士で付き合い始めたのである。


 言っておくが、私はレズじゃない。だけど、意中の男性がいるわけでもない。

 男とか女とか、そういう次元の話をしているのではない。私は美波だから好きなのだ。美波だから愛し、愛されたいと願うのだ。


 これが素直な気持ちだった。私は美波を愛している。


 二人が付き合っていることは他の友人たちには知られていない。私たちは秘密の関係を結び、それを楽しんでいる。


 いつかバレるかもしれない。だが、そんなスリリングな感覚がクセになりつつある。


「春華さんっ……。んんっ」


 私は美波の身体を抱き寄せると、彼女の唇に自らの唇を重ねた。


 抱擁を交わしながら、私たちはキスをする。

 この時間が永遠に続けばいいと思った。


 私と美波は元々、一つの存在だった。

 でも、あの事件をきっかけに二人は別々の身体と魂に分かれることになった。


 それは必ずしも私たちにとって悲劇であったとは限らない。

 なぜなら、それぞれが別の肉体と魂を持つことで、今の関係を築くことができたのだから。


「あなただけを愛してるわ。美波」


 私がそう言うと、美波は嬉しそうに笑った。

これにて完結です。

途中、二度の打ち切りがありましたが、どうにか最後まで終わらせることができてよかったと思います。

拙い文章でしたが、お付き合いいただきありがとうございました。

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