十三 恥辱
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「ねぇ、これが何か知ってる?」
私はポケットからスマートフォンを取り出し、レイアさんに見せつける。
「携帯電話……ですよね。それが何か?」
「そう、これは電話よ。でもね、スマホは通話機能だけじゃなくてカメラも付いているわ」
「それも知っています。人間が使う道具に関しては調査済みですから」
「へぇ~、調査ね……。やっぱりあなたって人間じゃなかったんだ」
レイアさんは自身が人ならざる存在であるということをうっかり自白してしまった。
尿意のせいで集中力が落ちてきているのだろう。もっと追及すれば、どんどん口を滑らせそうだ。
「スマホはね、インターネットにも繋がるのよ。あ、インターネットってわかる?」
「……当然です」
馬鹿にするなと言いたげなレイアさん。
「わたくしも最近はインターネットでアニメを観るようになりましたわ」
アンネが横から口を挟む。
「スマホで撮影した写真や動画をインターネット上に公開すれば、世界中の人たちに見てもらうことができるわ。とても便利よね」
「だから何だというのですか?」
「私、今からあなたの動画をカメラで撮ろうと思うの。で、それを色んな人に見てもらうことにするわ」
「素敵ですわね。わたくしがSNSで全力で拡散いたしますわ」
「意味がわかりません……。何のためにそのようなことをするのですか?」
「レイアさんって、すごく美人だから、ネットに上げたらめちゃくちゃ注目されそうだし。たくさん『いいね』もらえるかもしれないわよ」
「どうでもいいです。そんなの興味ありません」
そう言ってレイアさんは私の意見を突っぱねた。ネットでの評判など知ったことではないようだ。
ただただ迷惑そうな顔をしながら私の戯言を聞いている。尿意と戦う彼女はスマホとかネットとか、今はそれどころではない。
「あっ……。ダメ……」
尿意の「波」が来たのだろう。レイアさんの身体がビクッと跳ねた。
「ダメって? 動画は撮っちゃいけないってこと?」
「動画もですけど、今のはそういう意味じゃなくて……」
「じゃあどういう意味なの?」
わかっているのにわかっていないフリをする私。
我ながら悪魔過ぎる。
「お願い……します……」
「はい?」
レイアさんは涙目になりながら、消えそうな声で呟いた。
「術を解くので、これを外してください……」
「友達を返してくれるのね?」
「そうです……。ですから、早く……」
「いいえ。術を解く方が先よ」
「無理……です……」
「どうして?」
「無理なものは無理です……! ちゃんと約束は守りますから、どうか解放してください。でないと、その……出ちゃいそうなので……」
「出ちゃいそうって、何が?」
「くっ……!」
いよいよ欲求を隠すことも難しくなってきたようね。
半泣きのレイアさんは顔を真っ赤にさせて、歯を食いしばる。
ガクガクと太ももを震わせ、背中を丸めたまま苦しそうに解放を求める。
「約束できる?」
「はいっ……」
「証拠を残すためにスマホで動画撮っておくわね。はい、カメラに向かって誓いなさい」
私はスマホでレイアさんの撮影を始めた。
鎖で拘束された美女の映像。あやしいサイトで配信されていそうな動画になってしまう。
「術を解くと約束します……。必ず、後で、絶対……」
「はい。言ったわね。今、確かに言ったわよね」
しっかりと記録した。これでもう言い逃れはできない。
だが、動画を撮ったところで何になるというのか。相手は人間ではない。約束を無視して逃げ出す恐れもある。
実はというと、私は最初から「証拠映像」を撮影する気などなかった。これはカメラを回すための口実でしかなかったのだ。
本当に撮りたかったもの。それは彼女を脅すための「恥ずかしい映像」だった。
「……もういいでしょう? お願いします」
「さっき出ちゃいそうって言ってたけど、何が出そうなの?」
「そ、それは……。ですから、その……」
「はい、大きな声ではっきり言いましょうか」
「くぅぅぅぅぅぅ……!」
「どうしたの? 言えないの?」
「うううう~!」
このくらいでいいか。
さすがにやり過ぎたかもしれない。
恥ずかしい映像は十分に撮れた。カメラの前で情けない声を上げる美女の動画。これならば、今後の交渉にも活用できるはずだ。
レイアさんはかなりヤバそうなので、尿意が消える水晶玉を触らせてあげよう。
「お待ちくださいな、春華」
ここでアンネが言った。
「どうしたの?」
「あと一つだけ、彼女にやっておきたいことがありますの」
「そう。じゃあ、すぐやっちゃって」
やり残したことがあるというので、私はそれを許可した。
魔女は「ふふふ」と笑って椅子から立ち上がる。
「な、何をするつもりですか……」
怯えた目でアンネを見るレイアさん。
「最後にわたくしの一番好きな技を受けていただきますわ」
「ひっ……」
拷問はするなと言ったが、アンネがどうしてもやりたそうなので、何も言わないでおくことにした。
どうせこれで最後だもの。派手にやっちゃいましょう。
「待ってください……。これ以上は……本当に……」
「電撃魔法で昇天……。ゲームセットですの」
「ああああああああああっ!」
稲妻がレイアさんを襲う。
死なない程度の電流が激しい刺激となって彼女の全身を震わせた。
「美しいですわ……」
うっとりとした顔を浮かべるアンネ。
ようやく満足したみたいだ。
「大丈夫ですか?」
「あっ……ああ……」
じょわぁぁぁ……。
レイアさんを中心にして水溜まりが床に広がる。
彼女はずっと我慢を続けていたが、電撃が「とどめの一撃」になってしまった。
「くっ……! 殺してください……。もう、死なせてくださいぃ……」
耐え難い恥辱を味わうことになり、泣き崩れるレイアさん。
私たちの勝利である。
「あ、今の全部動画でバッチリ撮ってあるから」
鬼畜以外の何者でもないわね、今の私。
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