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64、飛行の物資スライムを持つタームさん

 ギィイッと、嫌な音を立てて、扉が開いた。


(お爺さんじゃないよね)


 オバサンは、ジジイと叫んでいたけど、扉を開けたのは、鮮やかなオレンジ色の髪の中年の男性。オバサンよりも若く見える。


「あぁ、海辺の村長、助けに来てくれたのか」


(お爺さんね)


 オレンジ色の髪の男性の声は、ガラガラ声で老人っぽい。それに、すっごくオドオドしてる。



「はぁ、何だい? 家の中から悪臭がするじゃないか。腐った食べ物を放置するんじゃないよ! この集落は、変な虫が多いんだからね」


 綺麗好きなオバサンは、お説教モードに突入してる。もともと機嫌が悪かったからかな。


「ゴミ捨て場に持っていくのが、恐ろしいんだよ。大きなスライムが出てくるかもしれないからな」


「あの池をゴミ捨て場にしてるのかい? だから、妙なスライムが集落内に棲みつくんじゃないか。いつの間にか、池の水も増えているようだしね。飲み水のための池じゃなかったのかい」


「飲み水は、市場のある広場で汲んでいる。池の水は、洗濯に使っていたが、もう長い間、使えなくなっている」


「長い間、洗濯してないのかい? はぁ、よく平気な顔をしていられるね。で? 大きなスライムを見に行ったのは、誰なんだい? ジジイが行くわけないからね」


「あぁ、向かいの兄さんだよ。半年ほど前に、大陸から来た冒険者らしい。飛行魔法を使う物質スライム持ちだ。案内するよ」


(ヨボヨボだよ)



 オレンジ色の髪のオジサンは、ヨタヨタと歩き始めた。向かいだと言っていたけど、その家の前には他の家はない。草むらをかき分けて進んだ先に、いくつかの小屋が並ぶ場所があった。


 オジサンの姿を見た人達は、何人か近寄ってきた。いや、オバサンを見たからかも。



「海辺の村長、その茶髪の青年だ。名前は何だったかな?」


 オレンジ色の髪のオジサンに指差された人は、オバサンに軽く会釈をした。


「何だ、タームじゃないか。久しぶりだね」


(あっ、そっか。知り合いなのね)


 物質スライム持ちだと言っていたから、海辺の集落に滞在していたことがあるはず。オバサンの記憶力って、すごいな。



「海辺の村長、お久しぶりです。覚えていてもらえて、嬉しいです。一緒にいる子は、今、預かっている子ですか?」


「あぁ、ジュリだよ。もうすぐ9歳になる」


「へぇ、ジュリさんか。かわいい名前ですね。タームです。僕の物質スライムは、飛行の能力があるんですよ」


(自己紹介しなさいってこと?)


 私は、ペコリと頭を下げておいた。



「タームは、相変わらずだね。他人の物質スライムの詮索をするんじゃないよ。ジュリの物質スライムは出店だ」


「出店? 店を出すってことですか。それなら、軍事利用されることもないですね。僕は、ちょっと調子に乗って失敗したけど」


「あぁ、そうだよ。タームは、物質スライムを失って、戻ってきたのかい」


「はい。飛んでいたら、赤の王国に、黒い爆弾で撃ち落とされてしまいましてね。気づいたら、この島に戻っていました」


(赤の王国……)


「黄の王国の仕事かい?」


「いえ、緑の帝国の依頼ですね。赤の王国には、英雄カールが戻ってきたから、王城の門を破るのが難しくなったらしくて」


(漁師のお兄さん!)


「ふぅん、それで、赤の王国の城に飛行で入ろうとしたわけだね。ターム、自分の頭で、善悪を考えな! 物質スライムを戦乱の道具にするんじゃないよ」


「すみません……」


 タームさんは、ガクリとうなだれている。でも、イーグルさん達もそうだけど、大陸の戦乱が激化しているせいなのかもしれない。



「それで? 池の奥に、何が居たって? タームの物質スライムは、池を飛行できるまで回復したのかい」


「大きなスライムですよ。僕の物質スライムは、この集落の中くらいなら、風のない日は飛行できます」


 タームさんがそう言った直後、髪の毛で前が見えなくなるほどの突風が吹いた。ここは、風の通り道なのかも。



「そうかい。じゃあ、池の奥を調べに行こうか」


 オバサンがそう言うと、タームさんはポカンと口を開けた。


「村長、今の風を感じましたよね? この集落内は、突風が吹くんです。こんな中を飛行したら、どこかに叩きつけられてしまう」


「タームの物質スライムには期待してないよ。ジュリ、キララなら大丈夫だね? ちょっと池の中も調べてみたいけど」


「ん? うん。それなら、小舟がいい?」


「そうだね。タームは案内について来な。ジジイは行くのかい?」


 オバサンにそう尋ねられて、オレンジ色の髪のオジサンは、首がちぎれそうなほど、イヤイヤをしていた。



 ◇◇◇



 池まではオバサンが先導して、何かを調べてながら歩いていった。イヤイヤをしていたオジサンも、なぜかついて来ている。


「ジュリ、頼むよ」


「うん、キララ、オープン!」


 大きな声で呼び出すと、キララは小舟の姿で現れた。私がまず乗り込んで待っていると、オバサンはタームさんを連れて、小舟に乗った。


「あれ? 誰が押すんだ?」


 タームさんが、オレンジ色のオジサンを見てる。また、オジサンは、思いっきり首を横に振ってる。



「押さなくて大丈夫だよ。オレンジ色の髪の人は、乗らないの?」


「あぁ、ここで待っているよ。泳げないからな」


(なるほど)


「じゃあ、3人で見てくるね」


 私がそう言うと、キララの小舟はフワリと浮かび、池の上に移動した。そして、水の上をゆっくりと奥へと進む。



「へぇ、ジュリさんの物質スライムはすごいな。出店って言うから、何をするのかと思ったけど、いろいろな場所に移動する能力もあるんだな」


「うん、キララはすごいの」


 私は、8歳の子供らしく返答しておいた。茶髪のタームさんを疑っているわけじゃないけど、オバサンが、私の物質スライムは出店だとしか言わなかったもんね。


 オバサンは、大きな池に手をつけて、淡い光を纏っている。何かの魔法を使っているみたい。



「えっ? 草むらの中も進むのか?」


「うん、キララはすごい子だからね」


 キララは、透過魔法を使っているみたい。そして、ふわっと浮遊感を感じた後、洞穴の前に到着していた。



「ジュリ、池の水は、完全にゴミが消えていて、スライムの栄養源に分解されているよ。ちょっと特殊なスライムがいるみたいだね」


 オバサンは、腰の短剣に触れ、気持ちを切り替えているみたい。まさか、悪いスライムがいるのかな。


「キララ、一旦、クローズするね」


 私達は、洞穴へと、入っていった。



皆様、いつもありがとうございます。

火曜日から収益化のプログラムが始まりましたが、私は参加していません。

予想ほど大きな広告ではなかったですが、✖️で消せるとはいえ、消しても毎話出てくることが邪魔だという意見を見たので、やはり参加しないことに決めました。

広告の表示方法が変われば参加を検討するかもしれませんが、その際は、後書きや活動報告でお知らせします。

なので、よかったら過去作も安心して覗いてみてください。読書の秋ですし、完結作もいくつかあります。どれも追加広告は出てきませんよー(๑˃̵ᴗ˂̵)


月曜日は、お休み。

次回は、11月4日(火)に更新予定です。

よろしくお願いします。

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