62、襲撃の情報整理とキララの宣言
私が、前世の記憶があることを暴露したから、イーグルさん達だけでなく、ロックスさんも驚いた顔をしている。
「ジュリ、確かにその考察は、当たっていると思うよ。黄の王国の人間は、同族意識が強すぎるからね。自分達さえよければ、他国のことには無関心だ」
オバサンは、吐き捨てるように、そう話した。黄の王国の王族の身勝手を、恥ずかしいと思っているみたい。ちょっと、話し方を失敗したかな。オバサンは黄の王国の王族だから、私はもっと配慮しなきゃいけなかった。
『人間は、やはりそう考えるんだね。だけどダークスライムは、青の王国を恨んでいるわけじゃない。ダークスライムが滅ぼしたい相手は、スライムだからね』
キララがそう話すと、イーグルさん達は、絶望的な表情に変わった。黄の王国が間違えているから、かな。
「俺達は、何をやってるんだ……」
イーグルさんがそう呟くと、ロックスさんが彼の頭をバチンと叩いた。
「おまえらは、バカなことをやってんだよ! 青い人化するスライムと、どういう協力をしてるんだ?」
「いや、協力というか……」
イーグルさんは、また口を閉じてしまった。おそらく口止めされてるんだ。約束は守るのね。
青い人化するスライムが、アルくんや私を見張っていたのは、大陸のスライムから守るためなのかもしれない。
たぶん、他国の人化するスライム達と協力しているように見せかけていたのだと思う。じゃないと、一緒にこの島に来る前に、他国のスライムに殺されるよね。
青いスライムにとっても、ダークスライムは敵だと思う。でも、青いスライムは、青の王国の王族の血を引くアルくんを害するつもりはないのだと思う。もし、そういう悪意があれば、キングパープルさんが生かすわけがない。
「ちょっと整理させてください。頭がこんがらがってきた。俺は、この家にいるジュリちゃんの友達の素性を知っている。襲撃してくる大陸のスライム達も知っていて、黄の王国の王族は知らないってことですか」
ロックスさんは、つらそうな表情で、オバサンにそう尋ねた。だけど、今の彼の質問で、イーグルさんは、アルくんが青の王国の王族だとわかったみたい。確信がなかっただけかもしれないけど。
「ロックス、その質問は、イーグル達に事実を教えたいということだね。まぁ、隠し事をしていると、話が複雑になるけどね」
「あ、いや、すみません……」
シーンとしちゃった。皆、それぞれに、いろんな感情が頭の中でごちゃごちゃになっているんだね。
『ロックス、イーグル、ふたりに言っておくことがある』
キララは、ちょっと怖い顔をしてる。
「キララ、ジュリちゃん、いろいろとごめんな」
ロックスさんはそう謝ってくれたけど、キララも私も、そんなことは望んでない。
『まずは、話が複雑になっているから整理するよ。ダークスライムを生み出したのは、青の王国の人間の悪しき心だと推測されているが、それが正しいかはわからない。ダークスライムを討とうとした青の王国が討伐を失敗し、飲み込まれたことで巨大化した。これは事実だ』
キララは、そこまで話すと、二人の反応を見てる。イーグルさんが連れて来たオーロンさんとナイツさんは、暗い表情をしていて、話を聞く余裕がないみたいだけど、ロックスさんとイーグルさんは、軽く頷いた。
『ダークスライムは、何も考えずに襲っているわけじゃない。人間を襲う理由は、仲間を増やすためだ。ダークスライムに襲われた人間は、髪が真っ黒になり、ダークスライム化が始まるだろう? 愚かな人間達は、それを黒い爆弾として兵器扱いしているけどね』
4人とも、驚いた顔をしてる。仲間を増やすためだなんて、考えたことなかったのね。
『ダークスライムは、スライムを襲うと喰うんだよ。大陸の人化するスライムは、今のところはまだ、ダークスライムよりも強いみたいだ。普通のスライムは負けて捕食されているけどね。大陸の人化するスライムが、青の王国の王族を滅ぼそうとするのは、青の王国の王族の血を引く人間がダークスライム化すると、より強いダークスライムが生み出されると考えているからなんだよ』
「えっ? ということは、大陸の人化するスライムは、自分達の脅威になるからという理由で、青の王国の王族の人間を、殺そうとしているのか?」
イーグルさんが即座に反応した。
『そういうことだよ。一方で、大陸の人間達は、領土を広げようと戦乱を始めた。人間達は、青の王国のせいでダークスライムが生まれたという恨みを持っている。だが、人間の悪しき心が生み出した怪物なら、ダークスライムの発生は、人間同士の争いや醜い心が元凶だよ』
「マジか……うー、確かに、青い髪の人間は、大陸では差別を受けているな。俺より少し上の世代は、特に差別意識が強い」
大陸の人化するスライム達は、自分達が生き残るために、アルくんを殺そうとしてる。大陸の人間達は、恨みから青い髪の人間を差別したり、黄の王国の王族は、ダークスライムを大陸から追い出すために、アルくんを利用しようとしてるのね。
これではアルくんは、大陸には行けない。人化するスライムには命を狙われるし、人間からは差別を受ける。安全なはずの黄の王国に行くと、捕まえようとして、襲撃されるよね。
『話を戻すよ。ボクは、ロックスとイーグルに言っておくことがある』
キララが話し始めると、ふたりは同時に頷いた。
『ボク達は、大陸を正常化する。それができないなら、スライム神は大陸を消し去ると思う。この世界は、人間の世界ではない。スライムが統べる世界なんだ』
キララが言うボク達って、オバサンとアルくんと私の物質スライムってことかな。スライム神の洞穴で、私達が別の国の王族だって、わかったもんね。
『キミ達が生き残りたいなら、ボク達の邪魔をしないで欲しい。あと二つの色が集まれば、ボク達は、大陸へ行く』
(えっ? 初耳だよ?)
私が慌ててると、キララは私の方にチラッと視線を移して、テヘペロをした。ちょ、イケメンさんの真似だよね?
「邪魔はしません。むしろ、手伝いたいです!」
ロックスさんは、真っ直ぐに私を見てそう言ったけど、ちょっと待って。私だって、訳がわからないんだからね!
『ジュリちゃんは、二つの物質スライムを与えられているんだ。ボクの後輩は、すべてのスライムの能力を借りるチカラがある。あと二つの色を集めたら、ネイルも人型のロボットになれるはずだからね。ただ、その二つがなかなか見つからないんだよ』




