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57、大型船が積んできた黄の王国の名物

 翌朝、私は、スライムだらけのベッドで目が覚めた。しかも、ちゃんと布団の中に入っている。


(あれ? いつ寝たんだっけ?)


 ベッドから起き上がり、服を着替えて、あくびをしながら私室から出ていくと、部屋の前には、人型のアンドロイドのようなキララが居た。



『ジュリちゃん、おはよう』


「キララ、おはよう。あっ、そのままだったね、ごめん」


『大丈夫だよ。ボクの成長は、ほぼ終わったと思うよ』


「そのままがいいの? ちょっと疲れた顔をしてるよ」


 そう指摘すると、キララはパッと顔を隠した。やっぱり疲れてるのね。でも、まだオープンしたままで居たいという気持ちが伝わってくる。


『ボクの一部は、ジュリちゃんとくっついてるから、大丈夫だよ』


「あっ、銀色の指輪ね」


『うん。これから海辺のスライム達が来るんだ。昨夜の件で、情報共有するんだって』


(だから、キララは休めないのね)


「そっか、わかった。じゃあ、私は早く朝ごはんを食べなきゃ。部屋にいるスライム達は、何を食べるかな? アルくんの頭に乗っていた子にも、お礼をしなきゃね」


『スライム達のことは、気にしなくていいよ。今朝の朝ごはんは、黄の王国の名物らしいよ』


「昨夜の大型船の積み荷かな? 村長さんの懐かしい味なのかも。楽しみ〜」




「ジュリ、おはよう。今朝の朝ごはんは、黄の王国の名物だよ。この島にはないからね。早く顔を洗ってきな」


「おはよう。わかったの」


(オバサン、嬉しそう)


 私が顔を洗って戻ってくると、眠そうな顔をしたアルくんがいた。頭には、赤いしずくのスライムが乗っているから、髪色は紫色に見える。


「アルくん、おはよう。眠そうだね」


「あぁ、おはよう。昨夜は、ほとんど眠れなかったんだ。キララが、ずっと隠してくれてたんだけどね」


(無理もないよね)


 アルくんを狙って、大陸から人化したスライムが来ていたはずだから、大型船が小島を離れるまでは寝てられないと思う。


「そっか。キララの作戦は、うまくいったのかな。そういえば、イケメンさんは居ないね」


「彼は、明け方まで見張りをしてくれていたから、寝てるんじゃないかな。本当に申し訳ないよ」


 なんだか、アルくんの元気がない。自分を責めているのかもしれない。



「アル、何をボーッとしてるんだい? 朝ごはんにするよ。顔を洗ってきな」


「はい。ん? 何ですか、この不思議な物は……」


「黄の王国の名物だよ。アイテムボックス持ちの人が、持ってきてくれたんだ。麦粉を使った甘い焼き菓子だね。クリームは、切ってから乗せるよ」


(バームクーヘン?)


 真ん中に穴が空いているから、大きな丸いバームクーヘンに見える。オバサンは、それを切り分けて、上から黄色いクリームを思いっきりかけてる。


 アルくんは、お腹がクゥ〜っと鳴って、慌てて顔を洗いに行った。



「アルが戻ってきたら、いただこうか。サラダも、黄の王国から持ってきたものだよ」


(黄色いポテトサラダ?)


「お待たせしました! いただきます」


 アルくんは戻ってくると、一番最初にフォークを握ってる。ずっと起きていたから、お腹がぺこぺこなのね。



 私は、バームクーヘンみたいなものから食べてみた。イメージとは違って、ほとんど甘さは感じない。オバサンが思いっきりかけたクリームは、栗のような味がする。あー、これって、モンブランっぽいかも。クリームはあっさりとした甘さだから、朝食にもいいと思う。


 サラダを食べてみると、ポテサラではなく、カボチャサラダみたいな感じ。わりと甘いから、こっちの方がスイーツっぽい。



「不思議な食べ物ですね。甘いから疲れが吹き飛びますね。これは、パンですか?」


「特に名前はないんだよ。この何重にも重なっている焼き方は、特別な道具を使って、長い時間をかけて焼くんだ。私の家族は、丸い焼き菓子って呼んでいたけどね」


「へぇ、職人にしか作れないんですね。このサラダも甘いけど、この野菜が甘いのかな」


「あぁ、この島にはない甘い芋だよ。黄の王国では、パンに挟んで売っていることが多いね」


(甘いサラダパン?)


 オバサンは、懐かしそうな顔をして食べている。あまり手に入らない物なのかな。ここには、もう2年以上いるけど、初めてテーブルに並んだもんね。



「アル、ジュリ、朝ごはんが終わっても、今日はここに居ておくれ。まだ、見張りが残っている可能性がある。もうすぐ海辺のスライムが来るからね」


 オバサンの表情は、一気に険しくなった。キララの作戦は、失敗したのかな。イケメンさんがここに居ないのは、外で何かをしているのかもしれない。彼は、スライム神に次ぐ存在だもんね。



『ジュリちゃん、ネイルの塗り直しをした?』


(まだ大丈夫だよ?)


 昨日、お風呂場でネイルを使った後、またベースコートの塗り直しをした。何が起こるかわからないから、両手の小指の爪は、銀ラメとピンクを塗ってある。まぁ、これは、いつもの外出セットだけどね。


『取れてるよ? 常時発動してたのかも』


(あっ、ほんとだ)


 キララの指摘で、小指を見てみると、ベースコートだけになっていた。




 部屋に戻って、ネイルの塗り直しをしていると、海辺のスライム達が、オバサンの家にやってきた。部屋の床を埋め尽くしている泉のスライム達が、ギクッとしたみたい。


『どうしよう。海辺のスライムが来ちゃったよ』


「大丈夫だよ。私が泉に水を汲みに行くときに、みんなを泉に送っていくよ。まだ眠い子は、寝てていいよ」


 そう言うと、スライム達は安心したみたい。海辺のスライムのことがコワイのね。あっ、そっか。スライムは序列が厳しいとか言ってたっけ。




「ジュリも、そこに座っておくれ」


 食堂に戻ると、海辺の人化したスライム達が5人来てたけど、なんだか様子がおかしい。すごく緊張しているみたい。


 私は、アルくんの隣に座った。アルくんも、なんだか落ち着かない感じ。



『揃ったね。昨夜から今朝に関する情報の共有を始めよう』


(ん? キララが司会をするの?)


 人型のアンドロイドのようなキララがそう話し始めると、海辺のスライム達は、サッと、敬意を表するようにひざまずいた。すぐに立ち上がったけど。


(キララに、ひざまずいた?)


 私がキョロキョロしていたからか、キララは、クスッと笑ったように見えた。


『まずは結論から話すね。作戦は成功だ。キングシルバーも密かに協力してくれたから、奴らは、この世界に無数にある小島を探し回っているよ』



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