53、水玉模様のスライム
「ジュリ、一体、何をしたんだい?」
(ひゃっ!)
こっそりと外に出たら、オバサンと鉢合わせしてしまった。ワンピースが泥だらけだもんね。
「あっ、あはは。泉でスライム達と飛び跳ね遊びをしてたら、泥が飛び跳ねちゃったというか……ごめんなさい」
「頭だよ、頭!」
「ん? 頭?」
頭に触れてみると、ねちゃ〜っとしていた。
(何かしたっけ?)
『あーあ、バレちゃった〜』
(この声は……)
「水玉模様のスライムさん?」
そう尋ねると、頭の上に何かが乗った気配を感じた。もう一度、頭を触ってみると、ポヨンとしたスライムが乗っていることがわかった。
「ちょっと、ジュリ! そのスライムは、一体どうしたんだい? 今、ジュリの頭の上で、ダランと溶けていたから、ジュリの髪色が水色に見えたよ」
「そうなの? 泉に生息してる子だよ。変異種なんだって。あと何体か居たけど?」
水玉模様のスライムは、ポヨンと跳ねると、私の腕に乗ってきた。そして、ねちょ〜っと溶けて見せた。
『アタイ、ジュリちゃんの部屋まで、バレないように行こうと思ったのに、村長に見つかっちゃった』
スライムの念話は、ベースコートを塗ってないオバサンには聞こえないみたい。だけど、オバサンの物質スライムがオバサンに教えてるから、少し間を置いてから反応がある。
「ジュリ、そのスライムを使えば、大型船のたびに逃げ回らなくてもいいんじゃないかい? 大陸には、似た髪色が集まる小国があるからね。この島の、いろいろな髪色が集まる集落にも、水色の髪は何人かいたはずだ」
「でも、髪に見えるの?」
水玉模様のスライムを頭に乗せると、ねちょ〜っと溶けてきた。しばらくすると全く重さを感じなくなる。
「近くで見ると、ねっとりした粘液が付いているとわかるが、少し離れると気づかないよ。アルの分もあるなら、協力してもらえないかね?」
オバサンの声は、スライムは理解してるよね。
『アルって誰? ジュリちゃんの友達?』
「うん、アルくんは、私の友達だよ。村長さんの家でアルくんも一緒に住んでるよ」
『ふぅん、海辺のスライムが、他の子を入れてくれるかなー? ジュリちゃんの部屋には、小川の赤ん坊しか入っちゃダメなんだよ』
「泉のスライムさんは、もう入ってるじゃない」
『ジュリちゃんの部屋は入ってないよー。アタイ、ジュリちゃんと一緒に寝たいのに〜。赤ん坊じゃなくなったから、ダメって言われたよー』
「あっ、私が6歳のときに部屋に遊びに来てくれてた子が、こんなに成長したのね」
『うん、そうだよー。アタイよりもっと大きな子も居るよー。ジュリちゃんと遊ぶと成長が早いって、キングパープルが言ってたー』
「へぇ、そうなんだ。遊ぶと運動するから?」
『わかんないけど、ジュリちゃんの部屋で一緒に寝てたスライムの中には、もう人化できる子もいるよー』
「ふぅん。人化できるスライムって、大人なんだよね?」
『うん、そうだよ。アタイは人化できないけど、変形できるから大人だと思うよー』
「へぇ、すごいね。あっ、大人なら、色を分けてもらえないかな? 私、たくさんの色を集めてるの」
『体液を集めてるんだよね。残念だけど、アタイは、そこまで大人じゃないから、分泌できないよ。まだ子供を作る能力は無いんだー。あっ、人化できるようになった子なら、体液を渡せると思うよー』
(その体液って……)
前世の私の知識が変なことを考えてしまうけど、きっとそういう意味の体液じゃないよね。スライムの生態って全然わからないけど。
「ジュリ、今夜は泉から友達を連れて来ていいよ。今夜、大型船が小島に着くからね。ジュリやアルが眠っている時間に、海岸に大勢の人間が来る。どうやって二人を隠そうかと悩んでいたんだけどさ」
オバサンは、少し焦っているみたい。もう日が暮れるからかな。
「わかったよ。じゃあ、水玉模様の子たちを迎えに行こうかな。アルくんも、もうすぐ帰ってくるよね?」
「あぁ、さっき、イケメンが迎えに行ったよ。小島へ渡る人間が、海辺の集落に集まってくるからね」
そういえば、大型船が来るたびに、島から出ていく人もいるし、大型船が積んでくる物を買いに行く人もいる。
「じゃあ、行ってくるよ。キララ、オープン」
キララは、カゴの形で現れた。
「すぐに帰ってくるんだよ? 気の早い人間は、もう海岸に来てるからね」
「はーい、わかったの」
私は、頭に水玉模様のスライムを乗せたまま、キララのカゴに触れた。
◇◇◇
『あれ? ジュリちゃん、忘れ物? もうすぐ暗くなるから危ないよ』
泉の水色のスライム達が、私が泉に近寄らないように、壁を作った。みんな、優しいね。
「あのね、今夜、大型船が来るから、私の部屋に遊びに来たいお友達を連れて来ていいって、村長さんが言ったの」
『小川のスライムじゃなくて、泉のスライムでもいいの?』
「うん、今夜はいいって言ってたよ。それから、アルくんの髪色も隠したいから、この子みたいに、とろ〜りと出来る子がいたら、来て欲しいな」
頭に乗っている水玉模様のスライムも、たぶん念話で話してるみたいだけど、私からも一応お願いをしておいた。
『ジュリちゃん、キララが乗っていいって言ってるけど、ジュリちゃんの部屋に遊びに行きたい子は、カゴに入ってもいいの?』
「うん、キララが運んでくれるよ。海岸に人間が増えてきたから、ちょっと急ぐ方がいいみたい」
私がそう言うと、まるで玉入れ競争が始まったみたいに、キララのカゴにどんどんスライム達が、飛び込んでくる。勢いがありすぎて、他の子に当たってカゴから飛び出しちゃって、焦ってる子もいる。
(ふふっ、かわいい)
『ジュリちゃん、そろそろ戻るよ』
(うん、わかった)
私はキララに触れてなかったけど、カゴに入ったスライム達と一緒に、転移魔法の光に包まれた。
◇◇◇
「ただいまなの〜」
(あれ?)
私は、アルくん達が帰ってきて手を洗っているときに、いつもの着地点に戻ってきた。だけど、アルくんもイケメンさんも、驚いた顔をしてる。髪色が違うからかな。
「この髪の色は、水玉模様のスライムだよ」
「ジュリちゃん、何があったんだ? 服が泥だらけじゃないか」
(あっ、そっちか)
アルくんは、すごく心配そうに、私の周りをぐるっと回ってる。尻もちをついたから、後ろは特にひどいはず。
「アル、心配しなくて大丈夫だよ〜。昨日は雨だったから、すぐに泥だらけになっちゃうんだよね〜」
イケメンさんには、バレてるみたい。




