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49、ジュリ、討議スイッチがはいる

『ジュリちゃんは、大陸で生まれて、この島で育った。どこの国の王族かなんて関係ない。この島に住むすべての人間の王女様だよ!』


 銀色のボディスーツを着たような人型アンドロイドの姿をしたキララは、赤の村長さんの問いかけを遮って、ビシッと強い口調で伝えた。念話だから、より一層キララの怒りが伝わるみたい。彼は、さらに滝のような汗を流している。



「あ、あの……えー……」


 彼は何か喋ろうとしているけど、声にはならないみたい。オバサンもキララの姿に驚いているから、私が話すしかないかな。



「赤の村長さん、白い髪の子は、異世界からの転生者の証だそうです。赤の王国では、呪われた子だとして殺すみたいだし、緑の帝国は、軍事利用するという話を聞きました」


「あ、あぁ、そうだ。転生者だから前世の記憶を稀に持っていることがある。だから、悪しき存在だと信じられてきた。青の王国が、ダークスライムによって滅んだのは、白い髪を持つ国王の強引なやり方のせいだ。白い髪は、青の王国の最後の王の生まれ変わりだから、排除せねばならないと……」


「誰が、いつから、そんなことを言い出したのですか」


「もう20年以上前のことだから、ワシには誰が言い出したのかわからない。だが、王家もそれを守っていた。赤の王国の王家の血を引く子は、三人に一人の割合で、髪が白く生まれるらしい。黄の王国も同じだと聞いた。排除しないと、青の王国のように滅びに向かうと信じられている」


「王族の子ばかりが、白い髪なのですか」


「いや、主要な役目を持つ者の子にも、白い髪は増えていった。一般の庶民でも、珍しいことではない。だから、毎日のように、どこかで赤ん坊が殺されている。それほど、青の王国の最後の王の呪いが強いということだ!」


(バカじゃないの?)


 転生者をそれほど増やしていたのは、たぶんスライム神よね。凝り固まったこの世界の人間を変えようと、優しい神様は必死だったのだと思う。


 それを人間は排除した。自ら滅びに向かおうとしている。この世界の覇者が人間だと、勘違いしてるのね。



「赤の村長さん、物質スライムを持つ貴方も、その噂に踊らされていたのですか。貴方の物質スライムは、何も教えてくれないの?」


「えっ、あ、ワシの物質スライムは、ただの剣だから、その……」


「思念サーチができるほど高い能力がある物質スライムですよね? その声を無視していたの? それって、あまりにも傲慢じゃないですか。この世界はスライムが統べる世界だと気づいてないの?」


「それは、この島の中だけのことだろう? 大陸は違う。人間が住む世界だ! それなのに青の王国がダークスライムを生み出した。大陸ではスライムは、もはや、邪悪な魔物なのだ」


(必死に言い訳してる)


 彼のプライドの問題かもしれない。でも何もわかってない。だけど、明かしてはいけない秘密もある。スライム神のことは言えないけど、この人の考えを改めさせないと、この島でも人間同士の戦乱が起こる。



「赤の村長さん、今、大陸で起こっている戦乱の原因は何ですか」


「へ? あ、あぁ、それは、緑の帝国が領土を広げようとして、スライムを使った奇妙な武器を製造したり、ダークスライムを赤の王国に放り込んでくるからだ」


「ダークスライムを兵器利用しているのは、赤の王国じゃないんですか? 黒い髪の人間を捕まえて、黒い爆弾を作っているのでしょう?」


「あれは、緑の帝国がやり始めたことだ!」


「人間を爆弾にするって、正常な精神を持つ人間が考えることですか? 身近な人の髪が黒く染まったとしても、貴方は平気で爆弾にするのですか」


「えっ……いや……」


 そんなことは考えたこともなかった、という顔ね。ロックスさんやイーグルさんと出会ってなかったら、私も他人事だったかもしれない。


「この島には、ダークスライムに襲われて、髪が黒く変色した人が大勢いますよね? 島で浄化中の人は、門番にもいたようですが」


「あ、あぁ、そうだな」


「ダークスライムに襲われた人間は、徐々にダークスライム化するから、黒い爆弾として兵器扱いしてるんですよね? まだ人間の感覚が残っている状態じゃないと、兵器にできないから」


「……そうだな」


 彼は、次第に私の顔も見なくなって、うな垂れてきた。やっと理解したのかな。でも、もう一息ね。ここで同じことを言っても反発心が生まれるだけだから、角度を変えなきゃ。



「赤の村長さん、ダークスライムに襲われたスライムは、どうなるんですか」


「ん? スライム? 飲み込まれて同化するんじゃないか?」


「スライムは、ダークスライムに襲われると、食べられてしまうということですか」


「あぁ、スライムは、弱いスライムを餌にすることも少なくないからな」


(いい感じに誘導できた!)


 私はニヤニヤしないように気をつけて、口を開く。



「それって、おかしくないですか」


「は? スライムが共喰いすることを知らないのか」


「ダークスライムは、人間を襲うとダークスライム化させて仲間にするのに、スライムを襲うと喰ってしまうんですよね? それって、ダークスライムは仲間を増やして、大陸にいるスライムを一掃しようとしていませんか」


「なっ? そういう見方もあるかもしれんが」


「白い髪は、転生者の証。それなのに、呪われていると噂して、赤ん坊のうちに殺させようとしているのは、人間なのでしょうか。転生者が持つ前世の記憶を利用することで、人間はさらなる発展をする可能性がある。それを、人間が自ら潰すのですか?」


「転生者の記憶は必ずしも……」


「多くの転生者がいれば、その中で必要か否か、善か悪かの判断もできるでしょう。私の物質スライムの姿を見て、どう感じましたか」


 そう尋ねると、赤の村長さんは私の後ろに立つキララをチラッと見て、ブルッと震えた。


「ワシの物質スライムが、ジュリさんの物質スライムには逆らうなと言っている。王族に生まれる白い髪の子は、特に異質な異世界からの転生者が多いからな。見たことのない奇妙な……顔だけが人間のような異様な生命体に見える」


「異様ですか? 私の前世の世界では、普通に居ましたよ。もっと人間に近いタイプもありましたけどね」


「ひっ! こんな生命体が……」


「ロボットやアンドロイドは人間を助ける存在でした。異世界からの転生者を殺したがるのは、人化して大陸に棲むスライムじゃないんですか? 人間を守る物質スライムは、人化するスライムの上位種ですよね」


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