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48、キララのびっくり進化

「なぜ、青い髪の子を、赤の集落に貸さなきゃいけないんだい。生け贄にでもするつもりかい! ロバーツ、いい加減にしな!」


(生け贄?)


 赤の村長さんの話に、オバサンは即座に反論した。


「ワシは、青い髪の子とは言っていない。そうか、子供か。ジュリさんではなく、別の子なんだな」


 赤の村長さんにそう指摘されて、オバサンはすごく悔しそうな顔をしている。確かに彼は、青い髪だとは言ってない。青の王国の王家の血を引く者、と言っただけだもんね。


 騎士団長をしていたというだけあって、そういう駆け引きや罠を仕掛けることに慣れているみたい。



「なぜ、青い髪の子を借りたいんだい。さっきの話と全く繋がらないじゃないか!」


 彼は短い会話から、海辺の集落に青の王国の王家の血を引く人がいることを確認して、さらに青い髪の子供だという情報まで入手した。オバサンより、上手うわてすぎる。


「繋がる話だ。この集落の中に、緑の帝国から送り込まれた人間かスライムかわからない存在が隠れているから、探し出してもらいたいんだ。罠に掛からないのは、この集落には、奴が求めている人間がいないからだろう。門番が、しっかり仕事をしているから、出て行けないのだと思う」


(変な言い訳ね)


 オバサンは、キーッと頭に血がのぼってるから、彼の言葉の違和感に気づかないみたい。



 チラッと、イケメンさんに視線を移すと、ニッコリと微笑んでくれた。私が考えている通りにしてもいいってことね。


「まだ未熟なあの子を貸すなんて、ありえないことだよ」


(あーあ、また……)


 オバサンは、どんどん情報を与えてしまっている。彼は、ニヤッとわずかに口角を上げた。アルくんがまだ未熟だと知って、頭の中でいろいろな策を考え始めたよね。



「あの、私から聞いてもいいですか」


 そう話しかけると、赤の村長さんは少し警戒したみたい。彼の物質スライムが警戒を促しているのかも。


「ジュリさん、どうぞ」


「赤の村長さんは、スライムに寄生された人間が隠れていると考えているんですよね? 罠に掛からないとのことでしたが、スライムに寄生された人間を捕まえるための罠では、発見できないということですか」


「あぁ、そういうことだ。スライムに寄生された人間は、異常に水分を欲するのだよ。集落の噴水には、麻痺毒を入れてある。これで、大型船で来た数人を捕まえることができたが、まだ思念サーチの効かない者がいるんだよ」


「毒を入れたら、噴水の水が飲めないじゃないですか。あっ、皆さんに教えたから、スライムに寄生された人も、飲まないんじゃないですか」


「問題ない。そんなことを皆に言うわけがないだろう? どこで情報が漏れるかもわからないからな。赤の集落の住人は、噴水の水など飲まない。不衛生だ」


(潔癖症なの?)



「なぜ、青の王国の人を借りたいのですか。スライムに寄生された人を発見する能力なんて、無いと思いますよ?」


(嘘だけどね)


 アルくんの物質スライムには、見極めができる。色分けして見えるって言ってたもんね。


「そんな能力を期待しているわけではない。寄生するスライムは、元々は青の王国があった地に、大量に生息している。青の王国の王家の血を引く者がいれば、必ず出てくるはずだ」


「何のために出てくるんですか」


「器を替えるためだよ」



 ガタッ!


 オバサンが、怒りに震えながら立ち上がった。



「ロバーツ! ふざけるのも、いい加減にしな!」


「ふざけてなどない。ワシは本気だ。このままでは、この集落が、寄生スライムに乗っ取られてしまう。なぁに、貸してくれたら、危害が及ばないように見張りをつける。赤の集落の住人は、戦闘力の高い者が多いからな」


(あれ? おかしい)


 赤の村長が言っていることは、矛盾してないかな。何者かが入り込んでいるという話は、そもそも事実なのかな?


 騎士団長だった人が村長をしてるんだから、住人すべてを外に出させて、思念サーチが効かない人を見つけることは簡単にできるはず。あっ、隠れていて出てこないんだっけ? でもそれなら食べ物は? 寄生されていても食料は必要だよね。


 こんなに強権的な集落で、見つけられないなんて考えられない。物質スライムを持つ人も、きっと村長さんだけじゃないはず。


(嘘なのかも)


 オバサンは、怒りが最高潮に達してしまってるから、きっと何も気づけない。



「赤の村長さん、緑の帝国から送り込まれた人間かスライムかわからない存在が隠れている、という話は、どこが情報源なのですか」


「む? 情報源は明かせないな」


(あっ、動揺したみたい)


「それは、嘘が紛れているからですよね。まさかとは思いますが、緑の帝国に脅されているんですか? この島にいる青の王国の王家の血を引く者が、何かの交換の対価でしょうか」


「は? 何を言っている! あまりにも無礼ではないか! 子供のくせに、ワシを愚弄するのか! 赤の王国では、ワシにモノを言える人間は、王族のみだ。断首刑に……」


 そこで、彼は言葉を飲み込んだ。誰かが口止めしたとすれば……チラッとイケメンさんの方を見てみたけど、軽く頭を横に振ってる。



『ジュリちゃん、ボクを呼び出して』


(えっ? キララ、室内だよ?)


『大丈夫だから、呼び出して』


(わかった。キララ、オープン)


 私のすぐ後ろに、キララの気配がした。だけど、ワゴンでもなければテーブルでもない。


(ええ〜っ!?)


 私だけじゃなく、オバサンも目を見開いてる。キングシルバーさんは楽しそうにニコニコしてるけど。



『ボクは、ジュリちゃんを守る物質スライムだ。キミの方が無礼だよ。この島では、人間の上下関係は、物質スライムの能力によって決まる。一つしか物質スライムを持たないロバーツは、海辺の村長よりも地位は低いんだよ』


(キララが怒ってる)


「あ、あの……なぜ、物質スライムが……」


 赤の村長は、キララを見て額に汗が出てきたみたいだけど、キララが念話で喋ると、その汗はダラダラと流れていく。


 私も驚いているけど、なんとかポーカーフェイスを頑張ってる。キララは、まるで、銀色のボディスーツを着たような人型のアンドロイドだよ。


『ボク達は、ジュリちゃんの知識から様々な物を具現化できる。そして、これまでに到達した物質スライムがいない姿にもね。それがどういうことか、赤の王国の騎士団長だったキミならわかるよね?』


「ジュリさんは……王家の血を引くということ……か。白い髪の子は呪われているのではないのか。一体、どこの王族だと……」


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