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47、赤の集落

「とりあえず、昼飯を食うか」


 私達は、やっと赤の集落に入ることができた。老人に見える村長さんに案内されて集落の中を歩いていくと、やはり私の髪色には、住人の視線が集中していた。


 集落の中は、すべての道に白っぽい石畳が敷かれているみたい。建物も石造りの物ばかりで、少し意外な気がした。


(あまり赤くないのね)


 緑の集落は畑が多くて、建物は木造ばかりで、緑のツタに覆われている物が多く、緑色な集落だなと思った。

 そして、黄の集落の畑は麦畑なのか、あちこちが黄金色だし、木造の建物も黄土色っぽい土壁が多いから、黄色い集落だと感じた。


 でも赤の集落は、歩いている人の髪色は赤いけど、他には特徴はない。集落にしては、生活感がないような気はするけど。



「客人を迎える食堂はここしかないが、個室があるから、気にせんでええ」


 石造りの大きな建物に、村長さんは入っていく。オバサンは慣れた様子だけど、私とイケメンさんはキョロキョロしてしまう。


(また、大きな食堂ね)


 緑の集落では、村長の家に、蒸し物のワゴンが来る大食堂があったし、黄の集落では、工房の従業員用の食堂があった。今、思えば、緑の集落の食堂は、食べ放題の中華料理の店っぽい感じだったし、黄の集落の食堂は、トレイを持って料理を取っていく学食みたいな感じかな。


 そして、この石造りの建物の奥は、整然と並んだテーブルと椅子が、冷たい印象を受けた。食事をしている人は大勢いるけど、とても静かだな。



「ジュリ、こっちだよ」


「あ、はーい」


 料理をどこで受け取るのかと、あちこちを探していたけど、わからなかった。


 私達は、小さな部屋に案内された。そういえば、個室があると言っていたっけ。店の個室にしては広いかな。長テーブルと10人分くらいの椅子がある。私が最後に部屋に入ると、パタンと扉を閉められた。



 オバサンは一番端の席に座り、隣に私を座らせた。イケメンさんは私の隣に座ったから、私の両隣に大人がいるという形になってる。


 そして、オバサンの向かいに、お爺さんが座った。お爺さんに見えるけど、オバサンよりも若いって言ってたよね。赤の王国の王国騎士団を率いていたらしいから、騎士団長だったのかな。名前は、ロバーツさんだっけ? 寄生するスライムのせいで老化したみたいだけど。


(わっ!)


 まさかの出現に、私は驚いた。テーブルに穴が空いたと思ったら、料理を乗せたトレイが下から上がってきた。どんな仕掛けになってるんだろう?


 テーブルの下を覗いてみると、同時に覗いたイケメンさんと頭がぶつかりそうになった。あ、ぶつかったかも。私には、彼の頭に、銀色の帽子を被っているように見えるけど、その部分も身体の一部だと思う。



「アンタ達、テーブルの下を覗いてんじゃないよ。これは、下じゃなくて、上からのワープだよ」


 オバサンにそう言われて上を見上げると、天井の一部が透明になっていて、トレイが並んでいるのが見えた。



「村長さん、面白い仕組みだね〜。上に調理場があるの〜?」


「あぁ、上に調理場がある。衛生的に管理された室内で調理されているよ。赤の王国にある騎士団の食堂の仕組みを使っている。赤の王国では、食肉の加工をする店が多いから、衛生管理が厳しいんだ」


「ふぅん。あっ、いつも食べているハムは、赤の集落で作ってるって聞いたよ〜。海辺の村長が作るハムサンドはすごく美味しいんだよ〜」


「そうだな。ワシも、この島に戻った直後は、海辺の村長に世話になった。だから、村長のパン料理に合うハムを開発したのだ。あっ、料理が冷めないうちに召し上がれ」


(へぇ、そうなんだ)


 オバサンは、いろいろな人を助けてるのね。おそらく、それが彼女の役割なんだと思う。



「ジュリも、ボーっとしてないで、食べな。赤の集落の料理はフォークとナイフを使うが、ジュリの知識で使い方はわかるかい?」


「うん、大丈夫だよ。ふふっ、お料理はやっぱり赤いね」


 トレイの上の料理は、全体的に赤い。メインのサイコロステーキにかかっているソースも赤いし、付け合わせの野菜も赤い。そして、赤い米。スープも深いオレンジ色だから、赤く見える。


「赤の集落だからね。私は、この赤い穀物は、スプーンがないと上手く食べられないんだよ」


 オバサンは、スープ用の小さなスプーンで、赤い米をすくっている。ちょっとパラパラしてるのかも。


 私が、ナイフを使ってフォークの背に赤い米を乗せて食べる様子を見て、イケメンさんはすぐに真似をしてる。だけど、オバサンはスプーン派を崩さない。



 食事が終わると、トレイはテーブルの下にさがって行って、赤い飲み物が出て来た。どんな仕掛けになっているのか気になる。


「さて、そろそろ話をしようか。海辺の村長、その二人を連れて来たということは、話を聞かせても構わないということだな?」


「構わないよ。二人は私の家に住んでいる。ジュリは物質スライムを持つし、イケメンは海辺の集落への襲撃者を蹴散らすからね」


「なるほど。では、話そう。とはいっても、実は半分は片付いたんだよ」


 赤の集落の村長さんは、私達の方に視線を移したけど、すぐにオバサンの方に向き直った。



「ジュリさんが使ってくれた物質スライムの術によって、この集落の異様な雰囲気が消えた。それがわかっていて術を使ってくれたのかと思っていたが、ただの偶然のようだな」


(ん? あー、最初に何か言ってたっけ)


「当たり前だよ。赤の集落の中のことなんて、知るわけないだろ。物質スライムに口封じをしていたんだろ?」


「まぁ、知られると恥になるからな。少し前に、赤の王国からの大型船が来たとき、いろいろとあってね。二つの頭の痛いことが持ち込まれた」


「その一つをジュリが改善したんだね?」


「あぁ、そうだ。まさか洗脳状態に陥っていたとは、ワシも気づかなかったが、状態変化の術で打ち消されたということは、そういうことだろう」


「それで、もう一つは何なんだい? 赤の村長としての悩みかい? それとも、赤の王国の元騎士団長ロバーツとしての不満かい?」


「どちらもかな。赤の集落の中に、緑の帝国から送り込まれた人間かスライムかわからない存在が隠れている。おそらく、スライムに寄生された人間だと思うが、罠に掛からない。海辺の集落に、今、青の王国の王家の血を引く者がいるだろう? その者を貸してくれないか」


(えっ? なぜアルくんを?)


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