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46、ピンクスライムの魅了が効いてない?

「な、何だか、いい匂いがしたような……」


 長い棒を持った門番らしき人達は、何だかキョトンとしているけど、魅了が効いたようには見えない。私と目が合っても、さっきと大きな変化はないような気がする。


(効き目が弱い?)


 ピンクスライムの状態異常魔法・魅了は、初めて発動させたから、よくわからない。右手の小指は、ベースコートだけになっているから、術を失敗したわけじゃないと思うけど。



「あれ? 海辺の村長、何の話をしていたんだったかな?」


「は? アンタ達が、黄の集落の方から来たからからと言って、私達を足止めしていたじゃないか。何を言ってるんだい」


「えっ? なぜ、そんな理由で足止めなんか……」


「こっちが聞きたいよ!」


 オバサンは、ぷりぷりと怒っているけど、私がネイルを使ったことは、何も言わないのね。



『ジュリさん、術の発動には人間は気づかないよ。火や水が飛び出せば気づくけどね』


(ん? 術名を叫んだよ?)


『ジュリさんが叫んだのは、前世のジュリさんの言語だから、人間には理解できないよ』


(そうなの? あ、逆になぜ私はこの世界の言語がわかるのかな)


『スライム神の能力だと思うよ。物質スライムを得た人間は、この世界の言語や文字は理解できる。あれ? 誰かに説明を受けてない?』


(聞いたかもしれないけど、よくわかんない。前世の記憶が戻ってごちゃごちゃになってたから)


『そうか。ジュリさんは、まだ8歳だから、この世界のことを十分に知る前にギフトを得たからだね。今は少しはマシになってる?』


(うん、たぶんね)



「そっちの白い髪の子は、何だ?」


「だーかーらー、何度も言わせるんじゃないよ! スライム神からギフトを得た子だよ!」


 赤の集落の門番らしき人達には、魅了が全然効いてなくて、記憶が曖昧になっただけみたい。ピンクスライムの能力は、そんなに高いわけじゃないのね。でも、黄の集落では、右手で触れたオジサンは、ガラリと別人のように変わったけど。



『ジュリさん、ピンクスライムの魅了は、人間が相手なら赤の集落全体にでも効くはずだよ。おそらく別の状態異常にかかっていたんだよ』


(別の状態異常?)


『うん、だから今の術で、状態異常を消し去ったんじゃないかな。ピンクスライムは、優しいからね。強制的に何かを動かす系の魅了ではない。ジュリさんの感覚を借りるなら、ファンを増やす魅了かな』


(へぇ、そうなんだ)




「村長さん、彼らに話す方がいいと思うよ〜。ジュリちゃんのおかげで正気に戻ったんだからさ〜」


「は? イケメン、何のことだい?」


「今、ジュリちゃんが、怒っている人達を鎮めようとして、物質スライムの能力を使ったんだよ〜。結果的には、彼らが受けていた洗脳が消えただけだったけどね〜」


(あっ、バラしちゃった)


「洗脳? ジュリは、状態異常の解除ができるのかい? 私は何も感じなかったけどね」


「アタシ達は、もともとジュリちゃんのことが大好きだから、術の影響は受けないよ〜。ジュリちゃんの物質スライムの術は弱いから、状態変化系の術を上書きできない。だから、結果的に元々の状態異常が消えたんだよ〜」


「それで門番達は、同じ質問をしてきたんだね。アンタ達! この道を歩いた人間はすべて赤の集落への襲撃者になるのかい?」


 オバサンが、門番達を睨みつけてる。彼らはコソコソと話し合った後、オバサンに頭を下げた。



「海辺の村長、失礼なことをした。しかし、俺達は、洗脳されるような目には遭ってない。ずっと西門に詰めているからな。変な奴らが流れて来たのは南門や東門だ」


「アンタ達は、阿呆なのかい? 洗脳しますよと前置きしてから術をかけるバカがいるとでも思っているのかい。さっさと道を開けな! 赤の村長に、昼までには行くと言ってあるんだよ」


 オバサンの迫力に驚いたのか、門番達は道を開けた。だけど、私の髪色をジッと見てる。赤の王国では、白い髪を見ただけでも呪いが移るって噂されてるみたいだけど。




「海辺の村長! 申し訳ない。あっ……白い髪の……」


 赤の集落の門の前には、赤い髪の人がたくさん集まっていた。オバサンに声をかけた人も、私の髪色を見て、引きつってる。


「アンタ達の門番は、頑固すぎて話にならないよ。ジュリが物質スライムの能力を使うことになったじゃないか。まだ魔力が少ないんだ。能力を使わせないでおくれ」


(なんだか変……)


 オバサンは、ネイルがすごく弱いみたいな言い方をしてる。イケメンさんの真似をしてるのかな。彼も、ネイルのチカラは弱いって言ってた。



「その子は、スライムの加護を受けているのだね。あぁ、そういうことか。今、ワシの集落に広がった不思議な風を発動したのか。かなりの魔力を使わせてしまったな。これは、偶然だったのかね?」


(意味わかんない)


 門番達の後ろから出て来たお爺さんは、私を真っ直ぐに見つめてる。何だかモゾモゾする嫌な気分。


「ちょっと、赤の村長! ジュリに思念サーチを使っているね? 事前にことわりもなく、失礼なジジイだね!」


「ワシが調べるまで、門番達はその少女を集落に入れないからな。ふむ、あともう少しなのに弾かれる。前世の記憶を持つのだな?」


 ギロリと睨まれたけど、不思議と怖くない。何だか、逆にイライラしてくる。


「そんな話をこんな場所でするのかい?」


 オバサンは、ごまかそうとしてるけど、このお爺さんは引き下がらないよね。私の感覚通りに動いても大丈夫かと不安になって、人化したキングシルバーさんの方をチラッと見てみた。


「アタシは、いつでもジュリちゃんの味方だよ〜」


「ありがとう、イケメンさん」


(すっごく心強い!)



 私は、覚悟を決めて口を開く。


「赤の村長さん、初めまして。私はジュリといいます。最近だけど、前世の記憶が戻りました。二つの物質スライムをギフトとして与えられています」


「やはり、そういうことか。ワシは、赤の王国にて王国騎士団を率いていたロバーツという。あまりにも老人だから驚いただろうが、海辺の村長よりも若い。この老化は、スライムに寄生された影響だ」


「えっ? スライムに寄生……」


「心配は要らぬ。寄生スライムは一部の臓器と一緒に排出した。物質スライムを失った直後にやられてな。もう、物質スライムも復活しているから問題はない。だが、これでは、もう大陸に戻っても役に立たないがな」


 彼は自嘲気味に笑うと、私達を集落へと招き入れた。



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