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45、赤の集落になかなか入れない

『この丘の先が、赤の集落の門だよ』


(キララ、クローズするね)


 私達はキララの転移魔法で、黄の集落から赤の集落へ移動することにした。だけど、二つの集落は、今ちょっと仲が悪いみたい。直接の転移はしない方が良いと、オバサンが提案したことで、門の近くに移動することになった。



「ジュリ、いい位置だよ。ちょうど、赤の集落のサーチ範囲の外だ。この道は、黄の集落と赤の集落を繋ぐ道だから、門には武器を持った人間がいるはずだよ」


「武器? 何かネイルする方がいいかな」


「いや、ジュリのネイルは魔法だろう? スライムと勘違いされると、面倒なことになる。イケメンが守ってくれるはずだよ」


 オバサンは、銀色の髪を結んでいる彼の方に視線を向けた。オバサンは、彼がスライムだということは、わかってるよね? どこまで知っているのか、もうわからなくなってきたよ。



『ジュリちゃん、村長は、イケメンを人間だと思ってるよ』


(えっ? どうして? キングだということを知ってるはずだよね?)


『たぶん、キングシルバーの魅了だと思う。記憶の中にある都合の悪い部分は、忘れさせてしまうんだよ』


(ええ〜っ? 私は覚えてるよ?)


『イケメンは、ジュリちゃんにしか心を許してないんだと思う。村長は、他のスライム達との交流が多いからね』


(あっ、素性がバレると、マズイのかな)


『うん、知らない方がいいと思うよ。島にいるスライム達には、キングシルバーを敵視しているスライムも多いからね。下手をすると、島のスライム同士で争いになりかねないんだ』


(それは、大変!)


 私とキララのやり取りも、彼は素知らぬ顔をしているけど、覗いてるよね。キングシルバーさんは強すぎるから、孤独なのよね。




 ◇◇◇



「止まれ! 何の用事だ?」


(ひゃっ!)


 丘の上にのぼっていくと、まだ赤の集落の門に着いてないのに、大声で怒鳴られた。そして、駆け寄ってくる人達がいる。長い棒を持っているけど、腰には剣も装備しているみたい。


 オバサンは、銀色の髪の超絶すぎるイケメンに、チラッと何かの合図をしたみたい。私達が止まると、オバサンが一歩前に出て、門番らしき人達がここに来るのを待ってる。



「なんだ、海辺の村長か。黄の集落側から来るなんて、珍しいじゃないか」


 長い棒を持った人はそう言いつつ、私とイケメンさんに鋭い視線を向けている。感じ悪いけど、イケメンさんは気にしてないみたい。


「私がどこから来ようが、勝手だろ。アンタ達、何をしてるんだい? まさか、島の中で戦乱を起こす気じゃないだろうね?」


「黄の集落が、何か企んでいるみたいだからな。俺達が島の安全を守っているだけだ」


 門番らしき人は、オバサンが黄の王国の生まれだって、知らないのかな? あまりにも失礼だよね。


「何を企んでいるというんだい? 黄の集落の村長は、確かに少し変わり者だけどね。基本的に平和主義だよ」


「海辺の村長にはわからないだろうな。黄の集落は、緑の集落との交流が盛んだ。少し前に、赤の王国からの大型船が来たときに、おかしな人間が大勢入り込んだからな」



 漁師のお兄さんが島を出たときのことかな。お兄さんの見送りはできなかったし、人化した赤いスライムがアルくんを狙ってきたし、オバサンの家に戻ったら、怪我人や人間に寄生するスライムがいて大騒ぎだったっけ。


 あのときは私はまだ7歳で、前世の記憶が戻ってなかったから、何が何だかわからなかった。でも、今ならわかる。しかも、あの後は、海辺の集落に、改造スライムが転移魔法で襲撃してきたこともあった。アルくんと私の存在が、大陸にいる何者かの邪魔になっているってことだよね。


 大陸では、緑の帝国が、改造スライムを造ったりしてて、それに対抗しているのが、赤の王国なんだっけ。青の王国が滅んだ後のさすらいの荒野と呼ばれる領地の、奪い合いをしているようにも見える。


 だけど、大陸の人間達の戦乱は、大陸の人化したスライムが人間を操っているのだという話も聞いたっけ。


 結局、何が正しくて何が間違いなのかは、私にはわからない。おそらく立場によって、善悪は真逆になると思う。大陸は、人間が住むエリアみたいだから、人間が勝手にすればいいのかもしれない。だけど、この島は、スライム神の島だ。



「あー、もう! アンタ達は頭がカチンカチンだね。そこを通しな。私は、赤の集落の村長に用事があるんだよ」


 私が考え事をしている間も、オバサンは門番らしき人達と口論をしていた。銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、人間同士の言い争いには参加しないのね。ずっと黙ってる。


「じゃあ、同行者の素性を明かすんだな。銀髪の男は、大型船が着く小島の住人だろうけど、その白い髪の子は、通せない」


(えっ? 私が原因?)


「だから、この子は、スライム神からギフトを得た子だよ。海辺の集落でギフトを使った仕事をしているんだ」


 オバサンは、私の出身の話もしてないのね。



『ジュリちゃん、赤の集落の人間は、大陸の人間と感覚が近いんだよ。緑の集落の人間は帝国とは随分と違うし、黄の集落の人間は村長の素性を知る人間がいるから信頼されてるけどね』


(キララ、どうすればいいの?)


『うーむ、難しいよ。ボクにもわからない。村長がジュリちゃんの素性を話さないのは、話すとジュリちゃんが殺されるかもしれないからなんだ』


(赤の王国の生まれだとわかると殺されるの? ここは、赤の王国の出身者が集まる集落だよね?)


『ボクには、人間の複雑な事情はわからない。でも、大陸の赤の王国は、緑の帝国がやっていることに強い危機感があるから、この島の緑の集落のことも警戒してるみたいだ』


(そっか。疑心暗鬼になってるのね)


『ん? ジュリちゃんの前世の考えって、たまにボクには難しいな』


(互いに疑い合って、何も信じられなくなってるってことだよ。たぶん、怯えてるのね)



「いい加減にしな! 集落に入るなと言うなら、村長を連れて来な!」


 オバサンは、とうとうブチ切れちゃったよ。だけど、門番らしき人達は、そんな気はないよね。



(ネイル、使ってみよっか。何人くらいに効くかな?)


『ジュリさんが本気なら、赤の集落全体に効くと思う』


(わかった、やってみる)


 私は、彼らの方に右手を向けた。その後ろには、赤の集落の門がある。


「ピンクスライムの状態異常魔法・魅了!」


 私の右手から、桜の花吹雪みたいなものが、彼らを通り抜けて、赤の集落の門の先へと広がっていった。



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