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44、トラブルと魅了のネイル

「ジュリちゃん、今日はどこに行くの〜?」


 朝食後の水汲みから戻って来ると、銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、すぐに声をかけてきた。泉の水汲みは、キララの転移魔法で往復するから、いつからか彼はついて来なくなったな。


(あれ? いつもと違う)


 人化したキングシルバーさんは、珍しく銀色の髪を後ろで結んでいる。彼は自分ではできないから、オバサンに結んでもらったんだろうけど。



「オバサンが、赤の集落に行くから、私もついて行くことにしたよ」


「ええ〜? アタシは新しい服が欲しいのに〜」


「黄の集落の工芸品が欲しいんじゃなかったっけ?」


「どっちも欲しいのに〜」


 するとオバサンは、やれやれという顔をして口を開く。


「仕方ないね。黄の集落の服屋に寄ってから、赤の集落に行こうかね。キララが移動を手伝ってくれるならね」


「やった〜! キララさま! ありがとう〜」


(キララさまって……)


 オバサンさんは、イケメンさんのワガママに、ふーっと息を吐いているけど、たぶん楽しいんだと思う。




 ◇◇◇



 キララの転移魔法で、黄の集落に移動すると、オバサン達とは分かれ、私は織物の工房の前で出店することにした。


 すぐにキララは、かわいい屋台ワゴンに姿を変えてる。地底湖の水の販売と、緑の集落で押し付けられた生食できる野菜を、サラダセットにして販売することにした。


 このサラダセットは、キララが自動で袋詰めした物を屋台ワゴンに出してくれる。10種類くらいの野菜の詰め合わせだから、少し高いけど人気がある。


 夢光花むこうかの匂いに引き寄せられるように、すぐにたくさんの人が集まって来た。



「みなさん、おはようございます! 今日は、地底湖のお水と、緑の集落で仕入れた野菜のサラダセットを販売します」


「お嬢ちゃん、地底湖の水をくれないか」


「はい! ここで飲む方が疲れは取れると思いますけど、お持ち帰りですか」


「あぁ、持ち帰って、家族で分けるよ」


「では、袋に入れますね」


 キララは、ビニール袋みたいな物も出せるようになった。水瓶みずがめから、水を入れていると、銀貨1枚が屋台にポンと放り投げるように置かれた。


 水一杯は、薬草との調整上、銅貨50枚にしているけど、ビニール袋の水は、倍以上の量が入ってるから、銀貨1枚にしてる。


「お嬢ちゃん、お釣りは?」


「えっ? 袋の水は、銀貨1枚だから、お釣りはないよ?」


「水一杯は、銅貨50枚だろ」


(あーあ、オバサンがいないからだ)


 他の人達の方に助けを求めようと思ったけど、みんな目を逸らす。袋を受け取った人は、お釣りを要求して、手をひらひらさせてる。



『ジュリさん、右手でつかんでみて』


(ん? ネイル? あっ、ピンクのマニキュアか)


 出掛ける前に、ベースコートの塗り直しをして、左手の小指には銀ラメ、右手の小指にはピンクを塗ってきた。かわいい桜色だから、あまり目立たない。このマニキュアには、ピンクスライムの状態異常魔法・魅了の効果がある。


『そう。魅了は、ゆるい常時発動と、強い発動ができるから、術名を言わないで触れるだけなら、常時発動の効果だけが発揮される。試してみて』


(うん、わかった)



 私は、お釣りを要求してひらひらさせている手をつかんだ。すると、ニヤニヤしていたお客さんの表情は、一気に引きつったものに変わった。


「袋のお水は、コップの倍以上の量が入ってるから、銀貨1枚なの」


 真っ直ぐに顔を見てそう言うと、お客さんは慌てた顔をしてる。


「そ、そりゃそうだな。悪い、ちょっと勘違いしていたよ。おっ! サラダセットも、もらおうかな? いくらだ?」


「今日のサラダセットは、一袋が5人前で、銅貨10枚だよ」


「じゃあ、それを二つもらうよ。えーっと銅貨20枚だな?」


「うん、ありがとうございます」


「こちらこそ、ありがとうだよ。こんなにいろいろな種類が入ったサラダセットは助かるって、母ちゃんが言ってたからな」


「八百屋さんの迷惑にならないように、高めの値段になってるけどね」


「それだけの価値があるんだよ。これを八百屋で全部買い集めると、食べ切れなくて鮮度が落ちるからな」


 お客さんは、まるで別人のようになっちゃった。そして、笑顔で帰っていく。


(すごい魅了効果ね)



 しばらくすると、顔見知りのお客さんが来て、お会計を手伝ってくれた。やっぱり一人で出店するのは、お金のやり取りが大変だな。


「ジュリちゃん、さっきのオッサンを黙らせるなんて、すごいね。確かに、こんなにかわいい子に手をつかまれて潤んだ目で見られたら、悪人でも改心してしまうんだな」


「さっきのお客さんって、悪人なの?」


「あぁ、半年ほど前に、大陸から流れてきたんだけどね。髪色が黒っぽく濁っているわけでもないのに、ここに来るってことは、大陸には居られない事情があるんだよ」


「ふぅん、いろいろと難しいのね」


「あはは、ジュリちゃんには、まだわからないだろうな。人間の悪しき心は、ダークスライムを生み出してしまうくらいだからね。まぁ、心が弱いから、悪い方へ流されるんだろうね」


 私は、首を傾げておいた。8歳の女の子には、わからない話だもんね。



「今日のサラダセットは、完売です! ありがとうございました!」


「次は、いつ来るんだい? ジュリちゃんが来てくれると、みんなが元気になるよ」


「また仕入れたら来ます。ん? 元気になるの?」


「あぁ、白い髪の子に対する変な噂は、この集落ではもう無いからね。赤の集落がグダグダ言っているから、逆に変な噂がなくなったのかもしれないね」


「赤の集落? 私はまだ行ったことないの」


「行かない方がいいよ。赤の集落だと、白い髪を見ると、いきなり斬りかかってくるバカがいるかもしれない」


「ええっ!?」


 この後、赤の集落に行くのに、斬りかかってくる人がいるなんて……。




「ジュリ、待たせたね。そろそろ次の集落に行くよ」


 オバサンと人化したキングシルバーさんが戻ってきた。今日は銀色の髪を後ろで結んでいるから、いつもとは雰囲気が違うけど、服が変わると、さらに別人みたい。


「イケメンさん、なんか王子様みたいだね」


「これが王子様かい? 大陸の騎士が身につける戦闘服だけどさ。イケメンが、中に女物のシャツを着るから、袖口からフリルが出てしまうんだよ」


「ジュリちゃん、どう? アタシ、カッコいい?」


「うん、カッコいいよ。フリル付きのシャツと合わせるのって、センス良いね」


 私が褒めると、彼はクルクルと踊るように回ってる。嬉しいときは、回っちゃうのね。


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