38、キングシルバーは道化を演じる?
「ジュリちゃん、もういいよ〜」
銀色の髪の超絶すぎるイケメンが、こちらを向いてニッコリと微笑んだ。すると木箱だったキララは、柔らかなカゴの姿に変わった。
キララが姿を変えると、やっと、海辺の人化したスライム達は、私達の居場所に気づいたみたい。キララは、もう既に、島の門番であるここのスライム達よりも優秀なのかな。
「イケメンさんが、倒したの? キララの木箱の中にいたから、何も見えなかったけど」
「そうだよ〜。アタシが蹴散らしたよ〜。ジュリちゃん、カッコいいって言って〜」
キララが否定しないってことは、嘘じゃないのね。
「イケメンさん、すごいね。たくさんの襲撃者を倒しちゃうなんて」
「うんうん、それで? アタシは?」
「うん?」
銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、耳に手を当ててる。さらに、何を言えばいいのかな。
「アタシは、カッコいい?」
「うん、カッコいいよ」
「嬉しいな〜。ジュリちゃんが、カッコいいって言ってくれた〜」
彼は、その場でくるくると踊るように回ってる。そういえば、カッコいいって言われたいから自分が戦うって言ってたっけ。
だけど、さっきのキララの話だと、改造スライムは強いから、海辺のスライム達には倒せないのだと思う。それをキングシルバーさんは、カッコいいって言われたいから、という理由をつけて、海辺のスライム達のプライドを守ったのね。
(やっぱり王様なのね)
私がこんなことを考えていても、銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、まだくるくると踊ってる。なんだか、わざと道化を演じているようにも見えてきた。
「イケメンは、人間なのか? ここまで強いスライムの加護持ちがいるなんて、知らなかった」
たまに話をする海辺の人化したスライムが、私に尋ねてきた。どう答えればいいのかな。
「えーっと……」
「こんなに強い人間がいるなんて、大陸の大国が知ったら、騒ぎになる」
もう一人、近寄ってきたけど、どうしよう。あっ、そうだ。ここは質問返しで、話を逸そうかな。
「強い人間がいたら、どうして騒ぎになるの?」
「それは、まだ、キミにはわからない話だ。あー、ジュリは、まだ8歳だったな」
私の質問には答えてくれなくて、人化したスライム達は、私から離れていった。質問返し、成功ね。
やっぱり、キングシルバーさんは、まだ素性を隠してるのね。人間のフリをする理由は、何なのかな。あっ、でも、素性がバレると、海辺のスライム達の立場がないかも。門番なのに襲撃者を防げないって、マズイよね。
『ジュリちゃん、キング達にはそれぞれ担当があるんだよ。海辺の集落にはキングは居ない。それは、スライム神がいるためだ』
(キララの言うことはよくわかるよ。海底にいるキングシルバーさんの越権行為なんだね。だから人間のフリをしてるってことだよね)
『前世の記憶を取り戻したジュリちゃんは、難しい言葉を知ってるんだね。うん、そういう感じかな。スライム神は、なるべく直接的なことをしたくないみたいだ。改造スライムでも、スライム神なら一瞬で消し去れるんだけど』
キララは、そこで話をやめた。誰かに口止めされたのかな。いろいろとしゃべりすぎって。
「ジュリ、大丈夫かな?」
(あっ、スライム神)
そっか。スライム神の素性が人間にバレちゃいけないから、スライム神は自ら動けないのね。
「私は大丈夫だよ。お爺さんは大丈夫だった?」
「ホッホッ、見ての通り、元気じゃよ。しかし、かなりの密偵が入り込んだようじゃな。イケメンは暴れん坊だから喜んでおるが、海辺のスライム達は大変だったな」
海辺のスライム達は、お爺さんがスライム神だってことは、わかってるよね?
「爺さん、あの銀髪の加護持ちは、どこから来たのですか。白い髪が珊瑚礁の影響で、変色したのか」
(わっ! 直撃してる)
海辺の人化したスライム達が集まってきた。
「ふむ。おーい、イケメン。こっちに来い。スライム達が、イケメンはどこから来たのかと聞いておるぞ」
(本人に話を振った〜)
銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、くるくると回りながら、私達の方へ近寄ってきた。いつまで踊ってるのだろう。
「はーい、何かしら?」
「海辺のスライム達が、イケメンは何者かと疑問に思っているみたいだぞ」
「アタシのことを知りたいの〜? やだ、恥ずかしい〜」
(やっぱりオネエね)
きゃーきゃーと騒ぎながら、照れているみたい。たぶん、言い訳を考えているのね。
「イケメンは、恥ずかしがり屋だったのか?」
スライム神にそう問われて、キングシルバーさんは、テヘペロしてる。私の記憶から、いろいろと盗んでるよね。
「アルを狙って、大陸から変なスライムが来るのは、アルさえ居なくなれば大丈夫って思ってるからよね〜。だけど、この島に出入りする人間が、白い髪のジュリちゃんがいることを大陸に伝えたから、襲撃者が来たのだと思うよ〜」
(話を逸らした?)
私も、それに合わせてあげる方がいいかな。
「イケメンさん、なぜ、襲撃者は、アルくんと私を狙って来たの?」
「二人が、王族だからだよ〜。あっ、言っちゃった。ごめんなさい〜」
(えっ? 二人って……)
銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、恥ずかしそうに顔を隠している。私の記憶から何かを真似してるみたいだけど、使い方を間違えてるからね?
他の人化したスライム達を見てみると、みんな、気まずそうに目を逸らしてる。彼らも、知っていたのかな。
でも、私が王族? アルくんの妹だったりするのかな。私の方が先に、この島に来てるけど。
「ジュリ、もうすぐアルの12歳の誕生日じゃな? アルが12歳になったら、一緒に祠に来なさい。アルにも、ジュリのことを話しておく必要がある」
「あ、はい。わかりました」
そういえば、落ち着いたら祠においでと言われてたっけ。ネイルの色集めに忙しくて、すっかり忘れてた。
「気になるスライムも、一緒に来ればいい。じゃが、話を聞くということは、義務も生じるぞ」
スライム神がそう言うと、人化したスライム達はコクリと頷いた。
「アタシも行っていいの〜?」
銀色の髪の超絶すぎるイケメンは、また、くるくるっと回って、そう尋ねた。私の記憶の中の、何を真似てるのかな?
「ふむ。直接話を聞きたいキングも、来ればよい」
(あっ、バラしちゃった)
キングシルバーさんは、ピタリと回転をやめて、なぜか砂の上に倒れた。あっ、お笑い芸人の真似をしていたのかも。




