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33、キングシルバーの盾

「スライム神の側近は、二人いるんですね」


「いや、もっといるぞ。素性を隠しているスライムもいるから、正確な数は言えないけどな。この島にいる側近は、名前にキングと付いている」


(あれ?)


 泉のある草原で、紫色の髪のキングパープルさんと話していると、突然、私の目に映る景色が変わった。私の後ろにくっついていたスライム達も一緒に、広い場所に移動したみたい。


 周りを見回してみると、背の高い草の先に、大きなスライムが見える。私の背と変わらないくらいの草が生えているこの場所は、大きなスライムの草原かな。


 30体近くに分裂していた銀色のスライムの姿はない。背の高い草に隠れてしまったのかも。


 キングパープルさんが、銀色のスライムは海底火山に棲んでいると言っていたけど、地熱を司っていたり、スライム神が与える物質スライムの源となるスライムだなんて、凄すぎるよね。だから泉のスライム達は、あんなに怯えていたのかな。



『アタシを置いていくなんて、ひどいじゃないか〜。クリアスライムは、公平なんじゃないの〜?』


(わわっ!)


 とんでもなく大きな銀色のスライムが現れた。分裂していたのが合体したのかな。


『この草原に縁のあるモノを呼んだだけだ。海底のスライムは、ここに縁はないだろう』


(白いスライム!)


 この草原のスライムは、とても大きいと思っていたけど、銀色のスライムの方が圧倒的に大きいから、なんだか感覚が狂ってしまう。



「ジュリ、草が邪魔かな。ちょっと待ってくれ」


 紫色の髪のイケおじが、サッと手を振ると、私の周りだけ草が消えた。急に倒れたみたい。



『ジュリ、つまらないケンカに驚いたか。キングシルバーは、ケンカ好きなんだよ。だが、ジュリの元へ一番にやってきただろう? 悪いスライムじゃないからね』


「はい。えっと、白いスライムさんは、クリアスライムさんっていうのですか?」


『あぁ、この草原にいる白いスライムは、島を浄化しているから、そう呼ばれているね。他の場所にいる白いスライムは、ホワイトスライムと呼ばれているよ』


「へぇ。居場所が違うと、呼び方が変わるんですね」


『ふふっ、ジュリも、居場所が違うと話し方が変わるじゃないか。我々にも、これまで通りのジュリで構わない。我々にとって人間は、癒やしを与えてくれる愛玩動物ペットなんだよ。子供は、自由奔放な方が可愛いからね』


「えっ? 人間はペットなの?」


 前にも聞いたような気もするけど、意味がわからなかったから、聞き流していたかも。


『ジュリの前世の知識では、逆のようだね。だが、この世界は、スライムが統べる世界なんだ。人間は、自由気ままに行動するから、見ていて飽きない。ただ、大陸の人間は、ちょっとおかしくなってきたようだ』


「たぶん人間は、自分達がペットだとは思ってないと思います。私に前世の記憶が戻る前から、スライム達は可愛い友達だと思っていたから」


『あぁ、それでいいんだよ。スライム神は、その気になれば、すべての人間を消し去ることもできる。だけど、そんなことはしない。大陸にある大国が、20年ほど前に滅んだときには、とても悲しんでおられたよ』


「青の王国……」


 スライム神の祠の奥でも、オバサンとその話をしてたよね。とても優しい神様なんだ。



「クリアスライム、早くしないとジュリのお腹が減ってくるじゃないか。順番は、クリアスライムが決めてくれ」


 紫色の髪のイケおじがそう言うと、白いスライムは、プルンと震えて承諾したみたい。


『ジュリ、新たな物質スライムを呼び出しなさい。順番は、今日、ジュリを見つけた順にしよう』


「はいっ」


(えーっと……)


 キララとは違って、オープンとクローズじゃないよね。始まりって、何だっけ?



『ジュリさん、【パレット】と言って』


(あっ、それでいいんだ)


「パレット」


 そう声に出すと、ブレスレットが光って、白いトレイのような物が現れた。



『じゃあ、アタシからだね〜。ここに垂らせばいいの〜?』


 銀色の巨大すぎるスライムから、すごく長い触手がウニュ〜っと伸びてきた。


「はい、この上にお願いします」


 触手から、白いトレイの上にポトリと、キラキラ光る透明な何かが落ちた。体液なのかな。


 白いトレイの上で、キラキラ光る透明な何かが、派手にくるくると回ると、頭に文字が浮かんできた。



【銀ラメ:Lv.1】

 ●無色透明、銀色のラメ入り。

 ●キングシルバーの盾。



 レベル1って、どういうことだろう? キングシルバーの盾? ネイルなのに盾?



『ジュリちゃん、使ってみてよ〜。面白そう〜。ジュリちゃんが盾に化けるのかなぁ?』


「ええっ? はい。あ、でも、ネイルの除光液がないから、ヤバいネイルだったらどうしよう」


 銀色の巨大なスライムは、分裂したみたい。白いスライムと同じくらいの大きさに変わって、近寄ってきた。



『ジュリさん、【マニキュア】と言って』


「あ、うん、マニキュア。でも、落とし方がわからないと……あっ」


 私の左手首から、小瓶が2つ飛び出してきた。ブレスレットに空いた穴は、スライム神の無色透明な石の隣に、新たに銀色に輝く石がハマっている。


 飛び出してきた小瓶は、白いトレイに勝手に乗ってる。白いトレイには、小瓶をセットするくぼみができているみたい。


 左側の【ベースコート】の小瓶に触れると、私の両手の爪がピカッと光った。あっ、右手の人差し指の爪だけ光らなかったな。



『ジュリさん、【ベースコート】を塗り直して。常時発動系だから、1ヶ所でも剥がれていると、効果が下がるんだ』


「全部、塗り直すの?」


『うん、上から重ねて。ベースコート以外のマニキュアは、必ずベースコートの上に塗るんだ』


「わかったよ」


 私は、大きなスライム達と、私の背に隠れて付いて来てしまった泉のスライム達の視線を浴びながら、ベースコートを塗る。


 ふーふーと吹くと、すぐに乾いた。普通のベースコートとは違うみたい。そして、もう一つの小瓶に手を伸ばす。



 小瓶をひねって開けると、銀ラメ感がすごいと感じた。何というか……めちゃくちゃ派手なのよね。


「これも、全部の爪に塗るの? かなり派手になりそうだよ」


『常時発動系じゃないから、1本で試してみて。数が増えても、今のオレのチカラじゃ、拡張できない』


「じゃあ、左手の小指にしようかな」


 蓋に付いているブラシには、たっぷりと銀ラメが付いていたから、小瓶のふちで少し減らしてから、サッと塗ってみた。



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