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29、新たなギフト

「ジュリ、よく来たね。村長も見届けるのかな」


 水浴びをした後、私はオバサンと一緒に、スライム神のほこらがある洞穴に来たの。祠は、洞穴の奥にあるみたい。


 だけど、洞穴の奥には入れないんだよ。少し前にアルくんと一緒に、探検しようと思って入ったことがあるの。でも進んでも、気がついたら入り口に戻っていたの。洞穴の奥の方に灯りがあるのは見えたけど、あれが祠だったのかな。



「爺さん、私も見届けるよ」


「じゃあ、ついて来なさい」


(あれ?)


 スライム神の祠を守るお爺さんは、洞穴の奥へと歩いていくよ。オバサンと一緒に、私もついて行ったけど、入り口に戻らない。不思議すぎるの。



 少し歩いていくと、突き当たりに灯りが見えたよ。オバサンの背丈くらいの小さなお家があったの。


「爺さん、左側じゃないのかい?」


(ん? 左側?)


 左を見てみたけど、岩壁しかないよ。オバサンには、何か別の物が見えるのかな。


「ジュリは前世の記憶が戻ってないようだから、外の方がいいじゃろ」



 お爺さんは、小さなお家を避けて、その奥へと歩いて行ったよ。岩壁に当たりそうなのに、お爺さんは止まらないの。


 私は、オバサンと一緒についていくと、奥の岩壁が不思議すぎることに気づいたの。私達が歩いていくと、岩壁がどんどん後ろに下がっていくみたい。


(あっ! 出口?)


 突然、動く岩壁に穴が空いたの。明るい光が差し込んできたよ。




 ◇◇◇



「へぇ、ここに来たのは初めてだよ。広い草原になってるんだね」


 外に出ると、明るい草原だったよ。でも、海は見えないの。遠くに高い岩壁があるからだと思うよ。


「村長が初めてこの島に来たときは、ここに小屋を建てて住まわせていたんだけど、忘れたかな」


 お爺さんが立ち止まると、オバサンも立ち止まったの。私はえーっと?


(わっ!)


 突然、草原に、黄緑色に輝く魔法陣が現れたの。



「ジュリ、魔法陣の中に入りなさい」


「は、はい」


 突然だから、何の心の準備もしてなかったよー。私は、そ〜っと魔法陣に足を踏み入れたの。


 魔法陣から一気に立ち昇る淡い光が、私の身体を包み込んだよ。何かを話しかけてくるような不思議な光。



 光が収まると、キラリと光る物が、お爺さんの前に浮かんでた。何なのか全然わかんない。


「スライム神からジュリへのギフトじゃよ。さぁ、こちらへ来て、受け取りなさい」


「は、はいっ!」


 私は、お爺さんに近寄って、そーっと両手を伸ばしたよ。あっ、かしずくんだっけ? 失敗したかも。


 お爺さんは、私の手に、二つ目のギフトを置いてくれたの。見た目は大きいけど、すっごく軽い。



「ジュリ、装備してみなさい」


「はい。えーっと、輪っか?」


 左手で持ってみると、空気みたいに軽い銀色の大きな輪っかだった。たくさんの穴が空いてる。


 お爺さんの方を見ても、オバサンの方を見ても、優しい笑顔で見てるだけで、何も教えてくれない。



 銀色の輪っかを身体のあちこちに近づけてみたけど、何も起こらない。


(えっ? どうして?)


 左手が疲れてきて、右手に持ち替えると、左手首がウズウズしてきたの。近づけてみると、大きな輪っかは、私の左手首にぐるぐるに巻きついちゃった。


(な、なにごと?)


 ぐるぐる巻きの輪っかを眺めていると、魔法陣が強く輝き、私の左腕にどんどん光が吸い込まれていく。でも、物質スライムの声は聞こえないよ?


 わっ! 私の身体全体が、強い光に包まれてきたよー。



 そして……。



 いろいろな感情があふれてくる。


 光の中には、たくさんの過去があった。次々に現れては消える写真のような記憶。そう、私の……そっか。昨夜の夢は、私のお葬式だったのね。結花が、私にネイルしてくれたんだ。



『ジュリさん、初めまして。スライム神からのギフトは【ネイル】だよ。オレは、キミを守る物質スライム。だが、まだ何も無い。パレットに色を集めないとね』


「えっ? ネイル?」


 改めて左手首を見てみると、銀色のブレスレットに見える。宝石のような物は何も付いてない。さっきは、ぐるぐる巻きだったのに、今は、チェーン1本だけになっている。


 私の身体を纏う光は、ブレスレットに吸い込まれていった。これが新しい物質スライムなのね。ネイルをする文化なんて、この世界にあるのかな。




「ほう! ワシも知らない技術じゃな。ジュリ、前世の記憶は戻り始めたか?」


「はい、まだ頭の中は整理できていませんが、昨夜の夢が自分の最期の場面だということは理解しました」


「ジュリは、急に大人になったな。だが身を守るためにも、話し方を変えるのは危険だ。新たな物質スライムは、まだ何のチカラもないからな」


「あ、はい。私は、8歳になったばかりですもんね。新たな物質スライムは、色を集めないといけないと言っていますが、意味がわかりません」


「ふむ。そうじゃのぅ。ジュリは、ワシの正体に気づいているようだから、一番最初の色はワシが渡そうか」



『ジュリさん、【パレット】と言って』


「パレット?」


(わっ!)


 ブレスレットが光って、白いトレイのような物が現れた。すると、お爺さんは、その上にポトリと、透明な何かを置いてくれた。


 白いトレイの上で、透明な何かが踊るようにくるくると回ると、頭に文字が浮かんできた。



【ベースコート】

 ●爪の表面の保護のために塗る下地。

 ●スライム神の通常バリアが常時発動する。



「えっ? スライム神のバリア?」


「おや? ジュリは、ワシがスライムであることを見抜いていただろう?」


(ちょ、ちょっと待って)


 確かに、お爺さんの頭には、透明な帽子を被っているように見えている。だから、スライムだということは気づいていたけど、スライム神!?


 パレットに置いてくれた透明な物は、いつの間にか消えてしまった。どこへ行ったのだろう?



『ジュリさん、【マニキュア】と言って』


「マニキュア?」


 すると、私の左手首から、小瓶が飛び出してきた。よく見ると、ブレスレットに空いた穴には無色透明な石が一つ、ハマっているみたい。


 私はその小瓶を手に取ってみた。【ベースコート】って日本語で書いてある。



「ジュリ、それをどう使うのかな?」


 お爺さんは、興味津々みたい。いえ、お爺さんじゃなくて、スライム神よね。


『ジュリさん、使ってみて!』


「あ、はい。じゃあ、塗ってみます」


 小瓶をひねって開けると、蓋には、ちゃんとブラシが付いている。小瓶は空中に浮かぶパレットに置き、両手の爪に塗っていく。少しはみ出してしまったけど、爪にツヤが出たように見えた。



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