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25、大きなスライムの草原を統べる王様

 私達のすぐ近くを、大陸から来た人化したスライムが通ったの。声を出さないように口を押さえてるけど、アルくんも、すっごく怯えてる。


「海辺の集落からこの場所に、子供が移動したことは、わかっているんだぞ」


(ひぃん、怖いの)


 私達は、背の高い草の中で、ジッとしてる。キララが、こっそり隠れる魔法を使ってくれてるけど、大丈夫なのかな。私はキララのお店の椅子に座ってるけど、アルくんは、ワゴンのパラソルの棒を掴んで立ってるから、足がガクガクしてるみたい。




『大陸のレッドスライムが、何の用だ?』


(あっ! 白いスライム!)


 人化したスライム達の前に、白くて大きなスライムが現れたよ。私を乗せてくれたスライムなのかな?


「クッ、クリアスライムか。なぜ、人間を隠す?」


『こちらが先に問いかけている。礼儀も知らぬのか』


「青い髪の子供が逃げ込んだだろ。青の王国の王家の血を引く子供だ。我々への反逆国の子孫を生かしておくわけにはいかない。強いダークスライムを生むだけだ」


(難しいお話なの)


 アルくんは、震えてる。まだ、スライム神から授かった剣は使えないみたい。腰には普通の剣も装備してるけど、人化するスライムは、すっごく強いから、見つかったら逃げられないよね。



『それなら心配はない。この島にいる限り、ダークスライムの影響は受けない。それに、スライム神の加護を得た者は、黒く染まることはない』


「今、大陸で起こっている戦乱は、スライム神の加護を得た人間がダークスライム化したことが元凶だ。物質スライムを失った人間は、ただの人間よりも深い闇に堕ちる」


『青の王国は、今の戦乱には無関係だろう? 緑の帝国が、スライム神の加護を得た人間から加護を奪う人体実験をしたことが元凶だ。だがそれは、赤の王国が、青の王国があった地に領土を広げようとしたせいではないのか? すなわち、赤の王国に棲むおまえ達が、人間を操って起こした戦乱だろう』


(難しすぎるお話なの)


 大陸から来たスライム達は、黙っちゃった。白い大きなスライムが言ったことが正しいみたい。




『大陸のレッドスライム、いつまでこの草原にいるつもりだ? 目障りだ』


(わぁっ! 紫色のスライム)


 人化したスライム達を取り囲むように、いろいろな色の大きなスライムがたくさん現れたよ。



「キングパープル、なぜ、人間を隠すのですか」


 人化したスライムの話し方が変わったの。言葉遣いが丁寧になったよ。


『この島に住む人間は、我々と共に生きている。大陸から来たけがれたスライムに手出しはさせない』


「な、なぜだ! 人間のような下等生物になぜ……」


『は? 下等生物? 我々から見れば、大陸にいるおまえ達の方が下等生物だ。序列さえ守れぬ傲慢さは、滅びをもたらす。ダークスライムの発生は、おまえ達の責任だ』


「違う! ダークスライムは、人間の悪しき心から生まれたのだ。諸悪の根源は、青の王国の王家の人間だ」


『ダークスライムに襲われた人間は、髪が黒く変色し、肌も黒色化した後に、ダークスライム化していく。だが、ダークスライムに襲われたスライムは、即座に吸収されて消滅する。ダークスライムが敵視しているのは、人間ではなくスライムだ。大陸に棲むスライムが、人間を守ってやることを忘れた証拠ではないか!』


 紫色のスライムは、すっごく怒ってるみたい。ブワッと紫色の霧みたいなものが吹き出したよ。その瞬間、キララが、白い大きな布で私達を覆ったの。


(あっ、バレた?)


 人化したスライム達が、一斉に私達の方を見たけど……目は合わないよ。キララが頑張って、ごまかしてるのかも。



「その辺りに……あれ? 動けない」


 人化したスライム達は、私達の方に来ようとしたみたいだけど、足が固まっちゃってるのかな。手と頭しか動かないよ。


『おまえ達が殺そうとしている子供達は、この島で我々に癒やしを与えてきた。すなわち、我々の愛玩動物ペットだ。それを守るのに、何の理由がいる?』


(愛玩動物って何?)


「だが、大陸に渡ると、面倒なことに……」


『それは、おまえ達が、正しく人間を扱わないからだ。スライム神の島にまで、子供を殺そうとやって来るのだからな。さっさと立ち去れ!』


「そう言われても、動けな……おっと」


 人化したスライム達は、動けるようになったみたい。だけど、私達の方をジッと見てる。そして、そぉ〜っと、腰のあたりから触手を伸ばしてくる人もいる。


(わっ、わっ、届いちゃうよー)




『アル、両手で掴んで!』


 キララが、そう言った直後、真っ暗になったよ。


(ここは、どこ?)


『土の中だよ。奴らは、ボク達を見失ったみたいだ。転移跡があると思って、必死に探してるよ』


(キララ、すごいね。あっ、アルくんも大丈夫?)


『うん、びっくりしてるみたいだけどね。もう少しだけ、ここに居るよ』


(わかったよ)




 しばらくすると、パッと明るくなったの。だけど、さっきの草原じゃないよ。私達は、空に浮かんでいるみたい。キララは大きなカゴに変わってて、上を見ると大きな布風船がついていたよ。


『アル、もう大丈夫だよ。ボクは、気球に姿を変えたんだ。今日は風がないから、手を放しても平気だよ』


「えっ? わっ! 空に浮いているのか」


「アルくん、キララは空を飛べるんだよ。風が強いときは、飛ぶのが難しいんだって」


「へぇ、すごいな。さっきのスライム達は……」


 下を見てみると、背の高い草が生えた草原は、なんだか白くなってて変だったよ。


『キングパープルが、奴らを凍らせたよ。草原はすごく寒くなってる。その直前に、ボク達は空に逃げたんだ』


「人化したスライムを凍らせたの? あっ、海辺の集落のスライム達が来たみたい。えっ? 何をしたの?」


『ジュリちゃん、スライムの世界は序列が厳しいんだ。それを守れないばかりか、キングの言うことも聞かない個体は、大地に還るんだよ』


(ん? よくわかんない)


「処刑されたのですか」


『人間で言えば、そうなるね。海辺の集落にいる人化したスライム達は、この島の門番だからね。キングの忠告さえ聞かないスライムは、すべてに災いをもたらす存在だからね』


「キングというのは、紫色のスライムのことですよね?」


『うん、大きなスライムの草原を統べる王様だよ。キングパープルは、スライム神の側近なんだ』


 アルくんとキララが難しいお話をしていると、草原がキラキラと輝き始めたよ。凍っていた草原が元に戻ったみたい。



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