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24、大陸から来たスライム

 それから、しばらくの時が流れたよ。


 私は毎日、朝ごはんを食べた後は、上の草原に水汲みに行って、少し大きめのスライム達と遊んで、昼ごはんを食べた後は、小川の近くにいる花のように小さなスライム達と遊んで過ごしてるよ。


 キララと一緒に、ときどき地底湖に水汲みに行ったり、夢光花むこうかを少しだけ摘んだりしてる。夢光花を摘んだら、海辺の集落で、お店をしてるの。人化したスライム達は、お花が欲しい人は皆、一度は買えたみたい。


 黄の集落には、オバサンが買い物に行く日だけ、地底湖の水を売りに行ってるよ。黄の集落でお店をしていると、緑の集落の薬草が欲しいって、よく言われるの。だから黄の集落に行くと、緑の集落の畑にも行くことになるの。


 緑の集落では、スライムの結晶を欲しがる農家さんが多くて、緑色の野菜を買うことになっちゃうの。スライムの結晶を畑に撒くと、たくさんの野菜が育つんだって。キララが異空間に保管しておくから気にしなくていいって言ってるけど、行くたびに、ワゴンに山盛りの野菜を買ってるよ。



 ◇◇◇



「ジュリ、今日は昼過ぎに大型船が来るから、夕方まで海岸は危険になるからね。アルと一緒に、どこかに隠れてな」


(アルくんも?)


「村長さん、アルくんはまだ大陸に行かなくていいの? アルくんが来てから、もう三度目の大型船だよ?」


「あぁ、アルは、黄の王国の大型船にしか乗せられないからね。それに今は、青い髪の子が大陸をウロつくのは危険だ。さすらいの荒野付近で、緑の帝国と赤の王国の戦乱が起こっているんだよ」


 さすらいの荒野は、青の王国があった場所なんだっけ。アルくんは、青の王国を復興するって言ってたから、さすらいの荒野には……戦乱中だから行けないね。



「そっか。漁師のお兄さんは、戦乱を止めに行くのかな。赤の王国の大型船が来たら、島を出るって言ってたけど」


「今日の大型船は、赤の王国の船だね。カールの物質スライムは、まだ復活してないんだけどねぇ。赤の王国の英雄と呼ばれているから、カールは行くしかないだろうね」


「えっ? 今日、お兄さんは島を出てしまうの? 私、何も聞いてないよ」


「ジュリには、言えなかったんだろう。漁は、ロックスが本格的に手伝うみたいだ」


(そんな……)


 お兄さんには、ずっと仲良くしてもらってたのに、ありがとうもさよならも言ってない。


「お兄さんに、お別れを言いに行かなきゃ!」


「ジュリ、もうカールは小島に行ったよ」


「じゃあ、小島に……」


「何を馬鹿なことを言ってるんだい。カールは、見送りが嫌いなんだよ。なぁに、カールはあれでも強いからね。槍だけじゃなく剣も使う。心配はいらないさ」


(嘘っ!)


 オバサンは不安そうな顔をしてる。



『ジュリちゃん、早く草原に行くよ。赤の王国の大型船には、人化したスライムが多く乗ってる』


(でも……)


『カールのことなら心配ない。カールの物質スライムは、ほぼ復活してるからね。もしものときには、カールを守って、この島に戻って来るよ』


(そう、なの? キララは嘘つかない?)


『ボクは、ジュリちゃんには嘘はつかない。さぁ、村長の弁当ができたみたいだよ』



「ジュリ、アルと二人分の弁当だ。大陸で戦乱が起こっているときは、大型船で来た人間は、この島にいる同郷の人間を集めることが多いんだ。この島の中で争いが起こることもある。赤の集落は知らないから行かないだろうけど、緑の集落にも立ち寄ってはいけないよ?」


「でも、アルくんも一緒なら、どこかの集落に居る方がいいよね? 黄の集落に行くと、また薬草が欲しいって頼まれるかも」


「今日は、集落には行かない方がいいね。理由は話せないけど、おそらくアルの方が、今日は危険だ」


 オバサンの表情が、いつもとは全然違う。


「わかったの。人間が来ない場所に隠れていればいいんだね?」


 そう尋ねると、オバサンは大きく頷いたよ。だけど、急に慌てた顔をしてる。



『ジュリちゃん、赤の王国の大型船とは別の船が小島に着いたよ。大型船は商人の船だけど、別の船は軍隊の船だよ。早くボクを呼び出して』


(えっ? キララ、オープン)



「ジュリ、ここからキララで移動すると、見つかるよ。もう海岸に、大陸の人化したスライムが来たみたいだ」


「見つかっても大丈夫だよ」


「転移跡を追跡できるスライムもいるんだよ? 地底湖はダメだ。この島が汚される」


「地底湖には行かないよ。アルくん、キララに触れて」


 私がお店の椅子に座ると、オバサンが作ってくれたお弁当を持って、アルくんが、キララのワゴンに触ったの。


「ジュリ、どこへ行くんだい?」


「ん? お友達のとこだよ。いってきまぁす」


 私がそう言うと、キララは転移魔法を使ったよ。転移の光に包まれた瞬間、海岸にいた見知らぬ人化したスライムがこっちを見たのが、見えたよ。




 ◇◇◇



「ジュリちゃん、ここは?」


 キララが移動した場所は、背の高い草が生えた草原の中だったよ。上の草原の泉に行くつもりだったのにな。


「えっと、小川の草原の奥にある大きなスライムの草原だよ。上の草原に行くつもりだったのに、キララがなぜか、こっちに来ちゃった」


 この草原は、白くて大きなスライムと遊んでから、一度も来てなかったな。人間は、スライムの加護のある人しか、入っちゃダメだったはず。


「なんだか、俺、冷や汗が出てくるんだけど、ジュリちゃんは平気なのか」


「アルくんの髪色と同じ色のスライムも居ると思うよ?」



『ジュリちゃん、静かに。ボクが覆うとバレそうだから、軽い阻害魔法だけ使ってる』


(えっ? あ、うん)


 今のキララの声は、アルくんにも聞こえたみたい。シーって口に指を当てて、耳を澄ましている。お店は、触れている私達にしか見えないみたい。




「痛っ! この草原は、変な結界があるぞ。弾かれて入れない」


「ただの人間を弾くのさ。スライムとスライムの加護を持つ人間しか、この草原には入れない」


(人が歩いてくる!)


 頭には、赤い帽子を被っているみたいに見えるから、人化したスライムね。


 この島には、人間は誰でも入れるみたいだけど、スライム神の結界があるから、ダークスライムは入れないんだよね? 海岸にもいたけど、大陸のスライムは、普通に入ってくるみたい。



「くそっ! なぜ邪魔をする。人間の子供が隠れているのだろう? なぜ、人間を隠すのだ!」


(ひぃん、怖いよー)


 怖い顔をした人化したスライム達が、次々に草原に入ってきちゃったよー。



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