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23、黄の集落で出店したよ

 よろず屋のソフィさんというお姉さんも、物質スライムを持っているみたい。すぐに黄の集落全体にお知らせしてるって、キララが言ってたよ。


 オバサンは、ロックスさんとアルくんを連れて、先に移動したの。私は、キララがパラソルのついた屋台ワゴンに姿を変えてから、漁師のお兄さんと一緒に移動したよ。



「スライムの結晶を売るって、本当か? ひっ」


 よろず屋のお姉さんを取り囲んでいた一人が、私を見て、小さな悲鳴をあげたの。白い髪が怖いのね。王国出身だってわかったけど、やっぱり怖がられるのは嫌だな。


「ちょっと、あんた達! 村長から伝達があっただろ? 海辺の集落で預かっている子供二人の髪色に、いちいち過剰反応してんじゃないよ」


(オバサンが怒ってる)


 アルくんのことは怖がられないから、私が怖がられただけなんだけどな。でも、オバサンも本当は白い髪だから、きっと嫌な思いをたくさんしていたのね。



『ボクは、ジュリちゃんを守る物質スライム。店主のジュリちゃんに嫌なことを言う人間には、ボクは売らないからね』


 キララは、ワゴンの上に透明な箱を出したよ。それと同時に、地底湖の水が入った水瓶みずがめも出してる。


 水瓶には、夢光花むこうかという良い匂いのお花が飾られてるから、ワゴンの近くは、良い匂いがしてると思うよ。



「ジュリ、店主らしく、ビシッと言ってやりな」


(えー、そんなの困る)


 オバサンは、文句を言いなさいって言ってるのかな? でも、私の髪色が怖い人は、そういう噂を信じてるだけだから、悪くはないと思う。


『ジュリちゃんは、お店を始める挨拶をすればいいよ。ビシッと言うべきことは、ボクが言うよ』


(キララ、ありがとう)



「えっと、皆さん。今から、お店を始めます。売り物は、海辺の集落で物々交換で人化するスライム達が出した物と、地底湖の水です。疲れている人には、お水を売ります」


「は? 地底湖の水?」


(ひぃん、怖いの)


 乱暴そうな人が、すっごく睨んでる。


「地底湖なんて、行けるわけないだろ」


(どうしよう……)



「あんた達! 黄の王国出身者の恥になるようなことを言ってんじゃないよ!? ジュリの物質スライムは、転移魔法と透過魔法を使うんだ。だから、人化したスライム達が、貴重な結晶を出してでも買いたがる物を入手できる。その結晶は、ジュリが危険な場所で夢光花むこうかを摘んで得た代金だよ。この匂いで気づかないのかい?」


 オバサンが、ガツンと言ってくれたの。たぶん、黄の王国出身のオバサンの言葉しか、乱暴そうな人達は聞かないと思うよ。


「えっ? 夢光花むこうかの匂いなのか。あー、この飾られている花か。これも売っているのか」


「お花は、お水を売るために飾ってるの。このお花の匂いの中で地底湖の水を飲む方が、元気になるから」


 私は、頑張って説明したよ。ちゃんと店主に見えたかな?



「地底湖の水は、人間には回復薬だ。夢光花むこうかの匂いは、その効き目を増幅するんだよ。ジュリ、水は、一杯いくらで売るんだい?」


(えーっと……)


『スライム達が出した物を買ってくれた人には、今日は宣伝も兼ねて無料にしておくよ。透明な箱の中の物は、ボクがスライム達と取り引きしたから、買いたい値段をボクに言ってください。ボクが手に入れた金額より高い値段なら、売るよ』


「ふっ、キララは商売上手だね。オークション形式かい」




 集まっていた人達が、次々に値段を言い始めたの。漁師のお兄さんは、キララが売ると決めた人に、落札だと言って品物を渡してるよ。オバサンは集金係をしてくれてる。


「ジュリちゃん、水を入れて」


「えっ? あ、うん」


 ロックスさんが、品物を買った人をワゴンのこちら側に誘導してて、アルくんが、私に声をかけてくれたの。


 コップにお水を入れて、アルくんに渡すと、品物を買った人に渡してくれた。たぶん、私が直接渡すと怖がる人がいるのね。



「うぉっ! なんだ? 昨日の火傷が治ったぞ」


(ん? 治ったの?)


 大騒ぎしている人から、他の人に、大騒ぎが移っていったの。どんどん騒がしくなっていく。



「地底湖の水を、夢光花むこうかの匂いの中で飲んだのだから、当然だぜ。どちらも回復効果があるからな」


 漁師のお兄さんがそう言うと、騒がしい人達は、ちょっと嫌そうな顔をしたの。お兄さんが赤い髪だからだよね。




「あ、あの……お水だけを売ってもらえないでしょうか。この子は、10日以上前から、熱が下がらないんです」


(ん? 何?)


 女の人の声がして、振り向くと、小さな子供を抱えて、困った顔をしているお母さんっぽい人がいたの。


「うん、いいよ」


 コップにお水を入れて、アルくんに渡そうとしたけど、アルくんは、受け取ってくれないの。


「ジュリちゃんが直接、その子に飲ませる方がいいよ。たぶん、その方が効くと思う」


「そう、なの?」


 よくわからないけど、私は、アルくんの言うとおりに、抱っこされている子の口に、そっとコップを近づけたの。


 ゴクッと一口飲んでくれた後、ちょっと待ってたら、ゴクゴクッて、一気に飲み干したよ。やっぱり、途中でやめられないよね。



「あたひ……おなかへった」


「まぁっ! すごいわ! 何てことなの。薬草も全く効かなかったのに。ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」


 そのお母さんっぽい人は、私に金色のお金を渡したの。


「えっ? 金色の……えっと、お釣りが……」


「お釣りは要りません。この子の命を救ってくれたのですから、私の気持ちです。お納めください」


(ど、どうしよう……)



『お母さん、それは困るよ。ボクもジュリちゃんも、商売で店をしているんだ。水一杯は、薬草との調整上、銅貨50枚にするつもりだから、お釣りは、銀貨99枚と銅貨50枚になるけど』


「えっ? でも、小国の薬師が無理だと言った娘の熱が下がりました。精一杯のお礼をしたいのです」


『お礼なら、ジュリちゃんがこの集落で、普通に商売ができるように助けてもらえると嬉しいな。黄の集落では、白い髪に対する誤解が酷いからね』


「わかりました。そんなことでお礼になるのなら……」


 私は、金色のお金を返したよ。銀貨1枚を出したお母さんにも、お水を渡したの。たぶん、これでお釣りは無いはず。


「銅貨50枚のお釣りを数えるのは大変なので、お母さんもお水を飲んでください」


「ふふっ、そうね。ありがとう」


 疲れた顔をしていたお母さんも、お水を一気に飲んだ後は、ふーっと息を吐いて、元気な笑顔になったよ。



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