22、キララの能力試験?
「うぉぉっ! これは、ただの魔石じゃなくて、キンググリーンスライムが出す結晶じゃないか! 銅貨75枚相当ではない。銀貨5枚はするぞ」
緑色の石を受け取ったオジサンは、驚いてるみたい。透明な箱の中に入っていたから、ちゃんと見てなかったのかも。
『テック、それは銀貨3枚のつもりで物々交換したから、別に構わないよ。砕いて畑に撒きたいんでしょ』
キララが構わないと言ったのに、オジサンは私の顔を見て、なんだか慌ててる。
「ジュリちゃん、本当に良いのだろうか」
「うん、キララがいいって言ってるから、大丈夫だよ」
「だけど、損をさせてしまうんじゃないか? 薬草は、100枚はあるが、黄の集落は、1枚を銅貨2枚で買っていると思うよ」
(全然わかんない)
『テック、黄の集落のよろず屋は、薬草1枚を銅貨3枚か4枚で買っているよ。だから、ジュリちゃんは損はしない。逆に儲けがあるくらいだ』
「えっ? そんなに値段が釣り上がるのか。銅貨75枚と言ったのは、ワシが刈ったからだ。いつもは奥の集落の者が摘むから、この量なら銅貨50枚で渡してやってるんだよ」
『それぞれの手数料が上乗せされるからね。黄の集落では、この島で一番高い値段で売ってるよ。みんな商売だからね』
(キララは賢すぎるの)
「なるほど。それなら遠慮なく、この結晶を使わせてもらおう。ジュリちゃん、また薬草が必要になったら、いつでも来てくれ」
「うん、わかったの。ありがとう、テックさん」
オジサンは嬉しそうに頷いたけど、何かに気づいたみたい。チラッと見た視線の先には、たくさんの人がいたよ。
「ジュリちゃん、薬草以外にも必要な物はあるかな? 緑の集落は、緑の帝国と同じで、農業には自信があるんだ」
「誰かが欲しいって言ったら、買いに来ていいの?」
「あぁ、是非とも来てくれ。代金は、グリーンスライムの結晶があれば、ワシらはとても嬉しいのだが」
「うん、わかったよ。こないだ買い物できなくて悲しそうな顔をしていた人の中に、緑色の人化したスライムがいたから、物々交換してもらうね」
「人化するスライムということは、これと同じキンググリーンスライムの結晶か。おほっ、農家は、皆、大喜びだよ」
今の声が聞こえたみたい。こっちを見ていた人達が、なんだか、はしゃいでるよ。
「ジュリちゃん。早く戻らないと、村長がまたブツブツ文句を言うぞ。おそらく、キララの能力試験を兼ねているだろうからな」
(能力試験?)
「じゃあ、キララ、黄の集落に戻ろっか」
『ジュリちゃんに乗っているスライムは、畑に戻りなさい!』
キララが、緑色のスライム達を叱ったの。みんな慌てて、土の上に落ちちゃったよ。
「テックさん、またね」
私が挨拶すると、キララは転移魔法を使ったよ。お兄さんは、カゴに触れていたけど、私はどこにも触ってないのに、転移の光に包まれたの。
『ジュリちゃんの指輪は、ボクの一部だよ。単純な転移なら、お店に触れてなくても大丈夫なんだ。壁を通り抜けるときは、ボクのお店にいて欲しいけど』
(あっ、そっか。うん、わかったよ)
◇◇◇
「あれ? ここは?」
話しながら転移したから、キララは場所を間違えたのかな? 見たことのない通りに着いたよ。たくさんの服屋が並んでるみたい。
『ジュリちゃん、カゴを持ってくれる?』
薬草の入ったカゴを持つと、布風船が消えたよ。
「カール、よくここに居ると、わかったね」
店の中から、オバサンが一人で出てきたの。ロックスさんとアルくんの姿は見当たらないよ。
「いや、俺じゃなくて、キララだろ。俺は、こんな黄の王国出身者しか居ない商店街は、知らないからな」
「キララが感知したのかい? あー、そうか。透過魔法が使えるからだね。ロックス達には、通りの入り口で待ってもらってたんだ。よろず屋も、そろそろ来ている頃だよ」
(なんだか、すっごく見られるの)
髪色は綺麗な黄色の人ばかり。みんな、黄の王国出身の人なのかな。
「村長、俺がここに来るかを試したんだな?」
お兄さんが妙なことを言ったよ。オバサンは、ニッと笑ったから、当たってるみたい。
「あぁ、キララの能力試験だよ。ここの通りには、特殊な結界があるからね。まぁ、これで、カールを敵視する人間も減るだろうね」
(全然わかんないの)
「ふぅん、ここは、赤の王国出身者を弾く結界があるのか。どうりで居心地が悪いと思ったよ」
「赤の王国出身者を弾くというより、黄の王国に敵対する人間を弾くんだろうね。ジュリ、あっちの角の左側へ移動できるかい?」
オバサンはそう言うと、私が持っているカゴに触れたの。お兄さんも慌てて、手を伸ばしたよ。
「うん、できるよ」
そう返事をした直後に、キララが転移魔法を使ったよ。こんなに近い場所なのに、わざわざ転移魔法を使う必要があったのかな?
◇◇◇
「うぉっ! なるほど……」
ロックスさんとアルくんがいる前に移動すると、知らないお姉さんがいたよ。
「ジュリ、彼女がよろず屋だよ。ソフィ、言った通りだっただろ? ジュリの物質スライムは、転移速度が速いんだ」
「そうですね。しかも、摘みたての薬草の匂いからして、緑の集落の農家から買って来てくれたこともわかります。こんなに鮮度の良い薬草は、見たことがありません」
「ここに届く薬草は、魔法袋を使っていても、やり取りをする間にどうしても古くなるからね。ジュリ、いくらで売るつもりだい?」
(えー、わかんないよー)
『ボクは、ジュリちゃんの物質スライム。物々交換で薬草を仕入れたよ。対価で渡したのは、キンググリーンスライムの結晶だから、銀貨3枚相当だよ』
「えっ? スライムの結晶?」
『別の取り引きで、物々交換で入手したんだ』
「私もスライムの結晶は、欲しいです! えーっと、じゃあ、薬草は……116枚ありますから、キリの良いところで、銀貨4枚でいかがでしょう?」
『それでいいよ。今、ボクの手持ちは、こんな感じだけど、欲しい物があれば、それも売るよ』
キララは、透明な箱を空中に浮かべたの。
「ちょ、ちょっと待ってください! こんなにいろいろあるんですか!? 私だけが買うと、後からいろいろな人に嫌味を言われそうだから、えーっと、場所を変えましょう。あっ、薬草の代金を先に……」
銀貨4枚を受け取ったら、カゴの中の薬草が透明な袋に入って、お姉さんの方にふわふわと飛んで行ったよ。キララって、いろいろなことができて凄いの。




