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19、黄の集落

「わぁっ! 大きなスライムがたくさんいるね」


 いつもの草原を左奥へと進んで、たくさんの木が並ぶ場所を抜けると、背の高い草が生えた草原があったよ。


「ここは、この島を守るスライムが棲んでいるからね。右側の高台は、ジュリが水汲みに行ってくれる泉に繋がっているよ」


 右の方を見てみると、遠くに高台に上がる坂道が見えたの。泉があるかはわからないけど。



「村長さん、この草原にいるスライムは、人間の言葉を話せるのですか? 俺がイーグルと初めて来たときに、海賊を追い払ってくれた巨大なスライムなのかな」


 ロックスさんは、大きなスライムが怖いみたい。この草原に入ってからは、オバサンの横を歩いてるの。


(わっ! 白いスライム!)


 私は、背の高い草が生える草原の中に入っていったの。見たことのない白くて大きなスライムがいたよ。近寄っていくと、こんにちは! って言ってくれた気がするの。


(すっごく綺麗!)


 そーっと手を伸ばすと、白いスライムも、そーっと触手を伸ばしてくれたよ。ピトッと私の手に触れたの。握手してくれたのかな。



「人間の言葉は理解しているだろうね。発声できるかは、個体差があるよ。この草原で人化できるまで育ったスライムは、海辺の集落にも来るからね。海賊を追い払ったのは、ここのスライムだと思うよ」


「この中には、人化できるスライムもいるんですね」


「あぁ、4つの人間の集落の見回りをしているのは、この草原に棲む人化できるスライムだ。あっ、この草原を歩くときは、道を逸れて背の高い草が生える草原に入ってはいけないよ。人間に認められているのは、この道の上だけだ」


「えっ? ジュリちゃんが……」



 白い大きなスライムが、頭の上に私を乗せてくれたよ。すっごく高いの。いつも水汲みにいく泉の方で、ポヨンポヨンとたくさんのスライム達が飛び跳ねているのが見えたよ。


(すご〜い!)


 この草原には、いろいろな色の大きなスライムがいるよ。小川や泉の近くにいるスライムは、赤、青、緑、黄の4色で、それぞれ少しずつ色が違う子もいたの。だけど、この草原には、見たことのない色のスライムもいるよ。



「ジュリ! 何をしてるんだい。草原は大きなスライムの棲家だよ。勝手に入っちゃダメじゃないか」


(オバサンに叱られたの)


「珍しい色のスライムがいたから……あーあ」


 白い大きなスライムは、私をそっと、オバサン達がいる道に戻してくれたよ。



『ジュリ、これから黄の集落に行く用事があるんだね。また、暇なときに遊びにおいで』


「遊びに来てもいいの?」


『あぁ、構わないよ。ただし、この草原には、スライム神の加護の無い人間は入れない。ジュリの友達でも、その赤茶色の髪の人間は、入れないよ』


「うん、わかったの」


 白い大きなスライムに手を振って、オバサン達を追いかけたの。みんな、変な顔をしてたよ。



「ジュリちゃんは、スライムをテイムできるのか?」


 ロックスさんが私の知らない言葉を使ったの。


「テイムとは違うな。ジュリちゃんの髪色と同じ色のスライムだからだろう。俺にも、髪色と同じ色のスライムが近寄ってくることがある」


「えっ? カールさんもスライムに乗れるのですか」


「いや、それは経験ない。だから、驚いたよ。ジュリちゃんは、いつもスライムと遊んでいるから、心の距離が近いのかもしれないな」


 私のことが話題になっているけど、どう返事をすればいいか、わかんない。


 しばらく歩いていくと、広い草原が終わって、くねくねした山道になったよ。少し疲れた頃に、ひらけた場所に出たよ。




 ◇◇◇



「おや、海辺の村長、こんにちは。珍しく大勢で、どうしました?」


 大きな門の前には、長い棒を持った門番がいたよ。


「黄の集落の見学さ。後ろの子供二人は、スライム神からギフトを得た子だ。カールとロックスのことは知ってるね?」


「赤の王国の元英雄カールと、さすらいの荒野でダークスライムに襲われた間抜けな冒険者ロックスだな」


(なんだかひどいの)


 お兄さんは元英雄じゃなくて、今も英雄だと思うよ。ロックスさんは間抜けじゃないよ。



「なるほどね。カールが黄の集落でよく暴れるのは、こういうことかい。大陸では、黄の王国と赤の王国は敵対関係にはないんだけどね。奥の赤の集落と、揉め事を起こしたのかい」


「赤の集落の連中は、俺達を下に見ているからな。ロクな特産もないくせに、偉そうなんだよ」


「あんた達には、大陸の状況は耳に入らないのかい? ダークスライムの被害を防いでいるのは、赤の王国だ。ただ、緑の帝国が妙な誤解をしてるみたいだけどね」


(難しいお話なの)


 私には全くわからないけど、アルくんはしっかりと話を聞いてるみたい。やっぱり、アルくんは大人だね。11歳って言ってたから、私より4つ年上だけど、17歳のロックスさんより大人な感じがするよ。



「何の騒ぎだ? あぁ、海辺の村長か。大勢の供を連れて来たんだな」


 ピカピカな金髪のオジサンが、突然現れたの。キララと同じで、転移魔法が使えるのかも。


「黄の村長、何とかしておくれよ。集落に入れないじゃないか。頼んでいたテーブル掛けを受け取りに来たんだけどね」


(黄の村長さんなのね)


「黄の王国出身者以外の人間を連れて来るからだ。昨夜、赤の集落と衝突したから、ピリピリしてるんだよ。おっ、珍しいな」


 黄の村長さんは、私とアルくんを見比べるように見てるの。私が白い髪で、アルくんが青い髪だからだよね。


「二人ともスライム神からギフトを与えられた子だよ。大陸に渡る前に、世間を教える必要があるからね」


「そうか。ゴタゴタしていて悪かったね。黄の集落を見ていってくれ。おっ、その子がさげているのは、ここの魔法鞄だね? お客さんじゃないか。私が案内しようか」


 黄の村長さんは、急にニコニコしたの。だけど、何だか嫌なニコニコなの。



「案内は要らないよ。この子達に妙なことを言わないようにと、伝達しておくれ。黄の王国の評判を落とすような、くだらないことは言わないようにね」


 オバサンは、黄の村長さんに、冷たい口調で注意をしたよ。髪色の噂のことかな。


「わかっている。物質スライムを得た子に、変なことは言わないよ。黄の集落に金を落としてくれるお客さんなら、なおさらだ」


「その強欲さを何とかしな。あんた、物質スライムを持つ権利を失うよ?」


 オバサンに叱られて、黄の村長さんは、少しシュンとしちゃったよ。



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