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17、青い髪のアルくんが来たよ

「今日は、売り切れです。また摘んできたら、キララがお知らせします」


 私がそう言うと、買えなかった人化したスライム達は残念そうな顔をしていたの。もっとたくさん摘んでくれば良かったかな?


『ジュリちゃん、夢光花むこうかは、摘みすぎると良くないんだ。減ってしまうと困るからね。水は循環するからたくさん汲んでも大丈夫だけど』


「ふぅん、そっか。わかったの」



 集まっていた人化したスライム達が帰っていくと、驚いた顔で、漁師のお兄さんが立っているのが見えたの。


「ジュリちゃん、ここで店をしていたのか。この匂いって、まさかの夢光花か?」


「うん、そうだよ。売り切れちゃったけど、ワゴンに匂いは残ってるね。お水はまだあるから、お兄さんも飲んでみて」


 水瓶みずがめの蛇口からコップに水を入れて、お兄さんに渡したよ。


(あっ! アルくんだ!)


 お兄さんの後ろに、驚いた顔をして固まっている子を見つけたよ。山の中の集落では、あまり話したことはなかったけど、私が少し大きくなった頃に来た、私より年上の男の子。


 私は、別のコップに入れた水を、アルくんにもどうぞって差し出したの。


「アルくんも飲む? 冷たくて美味しいよ」


「あ、ありがとう。まさか、ジュリちゃんがここにいるなんて、驚いたな」


「もう一年になるよ。私のギフトは出店だからね。これが私とキララのお店なの」


「キララ? 物質スライムに名前をつけたのか」


「うん。アルくんがもらったギフトは、剣?」


「俺の髪色と同じ色の剣だよ。まだ、人前では抜けないんだ。剣術の練習をしてからじゃないと、使えないらしい」


「へぇ、アルくんの髪色と同じなら、すごく鮮やかな青色なんだね。青い剣をもらった人って、見たことないかも」


「長老様も珍しいって言ってたよ。この水って、なんか違うよな。ここまで歩いてきた疲れが消えた」


「うん、泉の水の、えーっと何だっけ?」


「ジュリちゃん、これは地底湖の水だな? キララは透過魔法まで使えるのか」


 私が思い出そうとした難しい言葉を、漁師のお兄さんはサラリと言い当てたの。



「うん。キララは1歳になって魔力が増えたの。この水って、他の集落の人も欲しいかな?」


「そりゃ、欲しがるだろう。体力の回復効果があるからな。山積みになっている物は何だ?」


「ん? ワゴンの上の物は、お花を売った代金だよ。ぶつぶつなんちゃらをしたの」


「物々交換か。スライム達が出したんだな? 地底湖の水も売れるが、ワゴンに山積みの物も売れるぜ。この結晶は、俺が欲しいんだけど、いくらだ?」


「ん? えーっと、お兄さんにはお世話になってるから、あげるよ」


「ジュリちゃん、店主がそれではダメだ。ちゃんと売ってくれ」


(えー、わかんないよ〜)



『カールは青色の結晶が欲しいの? それは、ブルースライムの排泄物だよ』


 キララが念話で答えてくれたの。


「キングブルースライムだろ? 排泄物って言われたら臭い気がするが、スライムが出す結晶は、魔力を溜めるのに役立つからな。特に青色の結晶は貴重品だ」


(難しいお話なの)


『大陸にいたブルースライムは、かなり減ったからね。ということは、人間は高値でも買うのかな。銀貨3枚のつもりで物々交換したから、それでどう?』


「銀貨3枚? 銀貨30枚でも安いくらいだぜ」


『カールには世話になっているから、銀貨3枚でいいよ。毎回、同じ値段だとは限らないけどね』


「わかった。じゃあ、銀貨3枚な」


 漁師のお兄さんは、ワゴンに銀色のお金を3枚置いたよ。そして、青色の結晶を手に持って、空にかざしてる。


(お兄さん、嬉しそう)


 ワゴンの上には、いろいろな物が置いてある。銀色のお金だけじゃなくて、赤茶色のお金もあるみたい。小さいから、砂の上に落ちたら探せなくなりそう。



「あっ、ジュリは、お金を入れる布袋を持ってないね」


 私がお金を見ていると、オバサンが、どこからか小さな布袋を出したよ。まるで魔法みたい。


『村長、売り上げ金は、ボクが預かるから大丈夫だよ。ジュリちゃんに持たせると、危険な目に遭うといけないからね』


「そのままワゴンに出していたら、危険だよ。ジュリ、お金がどれか、わかるかい? この布袋に入れておきな」


「赤茶色のと銀色のだよね?」


「あぁ、赤茶色のお金は銅貨だ。銀色のお金は銀貨。銅貨100枚と銀貨1枚は同じ価値だよ」


「えっと……キラキラしてる銀貨の方がエライの?」


(あれ?)


「ジュリは、まぁ、8歳になれば、わかるようになるかね。わからないなら、そのときに教えることにするよ。とりあえず、お金を布袋に入れな」


 オバサンは、ちょっと困った顔をしてる。でも、漁師のお兄さんやロックスさんは、ニヤニヤしたよ。アルくんは、首を傾げてる。


 私は、屋台のワゴンに置かれたお金を、布袋に入れたよ。持ってみるとズッシリと重いの。銅貨がたくさんあったみたい。



「店をしていると釣り銭を渡す必要もあるから、銀貨と銅貨は、別の布袋に入れておく方がいい。今度、黄の集落に行ったときに、買ってくるよ」


「村長さんが、黄の集落に行くとき、私も行ってもいい?」


「構わないが、ジュリは嫌な思いをするかもしれないよ? あぁ、アルだったか。大型船が来るまでは、この島から出られない。アルも一緒に行くかい?」


 オバサンが、アルくんも誘ったの。たぶん、お使い係をしてもらうのね。



「は、はい。俺も、この島のことを理解してから大陸に行きたいと思っています」


「そうかい。アルの髪色も、ジュリほどじゃないが、ちょっと珍しいからね。カールかロックスのどちらかが、付き添いをしておくれ」


 オバサンは、たぶん漁師のお兄さんについて来て欲しいんだと思うよ。だけど、ロックスさんにも気を遣ってるんだと思う。


「どちらかと言わずに、両方連れて行ってくれよ。村長が一緒なら、黄の集落の人達は穏やかだろ?」


「カール、あんたが暴れなきゃ、誰も警戒しないよ?」


(お兄さんが暴れるの?)


「商人は良いんだが、武器屋は荒くれ者だらけだろ」


「まぁ、黄の集落にいる武器職人は、盗賊だった人もいるけどね。定住している人間は、同郷意識が強いのさ」


 私の魔法鞄は、お兄さんが黄の集落で買ってきてくれたんだよね? お買い物に行って、ケンカしちゃったのかな。



「村長、腹減った。アル、村長の飯は美味いんだぜ」


「はぁ、もう、さっさと家に入りな」


 オバサンは、またぷりぷりしちゃった。でも、照れてるだけだと思うよ。



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